第76話
ー/ーここはウエスの森の町の中にある鉱山。
フィーネたちが、魔神教のサマンサと激戦を繰り広げている頃。
イブ、ゴブロー、ホウオウの三人は順調に奥に進んでいた。
「何にも起こらなくて拍子抜けだな」
ゴブローが欠伸を噛み殺しながらつぶやく。
「何が起きるか分からないわ。油断は禁物よ。」
ホウオウが気を引き締める。
その時、
ドドドーーーン!
重い爆発音と共に地面が揺れ、坑道の岩が崩れ出した。
「危ない!バリア!」
イブが間一髪、防御魔法を発動する。
ガラガラガラッ!
大小様々な岩が天井から落ちてくる。
気がつくと、目の前の通路が岩に塞がれていた。
「しまった!」
ゴブローが叫んだ。
「道が塞がれてしまったわ。どうしよう?」
ホウオウがつぶやく。
「岩を退けて進むしかないな」
イブが両手を上げると、岩が宙に浮いた。腕を横に動かすと岩は軽々と脇に避けられた。
「俺も手伝うぜ」
ゴブローとホウオウも身体を使って岩を取り除いていく。
やっと人が通れる程の穴が出来て、そこを一人ずつ抜けていく。
「よし、先に進もう。」
ホウオウが先導して進んでいく。
暫く進むと岩の壁が現れた。
真ん中に人が一人通れる程の穴が空いている。
三人は妙な違和感を感じながらも、その穴を抜け、先に進んだ。
「何か変な感じがしないか?」
ゴブローが言う。
「とにかく前に進むしか無かろう。」
イブも何か妙な気配を感じながら足を進める。
すると、またしても岩の壁が現れた。
「同じ場所を回ってる?」
ホウオウが言った。
「そんな馬鹿な?」
ゴブローが一人で穴を潜り、先にむかって走っていった。
イブとホウオウの前から聞こえていた足音が消えた。
タタタタタッ!
背後から何者かの足音が迫ってくる。
イブとホウオウは、振り向き迎え撃つ体勢を取った。
暗闇から人影が迫ってくる。
イブが魔法を放とうとした瞬間。
「待ってくれ!俺だ!ゴブローだ!」
何と背後から来たのはゴブローだった。
「どうやら俺たちは同じ所をグルグル廻らせられてるようだ。」
息を切らせながらゴブローが言った。
「と言うことは、何処かに敵がいると言うことね。」
ホウオウが言う。
「よし、ぼくの出番だな。気配を探ってみよう。」
イブがそう言うと全身から青白いオーラが現れ、光の粒が舞い出した。
光の粒が帯になり、ある場所に集まった。それは小さな人のような形をしている。
「上手く隠れたつもりだったのに、さすが女神だな。」
現れたのは小さな妖精。だが、アイリスと違い全体的に黒っぽい色をしている。しかも少年だ。
「お前は......ダークフェアリー!」
イブが言う。
「そう、我はダークフェアリーのルシフェル。見つかったからには生きて帰さないよ。」
ルシフェルはパタパタと宙を舞いながら言った。
「ダークフェアリーだと?面白い、俺が相手だ。」
ゴブローが一歩前に出た。
「ゴブリンごときに我が倒せるかな?」
「言わせておけば!ウオーッ!」
ゴブローが勢いよく斬りかかる。が、ルシフェルが簡単にかわす。
ゴブローが繰り出す刃をことごとく避けてしまう。
「くそ〜!ちょこちょこと飛び回って!」
「もう、飽きたからいいよ。石化せよ!ストーン!」
「なっ?」
ゴブローの両足の先から徐々に上に向かって身体が石になっていく。
「ゴブロー!」
ホウオウが叫ぶが何も出来ない。
「くそー!」
みるみるうちにゴブローの身体は頭の先まで石化してしまった。
「ゴブロー!くそっ!このヤロー!」
ホウオウがルシフェルに斬りかかろうとしたその時。
「待て!ホウオウ!」
イブが叫んで制止した。
「あいつは僕が倒す。」
イブがいつになく真剣な顔で前に出た。
ホウオウは余りのイブの剣幕に後ろに下がる。
「ついに女神様の登場だね。あのゴブリン相手じゃ準備運動にもならなかったし。やっと本気が出せるよ。」
ルシフェルがニヤリと笑いながら言う。
「ルシフェル。無駄口を叩いて居られるのも今のうちじゃぞ。」
イブはそう言うと両手を握り前に突き出した。
ブワッ!
空を斬るような風の刃がルシフェルを襲う。
ルシフェルは間一髪かわしたが、左頬と右腕の傷から血がぽたりと落ちた。
「なかなかやるな。女神イブ。今度はこちらからいくぞ!」
羽を凄い速さで羽ばたかせ、次の瞬間、イブ目掛けて猛スピードで突進してきた。
ザンッ!
クッ!
イブの右脇腹がザックリと斬られ血が噴き出した。
「ぼくはこれくらいじゃ負けないぞ。ヒール!」
イブの傷口が塞がって行く。と同時にイブはルシフェルに向かって飛びかかった。
ルシフェルは迎え撃つ。
物凄い勢いでお互いにパンチとキックを繰り出す。
女神と闇の妖精の戦いとは思えない程の肉弾戦だ。
ドンッ!
ルシフェルが吹き飛ばされ壁に激突した。
「氷よ出でよ!フリーズ!」
ルシフェルの身体が瞬間的に氷漬けになる。
「炎よ出でよ!インフェルノ!」
今度は灼熱の炎がルシフェルを襲う。
そして、温度差に耐えきれずルシフェルの身体は破裂し四散した。
「ふう。何とか勝てたな。さて。ゴブローを戻してやろう。健全なる肉体に戻れ、キュア!」
ゴブローの石化が解けていく。
「ゴブロー!良かった!」
ホウオウが思わずゴブローを抱きしめる。
「......ホウオウ、ちょっと痛いんだけど......」
ゴブローが赤くなりながら言う。
「あっ、ご、ごめんなさい。」
ホウオウは慌ててゴブローから離れた。
イブはマイペースに言う。
「お二人さん、先に進むぞ。」
「ありがとう、イブ。命の恩人だ。」
「イブ、ありがとう。」
ゴブローとホウオウの言葉にイブは前を向いたまま手を上げ、そして、親指をグッと上げた。
ゴブローとホウオウは顔を見合わせて笑みを浮かべるのだった。
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