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第13話 昔の思い出

ー/ー



 商談が上手くいき、仕事も忙しくなり──

 今日も遅くまで残業して帰り、マンションのエントランスに着いたら、橘さんとバッタリ会った。

「橘さん、お疲れ様です!その節はご指名頂きありがとうございます!」

 橘さんはかなりお疲れな感じだった。

「ああ」

 どうしたんだろう。

「じゃあ、私部屋に行きますので、失礼します」

 戻ろうとしたら、腕を引っ張られた。

「どうしましたか?」
「付いてきて」

 橘さんに付いて行ったら、駅前のダイニングバーに着いた。

 橘さんは日本酒を頼んで飲んでいた。

「好きなの頼んで食べてていいよ」
「じゃあお言葉に甘えて……」

 私は色々頼んで食べていた。
 橘さんはボーッとしている。

「なんかあったんですか……?」

 恐る恐る聞いた。

「何も思いつかない」
「え?」
「ストーリーが」

 小説か。

 私は時間がある時に自分の書ける量だけネットにアップしているけど、プロになったら違うんだ。

 私もそんなにネタなんてない!

「なんかない?学生の時の印象深い思い出とか」

 私は過去の思い出を色々漁っていた。

「えーと……あ、私高校生の時にバスケ部のマネージャーやってたんです。練習試合があった日に体育館裏に行ったら、相手校のキャプテンが俯いて座り込んでいたんです」

 橘さんは呑みながら真剣に耳を傾けていた。

「具合が悪いのかと思って話しかけたら『もうバスケやめようと思う』とか言い出してびっくりしたんです!」

「ふーん……で?」

「理由はよくわからなかったんですけど、『あなたのプレー、私は凄いと思いました!』って言ったら、少し元気になって……その後、その人は引退試合まで続けてたみたいなんです」

 橘さんは何か考え込んでいた。

「それで終わり?」

 まだ言わないといけないの!?

「実はその人に告白されたんです。続けられたのは私のおかげだって。でもただ気持ちだけ言って、彼は行ってしまいました」

「そうか」

 橘さんは、そっぽを向いた。

「え、どうしたんですか?」

「なんでもない」

 その後、お店を出て二人でマンションに向かって歩いていた。

「美鈴は俺だけの特別だけじゃなくて、そいつの特別でもあるんだな」

 橘さんは少し寂しそうに言った。

「よくわからないんですけど、私の言葉で誰かが救われたなら嬉しいです」

 マンションの前に着いたら、誰かが立っていた。
 前、橘さんと一緒にいた女の人だった。

「あ、先生!原稿まだですか?」
「今仕事忙しいから、まだかかりそう」

 橘さんとその女の人は色々話して、彼女は去って行った。

「あの人、出版社の人ですか?凄い仕事できそうな人ですね」
「うん。しっかりしてるんだけど、キツイんだよね」

 その後、エレベーターに乗った時、橘さんにキスをされた。

「美鈴は俺だけの特別。誰にも渡さない」
「……もしかして、あの話を聞いて嫉妬してたりします?」
「別に」

 私は橘さんの部屋に連れて行かれた。

 橘さんは書斎に向かって、パソコンで文字を打ち始めた。

 翠川雅人が原稿を作っている!!
 私はその場にいれた事が嬉しくて、パソコンを覗こうとしたら「見るな」と言われた。

「やっと書く気が湧いた」

 橘さんの力になれた事が嬉しかった。

「あ、言っとくけど、出張で指名したのは私情とか関係ないから。資料見たりして、美鈴が適任だと思ったからだ」
「はい!嬉しいです!これからも頑張ります!」

 橘さんは少し微笑んで、その後暫くパソコンに向かっていた。

 私はレビューを書く時のために、本棚の本から一冊選んで読んでいた。



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 商談が上手くいき、仕事も忙しくなり──
 今日も遅くまで残業して帰り、マンションのエントランスに着いたら、橘さんとバッタリ会った。
「橘さん、お疲れ様です!その節はご指名頂きありがとうございます!」
 橘さんはかなりお疲れな感じだった。
「ああ」
 どうしたんだろう。
「じゃあ、私部屋に行きますので、失礼します」
 戻ろうとしたら、腕を引っ張られた。
「どうしましたか?」
「付いてきて」
 橘さんに付いて行ったら、駅前のダイニングバーに着いた。
 橘さんは日本酒を頼んで飲んでいた。
「好きなの頼んで食べてていいよ」
「じゃあお言葉に甘えて……」
 私は色々頼んで食べていた。
 橘さんはボーッとしている。
「なんかあったんですか……?」
 恐る恐る聞いた。
「何も思いつかない」
「え?」
「ストーリーが」
 小説か。
 私は時間がある時に自分の書ける量だけネットにアップしているけど、プロになったら違うんだ。
 私もそんなにネタなんてない!
「なんかない?学生の時の印象深い思い出とか」
 私は過去の思い出を色々漁っていた。
「えーと……あ、私高校生の時にバスケ部のマネージャーやってたんです。練習試合があった日に体育館裏に行ったら、相手校のキャプテンが俯いて座り込んでいたんです」
 橘さんは呑みながら真剣に耳を傾けていた。
「具合が悪いのかと思って話しかけたら『もうバスケやめようと思う』とか言い出してびっくりしたんです!」
「ふーん……で?」
「理由はよくわからなかったんですけど、『あなたのプレー、私は凄いと思いました!』って言ったら、少し元気になって……その後、その人は引退試合まで続けてたみたいなんです」
 橘さんは何か考え込んでいた。
「それで終わり?」
 まだ言わないといけないの!?
「実はその人に告白されたんです。続けられたのは私のおかげだって。でもただ気持ちだけ言って、彼は行ってしまいました」
「そうか」
 橘さんは、そっぽを向いた。
「え、どうしたんですか?」
「なんでもない」
 その後、お店を出て二人でマンションに向かって歩いていた。
「美鈴は俺だけの特別だけじゃなくて、そいつの特別でもあるんだな」
 橘さんは少し寂しそうに言った。
「よくわからないんですけど、私の言葉で誰かが救われたなら嬉しいです」
 マンションの前に着いたら、誰かが立っていた。
 前、橘さんと一緒にいた女の人だった。
「あ、先生!原稿まだですか?」
「今仕事忙しいから、まだかかりそう」
 橘さんとその女の人は色々話して、彼女は去って行った。
「あの人、出版社の人ですか?凄い仕事できそうな人ですね」
「うん。しっかりしてるんだけど、キツイんだよね」
 その後、エレベーターに乗った時、橘さんにキスをされた。
「美鈴は俺だけの特別。誰にも渡さない」
「……もしかして、あの話を聞いて嫉妬してたりします?」
「別に」
 私は橘さんの部屋に連れて行かれた。
 橘さんは書斎に向かって、パソコンで文字を打ち始めた。
 翠川雅人が原稿を作っている!!
 私はその場にいれた事が嬉しくて、パソコンを覗こうとしたら「見るな」と言われた。
「やっと書く気が湧いた」
 橘さんの力になれた事が嬉しかった。
「あ、言っとくけど、出張で指名したのは私情とか関係ないから。資料見たりして、美鈴が適任だと思ったからだ」
「はい!嬉しいです!これからも頑張ります!」
 橘さんは少し微笑んで、その後暫くパソコンに向かっていた。
 私はレビューを書く時のために、本棚の本から一冊選んで読んでいた。