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第36話

ー/ー



 九月二日。
 東の空からは、眩しい光が降り注ぐ。
 夏が終わったというのにもかかわらず、今日も朝から汗が吹き出しそうな暑さだ。

「う~ん……」

 俺は上半身裸のまま、背伸びをした。
 昨日の晩あれだけ激しく愛し合った佳織はというと、生まれた時のままの姿でスヤスヤと寝息を立てていた。

「佳織は本当に底なしというか、なんというか……。でも……」

 ふと俺はベッドの脇にあるゴミ箱を見た。そこにはアレのパッケージと使用済みのアレが収まっていた。
 昨日は何分くらい愛し合ったのだろうか。最初は佳織にリードされていたのが、いつの間にか自分がリードしていたような気がする。そのことを思い出すと、股間がまた膨らみそうだ。
 すると、朝の太陽につられて佳織が「……ん、トオル、おはよ……」と俺に声をかけてきた。

「おはよう、佳織」

 俺がそう答えると、佳織は「トオル、今何時?」と尋ねてきた。
 スマホはディープキスをした後で佳織がベッドのラックに置いていたから……、と、手に取ってロックを解除する。
 今の時間は午前七時……、半を過ぎていたよ。

「午前七時半ちょっとすぎ、かな」
「そう? ちょっと昨日は張り切りすぎちゃったな……」

 佳織は裸のまま背伸びすると、たわわな胸がプルンと揺れ、ふわふわとしたロングヘアがこれまた香りの動きと連動して揺れる。
 それにたわわな胸からは、綺麗なピンク色のアレが……。

「佳織、ブラは?」
「ん……」

 胸元を見ると、佳織は慌てて「ひゃぁ!」と声を上げると、シーツで胸元を隠す。
 俺は彼女を見ないふりをしてベッドから立ち上がり、脱ぎ散らかした自分のTシャツと短パンを穿いた。
 佳織はちょっと顔を真っ赤にすると、少しだけ俯いて俺を少しだけ覗き込んだ。

「ごめんね! ……見たでしょ」
「いや、見ていないって」
「いーや、見たでしょ。鼻の下、伸ばしているよ」
「だから見てないって……」

 すると佳織は顔を膨らませて、「ちょっとだけ着替えるから、さっさとアンタの部屋に戻ってよ!」と怒号を飛ばした。
 やれやれ、仕方ないな。いったん自分の部屋に戻りますか。

 ◇

 身支度を整えてから佳織の部屋に戻ると、昨日愛し合った痕跡はすっかりとなくなっていた。終戦記念日の日に愛し合った後も、佳織はすぐに賢者モードに入って痕跡を消していた。

「朝食、出来ているよ。今日はご飯じゃなくてトーストになるけど、それでいい?」
「もちろんだよ」

 佳織がいつも使っているテーブルを見ると、そこにはこんがりと焼けたトーストが一枚乗っている皿がふたつ並べられていた。そして、トーストの上にはベーコンエッグが乗せられていた。昨日食べ残したサラダが入ったサラダボウルもあるし、朝チュン定番のコーヒーカップにはこれまた熱々のコーヒーが注がれている。

「どうぞ」

 佳織はいつもと変わらぬ笑顔で俺に朝食を勧めてくれた。

「ありがとう」

 俺が腰かけると、いつも夕食を一緒に食べるときと同じように互いに「いただきます」とあいさつをしてから朝食を食べ始めた。

 こうして二人で食べる朝食って、本当においしい。女性不信だったのが嘘のようだ。

 思えば、告白してそのままの勢いで結ばれた日から、俺の中で何かが変わった。女性に対する恐れなどがなくなっていた。いや、正確には佳織と出会った日から俺は少しずつ女性に対する恐れがなくなっていた。
 佳織と出会い、愛佳さんと出会い、そして大久保さんと出会い……。

 愛佳さんは彼氏に振られてちょっと落ち込んでいる一方で、大久保さんは吉田とともに今日もラブラブカップルぶりを見せつけてくる。吉田が羨ましいと思ったこともあったけど、そんな俺も……。

「ねえ」
「ん、何?」
「……朝ごはん食べたら、いったん服を脱ごうよ」
「え?」

 ……そう、剛速球を投げつける佳織と結ばれた。服を脱ぐとなると、やることはひとつしかなくなる。
 昨日の夜は何度もエッチしたけど、そのたびごとに出るものの量が少なくなった。今日もまた搾り取られるのかと思いきや……。

「ほら、もう私はスタンバイできているよ」

 あっという間に佳織はご飯を食べ終えては折角着たばかりのTシャツを脱いでいた。昨日と違うところは、Tシャツを折りたたんでブラもそっと置いてあるところか。って、佳織のブラ、色気も何にもないものじゃないか。ということは……?

