#22
ー/ー 再度訪れたシェリーの家は今度こそ素直に暖かさで出迎えてくれた。
玄関で服に付いた雪を落としてパーカを脇のコートツリーに掛けてからダイニングに進むと、大きな丸卓の四方に木製のダイニングチェアが均等に並んでいた。
昼は三つだったのでわざわざ増やしたのだろう、一つだけ幾らか明るい色をしたものを家主に促される。シェリーは配膳に立った母親についてキッチンへ行ってしまったため、額にわずかな火傷と切り傷の残る父親と二人で待つことになった。
「おかえりなさい。田舎の古いゲームセンターだけど楽しめました?」
「ああ、すこぶる楽しかった。それでおっちゃん、体調に変わりないか?」
「おかげさまでこの通り。なんなら目疲れが解消されていて調子がいいまで。方法とコツを教えていただいても?実はこの村では毎年私のように精霊に憑かれる物が数人はいて。よかったらなんだけど、ジローさんが旅立った後に同じようになったヤツが出た時の為に対処法を教えてもらっても?」
「お安い御用だ」
既にキッチンに用意していたのだろう女性陣が料理を持って来て席に着くと、昨夜リオン一家も行っていた祈りに合わせてシロも日本式の儀礼をしさっそく食事が始まる。机に置かれた二つの鍋から子供に取り分けてもらった料理は、寒い中歩き冷え切った体も暖まりそうな熱々のポタージュスープと、香草の香る肉料理だった。
「スープは分かるがこれは何だ?」
「それはキビヤックです。昨日村の子供から大人になったので、これはそのお裾分けです」
女はリオンの事と察しながらも、耳に入った料理名に噂に伝え聞くグロテスクな見た目も刺激臭もなく想像と大きくずれている事の方に脳の容量を割いていた。
「キビヤックっつったらアザラシの皮に未処理の海鳥を突っ込んで数ヶ月発酵させるって記憶があるんだが、日本に伝わってる調理法はかなり適当な話だったみたいだな」
「いえそれが本来のキビヤックですよ。昔はとれる物が少なく貴重なビタミン源だったのでそんな料理だったらしいけど、あれは中々癖が強くてね。嫌う物も多かったから材料が豊富となった今は現代風な料理へと進化したんだよ。古い製法で作られた物はトラディキビヤック。同じ海鳥を使うけど内臓を抜いてひと口大に切って、アザラシの油で香草と炒めた物を調味料で味を調えたのをモダンキビヤックって呼んでるんだ。トラディは余程の物好きしか作らないし食べないけどね。今では観光業を生業とする者が観光客に振舞うくらいのものさ」
シロは母親の話を聞きながら、なるほど失われるよりは新たな形となって存続するほうを選んだのかとフォークで肉を指し口に運ぶ。現代ネリット族の口に合うよう変貌したモダンキビヤックに臭みはなく、それどころか仄かなハーブと胡椒を基調とした香りが食欲をそそりトラディキビヤックのゲテモノ感を払拭するに十分な絶品料理が旅人の舌と鼻を喜ばせた。
客人が素直な感想を述べそれを聞いた一家も食事を始め、日本の寿司も実は昔と随分変わっている話などをしながら和やかな食事が終わりを迎える。すっかり腹が膨れた事で、女は食べることに夢中になりすぎて脳の端に追いやっていた頼まれ事を思い出した。
「そうだ、すっかり忘れてたが怪異払いの方法を教えて欲しいんだったっけか」
玄関で服に付いた雪を落としてパーカを脇のコートツリーに掛けてからダイニングに進むと、大きな丸卓の四方に木製のダイニングチェアが均等に並んでいた。
昼は三つだったのでわざわざ増やしたのだろう、一つだけ幾らか明るい色をしたものを家主に促される。シェリーは配膳に立った母親についてキッチンへ行ってしまったため、額にわずかな火傷と切り傷の残る父親と二人で待つことになった。
「おかえりなさい。田舎の古いゲームセンターだけど楽しめました?」
「ああ、すこぶる楽しかった。それでおっちゃん、体調に変わりないか?」
「おかげさまでこの通り。なんなら目疲れが解消されていて調子がいいまで。方法とコツを教えていただいても?実はこの村では毎年私のように精霊に憑かれる物が数人はいて。よかったらなんだけど、ジローさんが旅立った後に同じようになったヤツが出た時の為に対処法を教えてもらっても?」
「お安い御用だ」
既にキッチンに用意していたのだろう女性陣が料理を持って来て席に着くと、昨夜リオン一家も行っていた祈りに合わせてシロも日本式の儀礼をしさっそく食事が始まる。机に置かれた二つの鍋から子供に取り分けてもらった料理は、寒い中歩き冷え切った体も暖まりそうな熱々のポタージュスープと、香草の香る肉料理だった。
「スープは分かるがこれは何だ?」
「それはキビヤックです。昨日村の子供から大人になったので、これはそのお裾分けです」
女はリオンの事と察しながらも、耳に入った料理名に噂に伝え聞くグロテスクな見た目も刺激臭もなく想像と大きくずれている事の方に脳の容量を割いていた。
「キビヤックっつったらアザラシの皮に未処理の海鳥を突っ込んで数ヶ月発酵させるって記憶があるんだが、日本に伝わってる調理法はかなり適当な話だったみたいだな」
「いえそれが本来のキビヤックですよ。昔はとれる物が少なく貴重なビタミン源だったのでそんな料理だったらしいけど、あれは中々癖が強くてね。嫌う物も多かったから材料が豊富となった今は現代風な料理へと進化したんだよ。古い製法で作られた物はトラディキビヤック。同じ海鳥を使うけど内臓を抜いてひと口大に切って、アザラシの油で香草と炒めた物を調味料で味を調えたのをモダンキビヤックって呼んでるんだ。トラディは余程の物好きしか作らないし食べないけどね。今では観光業を生業とする者が観光客に振舞うくらいのものさ」
