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第12話 王都王立アカデミア

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 結局、ぼくたちは春水の塔の外——学園へと帰還することが出来た。
 試練の間の転送陣は、”屠るもの”が告げたように、塔の外へと繋がっていた。

 王都ファル=ナルシオン近くの、アリアンフロッドの拠点は、王都王立アカデミアという名前で呼ばれていた。
 拠点が学園となっているのは、アリアンフロッドには若い者が多く、学習の機会を与えるため、となっている。

 学園内を、制服姿のアリアンフロッドたちが移動していたが、出発前と比べると、いくらか急いでいるように感じられる。
 あれから——塔を探索しはじめてから、どれくらいの時間が経過したのだろうか。
 春水の塔へと出掛ける前は、陽も高かったのに、既に双陽は傾き、午後も遅い時間となっていた。

 メディシアン世界は双陽——というか、地上を照らす恒星は親子ほどの大きさの差がある、二重の恒星系となっていた。
 昼間は眩しくて、双陽はひとつの恒星にしか見えないが、夕方や朝早い時間だと、何とか、もうひとつの小さい太陽を目にすることができる。
 その双陽が、校舎や噴水、芝生やベンチ、池などに夕刻前の光を投げかけ、陰りを生じさせていた。

 学園は、大きな、切り出された黒曜石のような四角い建物——本校舎を中心にして、五つの施設が配置されていた。
 さらに、その向こうには、側城塔とそれを繋ぐ城壁が聳えている。

 本校舎は、入り口の部分はガラス張りで、扉もガラスとなっていた。
 エントランスから入ると、吹き抜けとなっていて、かなり広い印象がある。
 天井はずっと視線を上に向けないと、見えないくらいだ。

「チカ! チカでしょ」
 歩いてすぐ、奥の受付カウンターから、若い女性が走り寄ってきた。
 ワイシャツに黒いジャケット、それに胸元に桜色のリボンを結んだ、受付嬢の制服を来ている。
 薄氷色の髪を首筋のところで揃えた、メガネをした小柄な女性だった。

 ジルさんだ。
 ぼくたちが、アリアンフロッド見習いとして、ギンゲツたちと塔へと旅立つ時、手続きをしてくれたのが、そのジルさんだった。
 チカとは知り合いらしく、人嫌いの彼女も、ジルさんとは普通に会話ができるみたいだ。

「あぁ……よかった。チカたちが塔から戻ってきていないって聞いて、心配していたんだから」
 ぼくたちは、顔を合わせた。
 ——そんなに、大事になっていたのだろうか?

 ジルさんの声をきっかけに、なんだかエントランス内がざわざわとしてきた。
 それに気づいて、ジルさんがぺろっと、舌を出した。
「ごめん、ごめん。では、こちらへどうぞ」

 ジルさんは咳払いをすると、途中から表情を変えて、ぼくたちをエントランスの二階へと案内してくれた。
 階段をあがり、廊下をまっすぐ進んだ奥へと、早足で進んでいく。

 さっきまでは空の下を歩いていたので、何ともなかったのだけど、学園のなかとはいえ、壁と床、天井のある場所にいると、どうしても気分的にあんまり落ち込んできてしまう。
 隣を歩いていたアカネがそっと、ぼくの手を握ってきた。

 チカの手は握ってはこなかったものの、アカネとふたりでぼくを挟むようにして、並んできた。
 それに、ぼくは暖かなものを感じて、少し胸を張って、廊下を歩いていった。


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 結局、ぼくたちは春水の塔の外——学園へと帰還することが出来た。
 試練の間の転送陣は、”屠るもの”が告げたように、塔の外へと繋がっていた。
 王都ファル=ナルシオン近くの、アリアンフロッドの拠点は、王都王立アカデミアという名前で呼ばれていた。
 拠点が学園となっているのは、アリアンフロッドには若い者が多く、学習の機会を与えるため、となっている。
 学園内を、制服姿のアリアンフロッドたちが移動していたが、出発前と比べると、いくらか急いでいるように感じられる。
 あれから——塔を探索しはじめてから、どれくらいの時間が経過したのだろうか。
 春水の塔へと出掛ける前は、陽も高かったのに、既に双陽は傾き、午後も遅い時間となっていた。
 メディシアン世界は双陽——というか、地上を照らす恒星は親子ほどの大きさの差がある、二重の恒星系となっていた。
 昼間は眩しくて、双陽はひとつの恒星にしか見えないが、夕方や朝早い時間だと、何とか、もうひとつの小さい太陽を目にすることができる。
 その双陽が、校舎や噴水、芝生やベンチ、池などに夕刻前の光を投げかけ、陰りを生じさせていた。
 学園は、大きな、切り出された黒曜石のような四角い建物——本校舎を中心にして、五つの施設が配置されていた。
 さらに、その向こうには、側城塔とそれを繋ぐ城壁が聳えている。
 本校舎は、入り口の部分はガラス張りで、扉もガラスとなっていた。
 エントランスから入ると、吹き抜けとなっていて、かなり広い印象がある。
 天井はずっと視線を上に向けないと、見えないくらいだ。
「チカ! チカでしょ」
 歩いてすぐ、奥の受付カウンターから、若い女性が走り寄ってきた。
 ワイシャツに黒いジャケット、それに胸元に桜色のリボンを結んだ、受付嬢の制服を来ている。
 薄氷色の髪を首筋のところで揃えた、メガネをした小柄な女性だった。
 ジルさんだ。
 ぼくたちが、アリアンフロッド見習いとして、ギンゲツたちと塔へと旅立つ時、手続きをしてくれたのが、そのジルさんだった。
 チカとは知り合いらしく、人嫌いの彼女も、ジルさんとは普通に会話ができるみたいだ。
「あぁ……よかった。チカたちが塔から戻ってきていないって聞いて、心配していたんだから」
 ぼくたちは、顔を合わせた。
 ——そんなに、大事になっていたのだろうか?
 ジルさんの声をきっかけに、なんだかエントランス内がざわざわとしてきた。
 それに気づいて、ジルさんがぺろっと、舌を出した。
「ごめん、ごめん。では、こちらへどうぞ」
 ジルさんは咳払いをすると、途中から表情を変えて、ぼくたちをエントランスの二階へと案内してくれた。
 階段をあがり、廊下をまっすぐ進んだ奥へと、早足で進んでいく。
 さっきまでは空の下を歩いていたので、何ともなかったのだけど、学園のなかとはいえ、壁と床、天井のある場所にいると、どうしても気分的にあんまり落ち込んできてしまう。
 隣を歩いていたアカネがそっと、ぼくの手を握ってきた。
 チカの手は握ってはこなかったものの、アカネとふたりでぼくを挟むようにして、並んできた。
 それに、ぼくは暖かなものを感じて、少し胸を張って、廊下を歩いていった。