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第10話 ずるい

ー/ー



 あの二人が最上階に行った後、モヤモヤしていた。
 あの女の人が何者なのかわからないけど、もしかしたら"翠川雅人"関係の人かもしれない。
 でも、もしかしたら彼女かもしれない。
 いやでも、浮気相手にはしないと言われた。

 橘さんの私への想いは伝わってるんだけど、私自身はどうなんだろう。
 仕事の取引相手で憧れの作家。
 どう思っているかわからないのに、する事はしている……。

「もー私最悪!」

 次は流されない!
 ちゃんと気持ちがないとだめだ!

 私は一生懸命渡された本を読んでいた。
 でもだんだんと眠くなってきてしまった。
 そのまま意識が遠のいていった──

「おい」

 ん?

 目を開けたら橘さんがいる。

「なんでここにいるんですか……?」

 鍵をかけたはず。

 橘さんの手に何かがある。

 まさか──

「合鍵持ってるんですか?」
「そうだ」

 最悪だ……。

「プライバシーの侵害です!」

 いくら憧れてたとはいえ、こんな事するなんて。

「失望しました!」

 その瞬間橘さんはショックを受けて、ソファに座って激しく落ち込んでいた。

「美鈴が電話にでないし、インターホンを鳴らしても出ないからだよ……。何かあった時に助けられるように持っていただけだ」

 いきなり下の名前で呼び始めた。

「すみません、そんな風に心配してくれていたのに酷い事言って……」
「俺を慰めて」

 慰める?
 私はよくわからなくて橘さんの頭を撫でた。

「あ、橘さんの下の名前ってなんですか?」
正輝(まさき)だよ」
「そうなんですね!正輝くんごめんね、私が悪かった」
「……何勘違いしてるの?」
「え?」

 橘さんが覆い被さってきて、口付けをされた。

「わからないの?」

 またこの流れに!

「橘さん。私、好きな人とじゃないとそういう事しちゃダメだと思うので、もうできません!」

「は?」

 空気が凍りついた。

「俺の事好きじゃないの……?」

 橘さんの目が怖かった。

「憧れてるし、尊敬はしてるんです。ただそれと、恋愛感情はまた別で」
「ふーん」

 私がはっきりしなかったから、勘違いさせてしまったのかもしれない……。

「わかった」

 橘さんは少し俯いた。

「あ、今日マンションで一緒にいた女の人は誰ですか?」
「……気になる?」
「はい、少し気になります」
「教えない」

 ……拗ねている。

「ところで読んでるの?」
「はい、寝る前に少し読んでました」
「ふーーーん。遅くない?」

 渡されたばかりなのに!

「もう寝るんで帰ってもらえますか?」
「嫌だ」

 めんどくさい!

「じゃあどうするんですか?」
「もう色々どうでもいいから、シたいんだけど」

 どうでもいい?
 さっきまで色々説得したのに!

「ここに痕くっきり残ってるね」

 会社でつけられしまったキスマーク。

「これすごい困ってるんですよ!」
「やったね」

 子供か……!!

「じゃあもっとつけてあげる」

 橘さんにまた増やされていく。

「困ります!」
「ねえ」
「はい?」

『例えこのまま二度と会えなくても、君は僕の宝物だよ。永遠に』

 耳元で言われた台詞は、翠川雅人の、私の大好きな作品の大好きなキャラクターのセリフだった。

「ずるいですよ!」
「ちゃんと読んでるんだね。本当に」

 私は心が折れてしまった。

 好きな人じゃないとしない、とあの時私は言った。
 それでも最終的に抵抗できない──しないのは、嫌じゃないから。
 色々理由をつけ誤魔化して、逃げているんだ私は。
 本当はそこに心があるんだとわかってるのに。
 認めてしまったら、気持ちが止まらなくなるのが怖くて。

