第71話
ー/ー「よぉ、悲しい顔をしてどうしたんだ」
コンペティティブをやることになって泣く泣くPCを起動していると、黒澤先輩が近づいてきた。
「あ、実はクリスマスパーティーをやると話したら……」
「私達のためにコンペティティブに参加してもらうってことになったのよね~」
「……返す言葉もございません……」
国分先輩達はこないだのテストの後も、打ち上げと称してカラオケならぬアンレートマラソンを持ち掛けた。
桃花先輩に桜花先輩は人を引っ張る才能が有りすぎるというか、なんというか……、やれやれだよ。
「富樫、予定があるのに別の予定をぶち込まれた~って顔しているぜ」
「ま、まぁ、そうですけど……」
何せ今日は両親が不在、……というよりは色々あって帰りが遅くなる合間を見計らって朋恵達が来る。早く帰って掃除しないと、朋恵達に何を言われるか分からない。
「今日はパーティーのために、それで早く帰ろうと思ったのですが、コンペティティブを通しでやることになって……」
「やれやれ、そういうことだったら俺に任せとけ。……桃花、桜花。俺が代わりになるから、こいつを帰してやってくれ。それと藤島、那須はどうした?」
「那須君ですか? 今日は家の手伝いがあるそうなので、帰りました」
「那須君の家って、ひょっとしてお菓子屋さん?」
「ええ、そうだと聞いています」
那須君が部活のグループチャットに「23日と24日は家の事情があるのでお休みします」とメッセージを送ってきたのは、そういった事情があったのか。
僕が思っていた通りだ。
「藤島、お前はどうするんだ?」
「私は午後三時頃まで付き合いますよ。私の家は母さんが専業主婦なので、買い物も母さんがやってくれるので……」
「さて、そうなれば……富樫、お前はどうするよ?」
「僕は……ちょっと待っててください」
僕はスマホを開くと、いつもの三人のグループチャットに目を通した。
朋恵のメッセージによると、来年の頭にあるサッカーの新人戦に向けてちょっと応援練習をするらしく、午後三時頃まで部活、とのことだった。
良し、それならば一緒の時間に帰れるな。
僕は桃花先輩の方を向くと、「三時頃までなら付き合いますよ」と答えた。
「やった! フルパーティーじゃないのが残念だけど、やろうよ!」
桃花先輩が満面の笑みを浮かべると、早速僕達はGYALORANTを始めた。
今年は後二日ほど桃花先輩達と付き合うことになるけど、出来るだけ楽しもう。
◇
コンペティティブを二戦してから、僕達はやっと解放された。
結果は二戦全勝で、野良の人が頑張ってくれたお陰でどうにか勝てた感じだ。
桃花先輩達と部室で別れると、僕は真っすぐに家に戻った。
チア部の二人にグループチャットで「こちらは部活が終わったよ」とメッセージを送った。
既読がついたのは、僕が自宅に戻ってからだった。練習が結構長引いたのかな。
台所のカウンターには「今日は父さんと一緒に光のページェントを見に行くために遅くなる」との母さんの置手紙があった。
父さんは残業をせずに帰るのか、ちょっと気になるけど、まぁそこら辺はどうでもいいか。
「よし、着替えてから掃除しよう」
早速着替えると、僕はリビングの掃除と風呂やトイレの掃除を済ませる。
仙台に来てから、母さんがパートを入れるようになったせいもあって、家事は全員で分担するようになった。
前カノや夏希姉が頻繁に来ることを想定して、自分の部屋の掃除はおろか廊下やトイレは念入りに掃除をしている。
お風呂場も良く掃除をしているけれど……、今日はやっておこう。もし二人が「今夜泊まるから」となった時に風呂場が汚いとどうしようもないからね。
◇
一通り掃除を済ませると、後は二人を待つばかりとなった。
誰も居ないリビングで映画を見ながら過ごしていたが、インターホンの音が鳴る度毎に朋恵達が来たのか? と思ってインターホンの画面を何度も覗いた。
ただ、平日のこの時間に来るのはセールスだったり、宗教勧誘だったり……。
特に宗教勧誘クリスマスだからといって、聖書の話なんてしないでもらいたい。
両親が北東学院大学の卒業生で良かったよ。