「エッチするつもりじゃ、ない……?」
「そうだよ。ほら、早く上着だけ脱いでこっちに来て!」
「もう、分かったよ」

 俺は佳織に促されるがままに上着を脱いで折りたたむと、佳織が待ち構えているベッドに向かった。
 すると佳織はベッド脇の充電器に向かい、何かを取り出した。

「ハイ、トオルのスマホ。三度目のエッチの後でこっそり充電しておいたよ」
「ありがとう。それにしても、よく三度抱き合った後にそこまでする体力があるよな」
「ふふん、体を鍛えているから、一度や二度のエッチで動けなくなるなんてことはないんだよ」

 そこは違うだろ、と突っ込みを入れたくなりそうだけど、今の俺は佳織とこうしてくだらないことを話すだけでも楽しい。

「佳織のスマホはどうしたんだ?」
「私のスマホはまだまだバッテリーがあるから、今日は充電しなくても大丈夫かな。それと、トオルのスマホを少しだけ私に貸してくれないかな? ロックを解いてからでいいからさ」

 スマホの中にはエッチな漫画も入っているけど、この際仕方ないか。
 ロックを解くと、俺は佳織にスマホを渡した。

「それで、俺のスマホで何をするんだよ」
「フッフッフ」

 佳織は不敵な笑みを浮かべると、たわわな胸元をあけっぴろげにしては俺と腕を組み、右手には俺のスマホを手に取って……。

「パシャッ!」

 ……何をしているんだよ。佳織。今、シャッターを押していなかったか?

「佳織、いったい何を……」
「良いから見ていて。細工は流々、仕上げを御覧じろってね」

 そう言いながら、佳織は手慣れた手つきでスマホをいじっていた。
 まさかLEINを開いているんじゃないだろうな……と思ったら、気が付かぬ間にベッドから消えていた。俺の傍らには、さっき貸したばかりのスマホが置いてあった。

「いったい何をしてくれたんだよ……」

 俺はLEINを見てみると……。

(NAO)>「どういうことよ!」
(NAO)>「アンタのカノジョ、私よりいい女じゃないの!」
(NAO)>「見てなさいよ、トオルに堀江佳織! 来年は陸奥大学に行って、アンタ達二人を見返してやるからね!」

 NAOって……、清水からだ! まさか、佳織……。
 清水とのトークルームの履歴をさかのぼると、そこには……。

(トオル)>「親愛なる清水様、あなたの話はすべて聞かせていただきました」
(トオル)>「トオルの童貞を奪い、なおかつしつこく迫ったあなたにはトオルを任せることはできません」
(トオル)>「今後はこの私が鹿島徹の恋人として、いや、嫁候補として誠心誠意尽くさせていただきます」
(トオル)>「トオルを奪えるものなら奪ってみなさい」
(トオル)>「あなたのライバルである堀江佳織より」

 そして、その下には寝取られラブレターと言わんばかりの自撮り写真が添えられていた。
 写真には「宣戦布告よ」との文字が……。

「佳織、どういうことだよ!」

 俺は折りたたんだTシャツに袖を通すと、佳織のところをちょっとだけ睨んだ。

「いやね、トオルをひどい目に遭わせた子がどんなのかと思ったから、ちょっと……、ね」
「ちょっとじゃないよ! 宣戦布告しちゃってどうするんだよ? アイツ、陸奥大学(ミチペー)目指すって言ってきたぞ」
「別にいいんじゃないの? やられたらやり返すってのはこの世の常じゃない」
「それが戦争を生み出すんだよ! 火種をばらまいてどうするんだよ?」
「大丈夫だよ。……あの子、結構頑張っているみたいだし」

 そういや、清水のトークリストを見ているとずっと参考書と格闘している様子を自撮りしていたような……。
 清水も遠い横須賀の地で頑張っていることだし、それに免じて許してやるか。

「それはいいけど、……大丈夫か、お前。相手はクラスの野郎全員と経験済みの女だぞ」
「大丈夫だよ。私には愛佳さんと凜乃さんがついているからね」

 愛佳さんはともかくとして、凜乃さんは……まぁ、いいか。あの二人が居れば、何とかなるだろう。
 あの春の日に出会った俺と佳織。俺は嘘告白と童貞強奪で女性不信となり、佳織は卑猥な話が原因で男性不信になった。
 しかし、今こうして居られるのは、あの日自分の恥ずかしい過去を打ち明けたからだ。
 俺と佳織がいつまでも仲良く居られるように――、俺は佳織と軽妙なやり取りをしながら、心の中で願った。





