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捨てられなかった今日

ー/ー





      ー*ー*ー*ー

  レシートに 今日の日付が二つあり
    片方だけを 捨てて帰れず

      ー*ー*ー*ー



 レジ横で受け取ったレシートを、私はすぐに財布へしまえなかった。どこで会計を済ませようと、必ずレシートを確認する私の癖。コンビニでもスーパーでもカフェでも。そんな私のいつもの癖をあざ笑うように、そのレシートは異質だった。


 今日の日付が、記載されたものが連続で二枚。どちらもまったく同じ書体で印字されている。金額も、店名も同じ。ただ、微妙に紙の白さが違う気がした。けれど請求された金額はひとつだけ。


 「印字ミスですか?」
 そう聞こうとして、やめた。理由はわからない。けれど、この店の午後の静けさが、それを“間違い”として片づけるのを拒んでいる気がした。


 席についてコーヒーを飲む。湯気の向こうで、時間が少しだけ緩む。私はレシートを二つに裂いてテーブルに並べた。


 片方は、今日をちゃんと生きた私のもの。

 もう片方は――生きなかった今日。電話をかけなかった私。あの交差点を曲がらなかった私。声をあげられかなった私。


 どちらか一枚を捨てれば、残った今日が確定する。そんな確信があった。

 だが、指が動かない。確定させるほど、私は今日を信用していなかった。


 店を出ると、夕方の光が少しだけ眩しい。結局、二枚とも財布に入れた。


 夜、家でふたつのレシートを見返すと、片方は白紙になっていた。


 捨てられなかった今日は、静かに、消えていた。



*日記風雑感*

レシートを捨てられない人は結構いそうな気がしますね。私はとりあえず会計の時に確認して、その後1週間くらいしたら適宜サヨウナラしてます。

財布がパツパツになる前に……。
うっかりすると、中身よりレシートの厚みが。

ときどき、古いレシートを発掘して、そこのお店独自の「ひとこと」のようなものを印字されてるのを発見することがあります。

時間の向こうからよみがえる、静かな声を、すくいあげることはできるのかなあ。


さて、レシート印字面を使ってメガネ拭こうかな。












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      ー*ー*ー*ー
  レシートに 今日の日付が二つあり    片方だけを 捨てて帰れず
      ー*ー*ー*ー
 レジ横で受け取ったレシートを、私はすぐに財布へしまえなかった。どこで会計を済ませようと、必ずレシートを確認する私の癖。コンビニでもスーパーでもカフェでも。そんな私のいつもの癖をあざ笑うように、そのレシートは異質だった。
 今日の日付が、記載されたものが連続で二枚。どちらもまったく同じ書体で印字されている。金額も、店名も同じ。ただ、微妙に紙の白さが違う気がした。けれど請求された金額はひとつだけ。
 「印字ミスですか?」
 そう聞こうとして、やめた。理由はわからない。けれど、この店の午後の静けさが、それを“間違い”として片づけるのを拒んでいる気がした。
 席についてコーヒーを飲む。湯気の向こうで、時間が少しだけ緩む。私はレシートを二つに裂いてテーブルに並べた。
 片方は、今日をちゃんと生きた私のもの。
 もう片方は――生きなかった今日。電話をかけなかった私。あの交差点を曲がらなかった私。声をあげられかなった私。
 どちらか一枚を捨てれば、残った今日が確定する。そんな確信があった。
 だが、指が動かない。確定させるほど、私は今日を信用していなかった。
 店を出ると、夕方の光が少しだけ眩しい。結局、二枚とも財布に入れた。
 夜、家でふたつのレシートを見返すと、片方は白紙になっていた。
 捨てられなかった今日は、静かに、消えていた。
*日記風雑感*
レシートを捨てられない人は結構いそうな気がしますね。私はとりあえず会計の時に確認して、その後1週間くらいしたら適宜サヨウナラしてます。
財布がパツパツになる前に……。
うっかりすると、中身よりレシートの厚みが。
ときどき、古いレシートを発掘して、そこのお店独自の「ひとこと」のようなものを印字されてるのを発見することがあります。
時間の向こうからよみがえる、静かな声を、すくいあげることはできるのかなあ。
さて、レシート印字面を使ってメガネ拭こうかな。