新興宗教団体を信じたら、最後はずるずると引きずられるって散々言い聞かされたからな、こっちは。
……ピンポーン……。
「はーい、今行きますよ……」
何度目か分からないインターホンの音を聞くと、リビングから立ち上がってインターホンの画面を確認した。
そこには、ふわふわとしたツインテールとギャルっぽいビジュアルの朋恵とちょっぴりイケメンっぽく見える愛未が居た。
『ヤッホー! ケーキを買ってきたよ』
『こちらは料理と飲み物を用意したぞ』
朋恵が手にしている箱を見ると、そこには四丁目にあるお菓子屋さんの名前があった。
去年、一昨年と母さんが誕生日やクリスマスの日にケーキを買ってきたことがあったなぁ。誕生日はケーキを買ってくれたけど、今年のクリスマスは二人とも外出することになったので、こういう気づかいはありがたい。
「朋恵、それって四丁目のお菓子屋さんで買ってきたもの?」
『そうだよ。前もって頼んでおいたんだ』
「ありがとう。愛未は?」
『母さんが作ってくれた料理を分けてもらったんだ。生協で買ってきたクリスマスチキンと飲み物も入っているよ』
愛未はそう話すと、荷物が詰まっているエコバッグとスポーツバッグを僕に見せた。
「今開けるから、ちょっと待ってて」
『『はーい』』
僕は二人に向かって呼びかけると、インターホンの開錠ボタンを押して玄関に向かう。
入り口には、丈の短い白と黒のツートンコーデの冬物コートに身を包んだ朋恵とちょっと長めのコートに身を包んだ愛未が二人並んで立っていた。
「いらっしゃい」
僕は二人に声を掛けると、朋恵が手に持っているケーキの箱を受け取った。
「そうそう、このケーキって、もしかしてブッシュ・ド・ノエル?」
クリスマスケーキとなると、僕の家ではブッシュ・ド・ノエルといって丸太を模ったケーキを買うことが多い。三人で食べても丁度いい量だし、何せあそこの店のお菓子は美味しいものばかりだ。
「そうだよ」
朋恵が頷くと、さらに二人はそれぞれのバッグを僕に渡した。
待てよ? 荷物ってことは、今夜ここに泊まるってことか?
「……まさか、親に了解は取ったの?」
「「うん」」
二人とも顔を真っ赤にして頷いたってことは、本当なのか。
まさかとは思ったけど、……いや、こういうことって……。
「そ、それじゃあ案内するから、上がって」
僕が二人にそう語りかけると、二人は靴とコートを脱いで家の中に上がった。
プレゼントは昨日のうちに買っておいたけど、この状況で渡せるかな……?
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「よぉ、悲しい顔をしてどうしたんだ」
コンペティティブをやることになって泣く泣くPCを起動していると、黒澤先輩が近づいてきた。
「あ、実はクリスマスパーティーをやると話したら……」
「《《私達のために》》コンペティティブに参加してもらうってことになったのよね~」
「……返す言葉もございません……」
国分先輩達はこないだのテストの後も、打ち上げと称してカラオケならぬアンレートマラソンを持ち掛けた。
桃花先輩に桜花先輩は人を引っ張る才能が有りすぎるというか、なんというか……、やれやれだよ。
「富樫、予定があるのに別の予定をぶち込まれた~って顔しているぜ」
「ま、まぁ、そうですけど……」
何せ今日は両親が不在、……というよりは色々あって帰りが遅くなる合間を見計らって朋恵達が来る。早く帰って掃除しないと、朋恵達に何を言われるか分からない。
「今日はパーティーのために、それで早く帰ろうと思ったのですが、コンペティティブを通しでやることになって……」
「やれやれ、そういうことだったら俺に任せとけ。……桃花、桜花。俺が代わりになるから、こいつを帰してやってくれ。それと藤島、那須はどうした?」
「那須君ですか? 今日は家の手伝いがあるそうなので、帰りました」
「那須君の家って、ひょっとしてお菓子屋さん?」
「ええ、そうだと聞いています」
那須君が部活のグループチャットに「23日と24日は家の事情があるのでお休みします」とメッセージを送ってきたのは、そういった事情があったのか。