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 九月二日。
 東の空からは、眩しい光が降り注ぐ。
 夏が終わったというのにもかかわらず、今日も朝から汗が吹き出しそうな暑さだ。
「う~ん……」
 俺は上半身裸のまま、背伸びをした。
 昨日の晩あれだけ激しく愛し合った佳織はというと、生まれた時のままの姿でスヤスヤと寝息を立てていた。
「佳織は本当に底なしというか、なんというか……。でも……」
 ふと俺はベッドの脇にあるゴミ箱を見た。そこにはアレのパッケージと使用済みのアレが収まっていた。
 昨日は何分くらい愛し合ったのだろうか。最初は佳織にリードされていたのが、いつの間にか自分がリードしていたような気がする。そのことを思い出すと、股間がまた膨らみそうだ。
 すると、朝の太陽につられて佳織が「……ん、トオル、おはよ……」と俺に声をかけてきた。
「おはよう、佳織」
 俺がそう答えると、佳織は「トオル、今何時?」と尋ねてきた。
 スマホはディープキスをした後で佳織がベッドのラックに置いていたから……、と、手に取ってロックを解除する。
 今の時間は午前七時……、半を過ぎていたよ。
「午前七時半ちょっとすぎ、かな」
「そう? ちょっと昨日は張り切りすぎちゃったな……」
 佳織は裸のまま背伸びすると、たわわな胸がプルンと揺れ、ふわふわとしたロングヘアがこれまた香りの動きと連動して揺れる。
 それにたわわな胸からは、綺麗なピンク色のアレが……。
「佳織、ブラは?」
「ん……」
 胸元を見ると、佳織は慌てて「ひゃぁ!」と声を上げると、シーツで胸元を隠す。
 俺は彼女を見ないふりをしてベッドから立ち上がり、脱ぎ散らかした自分のTシャツと短パンを穿いた。
 佳織はちょっと顔を真っ赤にすると、少しだけ俯いて俺を少しだけ覗き込んだ。
「ごめんね! ……見たでしょ」
「いや、見ていないって」
「いーや、見たでしょ。鼻の下、伸ばしているよ」
「だから見てないって……」
 すると佳織は顔を膨らませて、「ちょっとだけ着替えるから、さっさとアンタの部屋に戻ってよ!」と怒号を飛ばした。
 やれやれ、仕方ないな。いったん自分の部屋に戻りますか。
 ◇
 身支度を整えてから佳織の部屋に戻ると、昨日愛し合った痕跡はすっかりとなくなっていた。終戦記念日の日に愛し合った後も、佳織はすぐに賢者モードに入って痕跡を消していた。
「朝食、出来ているよ。今日はご飯じゃなくてトーストになるけど、それでいい?」
「もちろんだよ」
 佳織がいつも使っているテーブルを見ると、そこにはこんがりと焼けたトーストが一枚乗っている皿がふたつ並べられていた。そして、トーストの上にはベーコンエッグが乗せられていた。昨日食べ残したサラダが入ったサラダボウルもあるし、朝チュン定番のコーヒーカップにはこれまた熱々のコーヒーが注がれている。
「どうぞ」
 佳織はいつもと変わらぬ笑顔で俺に朝食を勧めてくれた。
「ありがとう」
 俺が腰かけると、いつも夕食を一緒に食べるときと同じように互いに「いただきます」とあいさつをしてから朝食を食べ始めた。
 こうして二人で食べる朝食って、本当においしい。女性不信だったのが嘘のようだ。
 思えば、告白してそのままの勢いで結ばれた日から、俺の中で何かが変わった。女性に対する恐れなどがなくなっていた。いや、正確には佳織と出会った日から俺は少しずつ女性に対する恐れがなくなっていた。
 佳織と出会い、愛佳さんと出会い、そして大久保さんと出会い……。
 愛佳さんは彼氏に振られてちょっと落ち込んでいる一方で、大久保さんは吉田とともに今日もラブラブカップルぶりを見せつけてくる。吉田が羨ましいと思ったこともあったけど、そんな俺も……。
「ねえ」
「ん、何?」
「……朝ごはん食べたら、いったん服を脱ごうよ」
「え?」
 ……そう、剛速球を投げつける佳織と結ばれた。服を脱ぐとなると、やることはひとつしかなくなる。
 昨日の夜は何度もエッチしたけど、そのたびごとに出るものの量が少なくなった。今日もまた搾り取られるのかと思いきや……。
「ほら、もう私はスタンバイできているよ」
 あっという間に佳織はご飯を食べ終えては折角着たばかりのTシャツを脱いでいた。昨日と違うところは、Tシャツを折りたたんでブラもそっと置いてあるところか。って、佳織のブラ、色気も何にもないものじゃないか。ということは……?
