2月15日金曜日。バレンタインデーから一夜明けたこの日は憎たらしいほどの快晴。空気も澄みきっていて、遠くの山の新葉まで見えるようだ。
恭吾の自転車が冷たい空気を切って進む度に、まだ白い色を付けた気吹が後ろへと流れていく。
今日はいい日になりそうだ。
B組では午前中、衒学の授業で『愛するということ』の課題が授業冒頭に回収された。恭吾のA組では昨日提出日だった。C組は本日午後の授業で回収される。
午後のC組の授業で、禾几はあろうことか午前の授業での優香ちゃんを吊し上げた。
「12月に新規出店した駅前の喫茶店……現世代では『カフェ』と発語されるそうだが、我が町初のきっ……、カフェ、それ故と言えどもそんな粗暴者たちが参集するような舎屋に学校帰途に出向くとは言語道断です、先日も諫言しましたが反省が感取できませんでした」
少しクラスが騒めいた。
『別にいいじゃん』『でも駅を超えると学区外……壁の外だぜ』『カフェ行ってみたい』『別に変な人が集まる場所じゃないのに……いつの時代の話だよ』などと聞こえる。
禾几は静粛にするよう促すと『彼氏彼女ができたら?』の課題、優香ちゃんがカフェに行って『知』『尊重』『責任』『配慮』の4つの要素を深め合いたいと言った内容のレポートを名指しで晒した。
「コーヒーとは修道院の夜業で眠気覚ましに利する物とされていた。今では休息と忘種楽しみのために喫するものとなったが、元来そう言うものではないのです」
禾几は笑い、非難した。
「……だから私が飲んだのはクリスマスローズティーですって言ってるのに……」
その場に立たされた優香は、下を向いて呟いた。