 せっかく開けた夢への道。
 ちゃんと進みたい。

 ◇ ◇ ◇

 橘さんが寝てる間、少しまた本を読んだ。

 橘さんの側にいられるうちに、色々教えてもらうんだ。

 眠気と戦いながら黙々と読んだ。



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 あの二人が最上階に行った後、モヤモヤしていた。
 あの女の人が何者なのかわからないけど、もしかしたら"翠川雅人"関係の人かもしれない。
 でも、もしかしたら彼女かもしれない。
 いやでも、浮気相手にはしないと言われた。
 橘さんの私への想いは伝わってるんだけど、私自身はどうなんだろう。
 仕事の取引相手で憧れの作家。
 どう思っているかわからないのに、する事はしている……。
「もー私最悪!」
 次は流されない!
 ちゃんと気持ちがないとだめだ!
 私は一生懸命渡された本を読んでいた。
 でもだんだんと眠くなってきてしまった。
 そのまま意識が遠のいていった──
「おい」
 ん?
 目を開けたら橘さんがいる。
「なんでここにいるんですか……?」
 鍵をかけたはず。
 橘さんの手に何かがある。
 まさか──
「合鍵持ってるんですか?」
「そうだ」
 最悪だ……。
「プライバシーの侵害です!」
 いくら憧れてたとはいえ、こんな事するなんて。
「失望しました!」
 その瞬間橘さんはショックを受けて、ソファに座って激しく落ち込んでいた。
「美鈴が電話にでないし、インターホンを鳴らしても出ないからだよ……。何かあった時に助けられるように持っていただけだ」
 いきなり下の名前で呼び始めた。
「すみません、そんな風に心配してくれていたのに酷い事言って……」
「俺を慰めて」
 慰める?
 私はよくわからなくて橘さんの頭を撫でた。
「あ、橘さんの下の名前ってなんですか?」
「|正輝《まさき》だよ」
「そうなんですね!正輝くんごめんね、私が悪かった」
「……何勘違いしてるの?」
「え?」
 橘さんが覆い被さってきて、口付けをされた。
「わからないの?」
 またこの流れに!
「橘さん。私、好きな人とじゃないとそういう事しちゃダメだと思うので、もうできません!」
「は?」
 空気が凍りついた。
「俺の事好きじゃないの……?」
 橘さんの目が怖かった。
「憧れてるし、尊敬はしてるんです。ただそれと、恋愛感情はまた別で」
「ふーん」
 私がはっきりしなかったから、勘違いさせてしまったのかもしれない……。
「わかった」
 橘さんは少し俯いた。
「あ、今日マンションで一緒にいた女の人は誰ですか?」
「……気になる?」
「はい、少し気になります」
「教えない」
 ……拗ねている。
「ところで読んでるの?」
「はい、寝る前に少し読んでました」
「ふーーーん。遅くない?」
 渡されたばかりなのに!
「もう寝るんで帰ってもらえますか?」
「嫌だ」
 めんどくさい!
「じゃあどうするんですか?」
「もう色々どうでもいいから、シたいんだけど」
 どうでもいい?
 さっきまで色々説得したのに!
「ここに痕くっきり残ってるね」
 会社でつけられしまったキスマーク。
「これすごい困ってるんですよ!」
「やったね」
 子供か……!!
「じゃあもっとつけてあげる」
 橘さんにまた増やされていく。
「困ります!」
「ねえ」
「はい?」
『例えこのまま二度と会えなくても、君は僕の宝物だよ。永遠に』
 耳元で言われた台詞は、翠川雅人の、私の大好きな作品の大好きなキャラクターのセリフだった。
「ずるいですよ!」
「ちゃんと読んでるんだね。本当に」
 私は心が折れてしまった。
 好きな人じゃないとしない、とあの時私は言った。
 それでも最終的に抵抗できない──しないのは、嫌じゃないから。
 色々理由をつけ誤魔化して、逃げているんだ私は。
 本当はそこに心があるんだとわかってるのに。
 認めてしまったら、気持ちが止まらなくなるのが怖くて。
 せっかく開けた夢への道。
 ちゃんと進みたい。
 ◇ ◇ ◇
 橘さんが寝てる間、少しまた本を読んだ。
 橘さんの側にいられるうちに、色々教えてもらうんだ。
 眠気と戦いながら黙々と読んだ。