「おじさんを、七草に連れて行ってくれないか、音色ちゃん」
意外な申し出に音色は戸惑う。今しがた音色が心に浮かんだのを沈めた言葉……。一颯たちは喜んでくれるだろうけれども、どの顔をぶら下げていけば良いのか分からない。それに小春の想いを計り知れていない。
小春は更に音色の気持ちを読んだかのように、言葉を続けた。
「実はね、音色ちゃんが七草の仕事をしているのを知ってたんだ。先日行われたパーティー、あれは君が思ってる以上に大きなパーティーだったんだよ。あの場所であんな国際儀礼で行われるパーティーなんてそうあるもんじゃない。一応、元ファッション関係の端くれとして気にしていたのさ」
音色は驚きを隠せない、しかしその驚きはこの闇夜で音色が口に左手を当てた仕草でしか届かない。そんな音色の動揺を他所に小春の言葉は続く。
「そのときのパーティーで音色ちゃんが写っていたんだ……素敵なドレスを着た音色ちゃんがね……そして音色ちゃんはまたこの河原にやってきた……それはつまりそこで『何か』があって、その場所にはいられなくなったのか、とにかく君はここに居る。おじさんの首を手土産にすればまた音色ちゃんは戻れるんじゃないのかな?」
涙が溢れた……。全ては音色のことを想ってのことだった……。どん底だと思ったあの日の出会いはここに繋がっていた……。
「きっとその『何か』だって、音色ちゃんは悪くない……おじさんには分かってる。大丈夫」
自分を信じてくれる人が居る。
(そうだ! 私は悪いことなんてしていない……堂々と戻ればいいんだ)
金を騙し取ろうとしたことはさておいて……。