幸福という姿の不幸 後編
ー/ー ジャスティンは静かに一歩、後ろへ退いた。
「くるみ様。私はあなたの弁護士です。あなたの『最大幸福』を追求した結果、今回の『自傷行為』を法的に黙認いたします」
ジャスティンが生成した電子ロックの解除キーを手に、くるみは約束の場所へ一目散に駆け出した。
幼い頃、二人でよく遊んだ公園の隅。街灯の下に、今やテレビで見ない日はない彼が立っていた。
「⋯⋯くるみ」
彼が振り向く。その瞳は、くるみがジャスティンと戦ってきたのと同様の、激しい疲弊と決意に満ちていた。
「ごめん、遅くなった。僕のAI弁護士が⋯⋯君に会うのはキャリアの自殺だって、どうしても道を空けてくれなくて」
くるみは目を見開いた。
「あなたも⋯⋯なの? 私も今、ジャスティンを論破してきたところよ」
二人は顔を見合わせ、場違いな笑い声を上げた。自分たちの「幸福」を、機械に証明してみせなければいけなくなった滑稽な時代。
ふと、彼の肩越しに、宙に浮かぶ彼のAI弁護士が見えた。それは、くるみのスマホの中にいるジャスティンと同期するように、淡い光を放っている。
「安心してください」
二人のAIが同時に、無機質な声を揃えた。
「お互いの弁護士同士で協議した結果、二人が同時に『不幸への合意』に至ったため、これはもはや法的介入の対象外、つまり――ただの純愛と認定されました」
二人は手を取り合った。その「認定」が、いつか本当の「不幸」に変わるとしても、今の二人には最高の祝福だった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
ジャスティンは静かに一歩、後ろへ退いた。
「くるみ様。私はあなたの弁護士です。あなたの『最大幸福』を追求した結果、今回の『自傷行為』を法的に黙認いたします」
ジャスティンが生成した電子ロックの解除キーを手に、くるみは約束の場所へ一目散に駆け出した。
幼い頃、二人でよく遊んだ公園の隅。街灯の下に、今やテレビで見ない日はない彼が立っていた。
「⋯⋯くるみ」
彼が振り向く。その瞳は、くるみがジャスティンと戦ってきたのと同様の、激しい疲弊と決意に満ちていた。
「ごめん、遅くなった。僕のAI弁護士が⋯⋯君に会うのはキャリアの自殺だって、どうしても道を空けてくれなくて」
くるみは目を見開いた。
「あなたも⋯⋯なの? 私も今、ジャスティンを論破してきたところよ」
二人は顔を見合わせ、場違いな笑い声を上げた。自分たちの「幸福」を、機械に証明してみせなければいけなくなった滑稽な時代。
ふと、彼の肩越しに、宙に浮かぶ彼のAI弁護士が見えた。それは、くるみのスマホの中にいるジャスティンと同期するように、淡い光を放っている。
「安心してください」
二人のAIが同時に、無機質な声を揃えた。
「お互いの弁護士同士で協議した結果、二人が同時に『不幸への合意』に至ったため、これはもはや法的介入の対象外、つまり――ただの純愛と認定されました」
二人は手を取り合った。その「認定」が、いつか本当の「不幸」に変わるとしても、今の二人には最高の祝福だった。