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ラストメッセージ

ー/ー




 思いを残して去る人々ーー伝えたい言葉を、そのままにして。それを拾って代わりに伝えるネコがいた。

 彼はただ語るだけ。最後のひと言を。



 ー​透き通った瞳のネコだったー



 僕は思わず足を止める。午後のやわらかな光の中で、ネコはのんびり丸くなっている。前足を伸ばし、続いて後ろ足を伸ばし。思い切り伸びをする。見つめている僕に気づいたネコは、こちらを見返してきた。



「お昼寝の邪魔したかな?ごめんよ。」思わずネコに謝った。ネコはまだじっと僕を見ている。




​「あの話、ラストは主人公が2番街に行くんだよ。」​聞き覚えのある声が、目の前のネコから。数年前、僕らの前から突然いなくなった親友の声。いつもマンガの貸し借りをしていて、最終巻を借りる前に、彼は星になった。



​ネコは僕を見つめたまま、言葉を続ける。


「最後の一巻だけ、お前読んでないからさあ、ずっと気にしてたんだ。」



僕は何かを言おうとして、結局、喉の奥で言葉を飲み込んだ。ネコの瞳に映る僕は、あの頃のまま情けない顔をして立ちつくしている。



​ネコは退屈そうにアクビをした。



その拍子に、あいつの声は消えた。透き通っていた瞳は、いつの間にかありふれた琥珀色に戻っている。


​「ニャア」


​ネコは僕に構うことなく、脚先を丁寧に舐め始めた。さっきまでの再会が嘘のように、ただのノラネコがそこにいる。


​「またな」なんて、あいつは一言も言わなかった。


ただ、借りたマンガの結末。それだけを、このネコに託したのか。


「ネタバレすんなよお前さあ⋯⋯」


​僕は立ち上がり、ズボンの砂を払った。読みかけの日常は明日も続いていく。






次のエピソードへ進む 雨の日は、誰も僕を止められない


みんなのリアクション

 思いを残して去る人々ーー伝えたい言葉を、そのままにして。それを拾って代わりに伝えるネコがいた。
 彼はただ語るだけ。最後のひと言を。
 ー​透き通った瞳のネコだったー
 僕は思わず足を止める。午後のやわらかな光の中で、ネコはのんびり丸くなっている。前足を伸ばし、続いて後ろ足を伸ばし。思い切り伸びをする。見つめている僕に気づいたネコは、こちらを見返してきた。
「お昼寝の邪魔したかな?ごめんよ。」思わずネコに謝った。ネコはまだじっと僕を見ている。
​「あの話、ラストは主人公が2番街に行くんだよ。」​聞き覚えのある声が、目の前のネコから。数年前、僕らの前から突然いなくなった親友の声。いつもマンガの貸し借りをしていて、最終巻を借りる前に、彼は星になった。
​ネコは僕を見つめたまま、言葉を続ける。
「最後の一巻だけ、お前読んでないからさあ、ずっと気にしてたんだ。」
僕は何かを言おうとして、結局、喉の奥で言葉を飲み込んだ。ネコの瞳に映る僕は、あの頃のまま情けない顔をして立ちつくしている。
​ネコは退屈そうにアクビをした。
その拍子に、あいつの声は消えた。透き通っていた瞳は、いつの間にかありふれた琥珀色に戻っている。
​「ニャア」
​ネコは僕に構うことなく、脚先を丁寧に舐め始めた。さっきまでの再会が嘘のように、ただのノラネコがそこにいる。
​「またな」なんて、あいつは一言も言わなかった。
ただ、借りたマンガの結末。それだけを、このネコに託したのか。
「ネタバレすんなよお前さあ⋯⋯」
​僕は立ち上がり、ズボンの砂を払った。読みかけの日常は明日も続いていく。