シロは母親の話を聞きながら、なるほど失われるよりは新たな形となって存続するほうを選んだのかとフォークで肉を指し口に運ぶ。現代ネリット族の口に合うよう変貌したモダンキビヤックに臭みはなく、それどころか仄かなハーブと胡椒を基調とした香りが食欲をそそりトラディキビヤックのゲテモノ感を払拭するに十分な絶品料理が旅人の舌と鼻を喜ばせた。
客人が素直な感想を述べそれを聞いた一家も食事を始め、日本の寿司も実は昔と随分変わっている話などをしながら和やかな食事が終わりを迎える。すっかり腹が膨れた事で、女は食べることに夢中になりすぎて脳の端に追いやっていた頼まれ事を思い出した。
「そうだ、すっかり忘れてたが怪異払いの方法を教えて欲しいんだったっけか」
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
再度訪れたシェリーの家は今度こそ素直に暖かさで出迎えてくれた。
玄関で服に付いた雪を落としてパーカを脇のコートツリーに掛けてからダイニングに進むと、大きな丸卓の四方に木製のダイニングチェアが均等に並んでいた。
昼は三つだったのでわざわざ増やしたのだろう、一つだけ幾らか明るい色をしたものを家主に促される。シェリーは配膳に立った母親についてキッチンへ行ってしまったため、額にわずかな火傷と切り傷の残る父親と二人で待つことになった。
玄関で服に付いた雪を落としてパーカを脇のコートツリーに掛けてからダイニングに進むと、大きな丸卓の四方に木製のダイニングチェアが均等に並んでいた。
昼は三つだったのでわざわざ増やしたのだろう、一つだけ幾らか明るい色をしたものを家主に促される。シェリーは配膳に立った母親についてキッチンへ行ってしまったため、額にわずかな火傷と切り傷の残る父親と二人で待つことになった。
「おかえりなさい。田舎の古いゲームセンターだけど楽しめました?」
「ああ、すこぶる楽しかった。それでおっちゃん、体調に変わりないか?」
「ああ、すこぶる楽しかった。それでおっちゃん、体調に変わりないか?」
「おかげさまでこの通り。なんなら目疲れが解消されていて調子がいいまで。方法とコツを教えていただいても?実はこの村では毎年私のように精霊に憑かれる物が数人はいて。よかったらなんだけど、ジローさんが旅立った後に同じようになったヤツが出た時の為に対処法を教えてもらっても?」
「お安い御用だ」
「お安い御用だ」
既にキッチンに用意していたのだろう女性陣が料理を持って来て席に着くと、昨夜リオン一家も行っていた祈りに合わせてシロも日本式の儀礼をしさっそく食事が始まる。机に置かれた二つの鍋から子供に取り分けてもらった料理は、寒い中歩き冷え切った体も暖まりそうな熱々のポタージュスープと、香草の香る肉料理だった。
「スープは分かるがこれは何だ?」
「それはキビヤックです。昨日村の子供から大人になったので、これはそのお裾分けです」
「それはキビヤックです。昨日村の子供から大人になったので、これはそのお裾分けです」
女はリオンの事と察しながらも、耳に入った料理名に噂に伝え聞くグロテスクな見た目も刺激臭もなく想像と大きくずれている事の方に脳の容量を割いていた。
「キビヤックっつったらアザラシの皮に未処理の海鳥を突っ込んで数ヶ月発酵させるって記憶があるんだが、日本に伝わってる調理法はかなり適当な話だったみたいだな」
「いえそれが本来のキビヤックですよ。昔はとれる物が少なく貴重なビタミン源だったのでそんな料理だったらしいけど、あれは中々癖が強くてね。嫌う物も多かったから材料が豊富となった今は現代風な料理へと進化したんだよ。古い製法で作られた物はトラディキビヤック。同じ海鳥を使うけど内臓を抜いてひと口大に切って、アザラシの油で香草と炒めた物を調味料で味を調えたのをモダンキビヤックって呼んでるんだ。トラディは余程の物好きしか作らないし食べないけどね。今では観光業を生業とする者が観光客に振舞うくらいのものさ」
「いえそれが本来のキビヤックですよ。昔はとれる物が少なく貴重なビタミン源だったのでそんな料理だったらしいけど、あれは中々癖が強くてね。嫌う物も多かったから材料が豊富となった今は現代風な料理へと進化したんだよ。古い製法で作られた物はトラディキビヤック。同じ海鳥を使うけど内臓を抜いてひと口大に切って、アザラシの油で香草と炒めた物を調味料で味を調えたのをモダンキビヤックって呼んでるんだ。トラディは余程の物好きしか作らないし食べないけどね。今では観光業を生業とする者が観光客に振舞うくらいのものさ」
シロは母親の話を聞きながら、なるほど失われるよりは新たな形となって存続するほうを選んだのかとフォークで肉を指し口に運ぶ。現代ネリット族の口に合うよう変貌したモダンキビヤックに臭みはなく、それどころか仄かなハーブと胡椒を基調とした香りが食欲をそそりトラディキビヤックのゲテモノ感を払拭するに十分な絶品料理が旅人の舌と鼻を喜ばせた。
客人が素直な感想を述べそれを聞いた一家も食事を始め、日本の寿司も実は昔と随分変わっている話などをしながら和やかな食事が終わりを迎える。すっかり腹が膨れた事で、女は食べることに夢中になりすぎて脳の端に追いやっていた頼まれ事を思い出した。
「そうだ、すっかり忘れてたが怪異払いの方法を教えて欲しいんだったっけか」