「エッチするつもりじゃ、ない……?」
「そうだよ。ほら、早く上着だけ脱いでこっちに来て!」
「もう、分かったよ」
 俺は佳織に促されるがままに上着を脱いで折りたたむと、佳織が待ち構えているベッドに向かった。
 すると佳織はベッド脇の充電器に向かい、何かを取り出した。
「ハイ、トオルのスマホ。三度目のエッチの後でこっそり充電しておいたよ」
「ありがとう。それにしても、よく三度抱き合った後にそこまでする体力があるよな」
「ふふん、体を鍛えているから、一度や二度のエッチで動けなくなるなんてことはないんだよ」
 そこは違うだろ、と突っ込みを入れたくなりそうだけど、今の俺は佳織とこうしてくだらないことを話すだけでも楽しい。
「佳織のスマホはどうしたんだ?」
「私のスマホはまだまだバッテリーがあるから、今日は充電しなくても大丈夫かな。それと、トオルのスマホを少しだけ私に貸してくれないかな? ロックを解いてからでいいからさ」
 スマホの中にはエッチな漫画も入っているけど、この際仕方ないか。
 ロックを解くと、俺は佳織にスマホを渡した。
「それで、俺のスマホで何をするんだよ」
「フッフッフ」
 佳織は不敵な笑みを浮かべると、たわわな胸元をあけっぴろげにしては俺と腕を組み、右手には俺のスマホを手に取って……。
「パシャッ!」
 ……何をしているんだよ。佳織。今、シャッターを押していなかったか?
「佳織、いったい何を……」
「良いから見ていて。細工は流々、仕上げを御覧じろってね」
 そう言いながら、佳織は手慣れた手つきでスマホをいじっていた。
 まさかLEINを開いているんじゃないだろうな……と思ったら、気が付かぬ間にベッドから消えていた。俺の傍らには、さっき貸したばかりのスマホが置いてあった。
「いったい何をしてくれたんだよ……」
 俺はLEINを見てみると……。
(NAO)>「どういうことよ!」
(NAO)>「アンタのカノジョ、私よりいい女じゃないの!」
(NAO)>「見てなさいよ、トオルに堀江佳織! 来年は陸奥大学に行って、アンタ達二人を見返してやるからね!」
 NAOって……、清水からだ! まさか、佳織……。
 清水とのトークルームの履歴をさかのぼると、そこには……。
(トオル)>「親愛なる清水様、あなたの話はすべて聞かせていただきました」
(トオル)>「トオルの童貞を奪い、なおかつしつこく迫ったあなたにはトオルを任せることはできません」
(トオル)>「今後はこの私が鹿島徹の恋人として、いや、嫁候補として誠心誠意尽くさせていただきます」
(トオル)>「トオルを奪えるものなら奪ってみなさい」
(トオル)>「あなたのライバルである堀江佳織より」
 そして、その下には寝取られラブレターと言わんばかりの自撮り写真が添えられていた。
 写真には「宣戦布告よ」との文字が……。
「佳織、どういうことだよ!」
 俺は折りたたんだTシャツに袖を通すと、佳織のところをちょっとだけ睨んだ。
「いやね、トオルをひどい目に遭わせた子がどんなのかと思ったから、ちょっと……、ね」
「ちょっとじゃないよ! 宣戦布告しちゃってどうするんだよ? アイツ、|陸奥大学《ミチペー》目指すって言ってきたぞ」
「別にいいんじゃないの? やられたらやり返すってのはこの世の常じゃない」
「それが戦争を生み出すんだよ! 火種をばらまいてどうするんだよ?」
「大丈夫だよ。……あの子、結構頑張っているみたいだし」
 そういや、清水のトークリストを見ているとずっと参考書と格闘している様子を自撮りしていたような……。
 清水も遠い横須賀の地で頑張っていることだし、それに免じて許してやるか。
「それはいいけど、……大丈夫か、お前。相手はクラスの野郎全員と経験済みの女だぞ」
「大丈夫だよ。私には愛佳さんと凜乃さんがついているからね」
 愛佳さんはともかくとして、凜乃さんは……まぁ、いいか。あの二人が居れば、何とかなるだろう。
 あの春の日に出会った俺と佳織。俺は嘘告白と童貞強奪で女性不信となり、佳織は卑猥な話が原因で男性不信になった。
 しかし、今こうして居られるのは、あの日自分の恥ずかしい過去を打ち明けたからだ。
 俺と佳織がいつまでも仲良く居られるように――、俺は佳織と軽妙なやり取りをしながら、心の中で願った。


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