戻された座標軸 前編
ー/ー「おはよう」「おはよう」「おはよう」
「いい朝ですね」「いい朝ですね」「いい朝ですね」
白ネコのパルは、朝になると自宅の裏庭に出る習慣があった。露で湿った草を踏み、塀の影を一周し、物置の前で立ち止まる。
それがパルにとってのパトロール、ささやかな見回り。
ある朝。
物置の脇、苔むしたコンクリートの上。
ーー小さな石が落ちていたーー
昨日までそこには何もなかったはずだ。
パルは鼻先をゆっくり近づけて確かめる。
光る石。太陽の光を反射しているわけではない。内側から絶え間なく静かに滲み出るような、不可解な明るさだった。
前脚を伸ばした瞬間、石はふわりと地面から浮き上がった。驚く間もなく空気に溶けるように一瞬で消え、残像すらない。
パルはしばらくの間立ちつくし、その日の見回りの順番を一つ飛ばして庭を出た。その異物はどこから来たのか、探すべきかーーまだ答えを出せずにいた。
翌日、長い間空き家になっていた隣に三人家族が引っ越してきた。
段ボールの匂いと、明るすぎる声が朝の静寂を切り裂く。
塀の上からそっと様子をうかがうと、視線がぶつかった。彼らはそこに立っているだけだったが、パルが庭で見た光を思わせる瞳⋯⋯金色を帯びた冷ややかな輝き。
数日たった時、飼い主の様子が明らかに変わったことにバルは気づいた。
鳴き声を上げて呼べば来るけれども、
その応答はいつも数秒ほど遅れる。
パルを撫でる手はしばしば途中で止まるようになり、意味もなく空を探すことが増えていった⋯⋯
パルの食事を忘れることはないものの、時折キャットフードの袋をじっと見つめ続け、それが何であるかを確かめるように何度も何度も見返している。
飼い主の動作の中に、以前にはなかった奇妙な「間」が生まれたのを感じているパル。
いったいなぜ?何があった?
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「おはよう」「おはよう」「おはよう」
「いい朝ですね」「いい朝ですね」「いい朝ですね」
白ネコのパルは、朝になると自宅の裏庭に出る習慣があった。露で湿った草を踏み、塀の影を一周し、物置の前で立ち止まる。
それがパルにとってのパトロール、ささやかな見回り。
ある朝。
物置の脇、苔むしたコンクリートの上。
ーー小さな石が落ちていたーー
昨日までそこには何もなかったはずだ。
パルは鼻先をゆっくり近づけて確かめる。
光る石。太陽の光を反射しているわけではない。内側から絶え間なく静かに滲み出るような、不可解な明るさだった。
前脚を伸ばした瞬間、石はふわりと地面から浮き上がった。驚く間もなく空気に溶けるように一瞬で消え、残像すらない。
パルはしばらくの間立ちつくし、その日の見回りの順番を一つ飛ばして庭を出た。その異物はどこから来たのか、探すべきかーーまだ答えを出せずにいた。
翌日、長い間空き家になっていた隣に三人家族が引っ越してきた。
段ボールの匂いと、明るすぎる声が朝の静寂を切り裂く。
塀の上からそっと様子をうかがうと、視線がぶつかった。彼らはそこに立っているだけだったが、パルが庭で見た光を思わせる瞳⋯⋯金色を帯びた冷ややかな輝き。
数日たった時、飼い主の様子が明らかに変わったことにバルは気づいた。
鳴き声を上げて呼べば来るけれども、
その応答はいつも数秒ほど遅れる。
パルを撫でる手はしばしば途中で止まるようになり、意味もなく空を探すことが増えていった⋯⋯
パルの食事を忘れることはないものの、時折キャットフードの袋をじっと見つめ続け、それが何であるかを確かめるように何度も何度も見返している。
飼い主の動作の中に、以前にはなかった奇妙な「間」が生まれたのを感じているパル。
いったいなぜ?何があった?