ネコと暗号とコーヒーと
ー/ー 朝のやわらかな光が部屋に差し込む。デスマーチ明け。悟は疲労のせいかソファに沈み込むように横たわっていた。
肩や腰がまだ重く、目の前に広がるのは散らかったノートと、ひざの上で丸くなって眠る愛猫の寅次郎だけだった。寅次郎は時折小さな声で鳴き、悟の手に頭を押し付けてくる。
玄関先から小さな音がした。郵便ポストに目を向けると、手紙が一通。差出人の名前はない。宛名も書かれていない。直接ポストに投函されたものだろう。白い封筒には、青いインクで「解けるかな?」とだけ大きな文字で書かれている。
訝しみながら封を切る。中には小さな紙切れが一枚。そこには、数字と記号の羅列がびっしりと書かれていた。
5-1-3, 2-4-1, 3-3-5, 1-2-4⋯⋯
「⋯⋯暗号か」悟はつぶやく。寅次郎が紙に手を伸ばそうとしたので、手で押さえながら膝に抱き上げる。疲れていても、頭を使う作業には妙に興奮するものだった。
いったん落ち着いて考えようと、湯を沸かしカフェオレを淹れ、机に向かう。数字列をじっと眺め、悟は閃いた。「A=1、B=2、C=3……なるほど、アルファベット番号だな」紙に書かれた順番で対応させていくと、少しずつ文字が浮かび上がった。
途中で休憩がてら寅次郎を撫でる。カフェオレは既に冷たくなっていた。
寅次郎は満足そうにゴロゴロと喉を鳴らし、大きなあくびをする。悟は微笑む。気づけば暗号を解くことが、ただの文字遊びではなく、気持ち切り替えのいい刺激になったことを感じた。
最後の行を読み解いた瞬間、悟は思わず笑った。
「なんだコレ」
「3時の休憩コーヒー、一緒にどうですか?」
差出人は近所のカフェのオーナーだった。以前、疲れ果ててベンチで倒れている悟を見かけて、声をかけてくれた女性だ。暗号は彼女なりの、ちょっとした心遣いだったのかもしれない。
昼下がり、悟は寅次郎に行ってきますを告げて、カフェへ向かった。暖かな光とコーヒーの香りが迎え、カウンターの向こうでオーナーが微笑む。
「解けました?」
「ええ、寅次郎も手伝ってくれましたよ」「虎ちゃん、凄いなー」
紙を通して繋がった小さな謎解きが、悟の日常にほのかな温もりを運んできた。寅次郎は悟の帰りを待ちながら、リビングの陽だまりでウトウトし始めるーー
みんなのリアクション
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朝のやわらかな光が部屋に差し込む。デスマーチ明け。悟は疲労のせいかソファに沈み込むように横たわっていた。
肩や腰がまだ重く、目の前に広がるのは散らかったノートと、ひざの上で丸くなって眠る愛猫の寅次郎だけだった。寅次郎は時折小さな声で鳴き、悟の手に頭を押し付けてくる。
玄関先から小さな音がした。郵便ポストに目を向けると、手紙が一通。差出人の名前はない。宛名も書かれていない。直接ポストに投函されたものだろう。白い封筒には、青いインクで「解けるかな?」とだけ大きな文字で書かれている。
訝しみながら封を切る。中には小さな紙切れが一枚。そこには、数字と記号の羅列がびっしりと書かれていた。
5-1-3, 2-4-1, 3-3-5, 1-2-4⋯⋯
「⋯⋯暗号か」悟はつぶやく。寅次郎が紙に手を伸ばそうとしたので、手で押さえながら膝に抱き上げる。疲れていても、頭を使う作業には妙に興奮するものだった。
いったん落ち着いて考えようと、湯を沸かしカフェオレを淹れ、机に向かう。数字列をじっと眺め、悟は閃いた。「A=1、B=2、C=3……なるほど、アルファベット番号だな」紙に書かれた順番で対応させていくと、少しずつ文字が浮かび上がった。
途中で休憩がてら寅次郎を撫でる。カフェオレは既に冷たくなっていた。
寅次郎は満足そうにゴロゴロと喉を鳴らし、大きなあくびをする。悟は微笑む。気づけば暗号を解くことが、ただの文字遊びではなく、気持ち切り替えのいい刺激になったことを感じた。
最後の行を読み解いた瞬間、悟は思わず笑った。
「なんだコレ」
「3時の休憩コーヒー、一緒にどうですか?」
差出人は近所のカフェのオーナーだった。以前、疲れ果ててベンチで倒れている悟を見かけて、声をかけてくれた女性だ。暗号は彼女なりの、ちょっとした心遣いだったのかもしれない。
昼下がり、悟は寅次郎に行ってきますを告げて、カフェへ向かった。暖かな光とコーヒーの香りが迎え、カウンターの向こうでオーナーが微笑む。
「解けました?」
「ええ、寅次郎も手伝ってくれましたよ」「虎ちゃん、凄いなー」
紙を通して繋がった小さな謎解きが、悟の日常にほのかな温もりを運んできた。寅次郎は悟の帰りを待ちながら、リビングの陽だまりでウトウトし始めるーー