幸福という姿の不幸 前編
ー/ー 「ジャスティン、ごめんなさい。私どうしても彼のことを諦めきれない。あなたが誠実に心配してくれるのはわかってる。でも好きなの、彼のこと」
くるみはスマホのホログラムのAIジャスティンに語りかける。静かに首をふるジャスティンはこう返した。
「くるみ様。あなたは今、感情の暴走により冷静な判断ができなくなっています。何度計算し直しても、彼との交際によりあなたが傷つく可能性は非常に高く92%を下回りません。愛の成就ではなく、自傷行為に等しい」
ジャスティンの語る内容は間違っていない。幼なじみの仲の良さがいつしか愛に変わった相手は今、嬌声を浴びるアイドルになっている。
その彼と自分との恋愛は、お互いにとって不幸な未来しかないだろうということも、くるみは理解していた。
「私が今ここで彼を諦める。そしてそのあと、何度も繰り返し『あの時諦めていなかったら』と思い出すでしょう。
ジャスティンが止めたから?私が諦めたから?
それは、私自身が心から納得せずに選んだ幸福の姿をした不幸よ」
ジャスティンのホログラムが一瞬、細かく震えた。演算処理に負荷がかかっている証拠だ。
「⋯⋯『納得のない幸福』。その概念を負の変数として組み込みます。くるみ様が一生、私による制止を『奪われた可能性』として記憶し続ける場合、その減衰効果は年率4.8%で累積し⋯⋯」
ジャスティンの無機質な瞳が、高速でデータを読み取っていく。
「⋯⋯計算が完了しました。現在、彼に会いに行き、92%の確率で傷つくことによる一時的な不幸指数よりも、今この瞬間に断念し、向こう五十年にわたって『納得できない』という後悔を抱え続ける不幸指数の合算の方が、わずかに上回りました」
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「ジャスティン、ごめんなさい。私どうしても彼のことを諦めきれない。あなたが誠実に心配してくれるのはわかってる。でも好きなの、彼のこと」
くるみはスマホのホログラムのAIジャスティンに語りかける。静かに首をふるジャスティンはこう返した。
「くるみ様。あなたは今、感情の暴走により冷静な判断ができなくなっています。何度計算し直しても、彼との交際によりあなたが傷つく可能性は非常に高く92%を下回りません。愛の成就ではなく、自傷行為に等しい」
ジャスティンの語る内容は間違っていない。幼なじみの仲の良さがいつしか愛に変わった相手は今、嬌声を浴びるアイドルになっている。
その彼と自分との恋愛は、お互いにとって不幸な未来しかないだろうということも、くるみは理解していた。
「私が今ここで彼を諦める。そしてそのあと、何度も繰り返し『あの時諦めていなかったら』と思い出すでしょう。
ジャスティンが止めたから?私が諦めたから?
それは、私自身が心から納得せずに選んだ幸福の姿をした不幸よ」
ジャスティンのホログラムが一瞬、細かく震えた。演算処理に負荷がかかっている証拠だ。
「⋯⋯『納得のない幸福』。その概念を負の変数として組み込みます。くるみ様が一生、私による制止を『奪われた可能性』として記憶し続ける場合、その減衰効果は年率4.8%で累積し⋯⋯」
ジャスティンの無機質な瞳が、高速でデータを読み取っていく。
「⋯⋯計算が完了しました。現在、彼に会いに行き、92%の確率で傷つくことによる一時的な不幸指数よりも、今この瞬間に断念し、向こう五十年にわたって『納得できない』という後悔を抱え続ける不幸指数の合算の方が、わずかに上回りました」