僕が思っていた通りだ。
「藤島、お前はどうするんだ?」
「私は午後三時頃まで付き合いますよ。私の家は母さんが専業主婦なので、買い物も母さんがやってくれるので……」
「さて、そうなれば……富樫、お前はどうするよ?」
「僕は……ちょっと待っててください」
僕はスマホを開くと、いつもの三人のグループチャットに目を通した。
朋恵のメッセージによると、来年の頭にあるサッカーの新人戦に向けてちょっと応援練習をするらしく、午後三時頃まで部活、とのことだった。
良し、それならば一緒の時間に帰れるな。
僕は桃花先輩の方を向くと、「三時頃までなら付き合いますよ」と答えた。
「やった! フルパーティーじゃないのが残念だけど、やろうよ!」
桃花先輩が満面の笑みを浮かべると、早速僕達はGYALORANTを始めた。
今年は後二日ほど桃花先輩達と付き合うことになるけど、出来るだけ楽しもう。
◇
コンペティティブを二戦してから、僕達はやっと解放された。
結果は二戦全勝で、野良の人が頑張ってくれたお陰でどうにか勝てた感じだ。
桃花先輩達と部室で別れると、僕は真っすぐに家に戻った。
チア部の二人にグループチャットで「こちらは部活が終わったよ」とメッセージを送った。
既読がついたのは、僕が自宅に戻ってからだった。練習が結構長引いたのかな。
台所のカウンターには「今日は父さんと一緒に光のページェントを見に行くために遅くなる」との母さんの置手紙があった。
父さんは残業をせずに帰るのか、ちょっと気になるけど、まぁそこら辺はどうでもいいか。
「よし、着替えてから掃除しよう」
早速着替えると、僕はリビングの掃除と風呂やトイレの掃除を済ませる。
仙台に来てから、母さんがパートを入れるようになったせいもあって、家事は全員で分担するようになった。
前カノや夏希姉が頻繁に来ることを想定して、自分の部屋の掃除はおろか廊下やトイレは念入りに掃除をしている。
お風呂場も良く掃除をしているけれど……、今日はやっておこう。もし二人が「今夜泊まるから」となった時に風呂場が汚いとどうしようもないからね。
◇
一通り掃除を済ませると、後は二人を待つばかりとなった。
誰も居ないリビングで映画を見ながら過ごしていたが、インターホンの音が鳴る度毎に朋恵達が来たのか? と思ってインターホンの画面を何度も覗いた。
ただ、平日のこの時間に来るのはセールスだったり、宗教勧誘だったり……。
特に宗教勧誘クリスマスだからといって、聖書の話なんてしないでもらいたい。
両親が北東学院大学の卒業生で良かったよ。
新興宗教団体を信じたら、最後はずるずると引きずられるって散々言い聞かされたからな、こっちは。
……ピンポーン……。
「はーい、今行きますよ……」
何度目か分からないインターホンの音を聞くと、リビングから立ち上がってインターホンの画面を確認した。
そこには、ふわふわとしたツインテールとギャルっぽいビジュアルの朋恵とちょっぴりイケメンっぽく見える愛未が居た。
『ヤッホー! ケーキを買ってきたよ』
『こちらは料理と飲み物を用意したぞ』
朋恵が手にしている箱を見ると、そこには四丁目にあるお菓子屋さんの名前があった。
去年、一昨年と母さんが誕生日やクリスマスの日にケーキを買ってきたことがあったなぁ。誕生日はケーキを買ってくれたけど、今年のクリスマスは二人とも外出することになったので、こういう気づかいはありがたい。
「朋恵、それって四丁目のお菓子屋さんで買ってきたもの?」
『そうだよ。前もって頼んでおいたんだ』
「ありがとう。愛未は?」
『母さんが作ってくれた料理を分けてもらったんだ。生協で買ってきたクリスマスチキンと飲み物も入っているよ』
愛未はそう話すと、荷物が詰まっているエコバッグとスポーツバッグを僕に見せた。
「今開けるから、ちょっと待ってて」
『『はーい』』
僕は二人に向かって呼びかけると、インターホンの開錠ボタンを押して玄関に向かう。
入り口には、丈の短い白と黒のツートンコーデの冬物コートに身を包んだ朋恵とちょっと長めのコートに身を包んだ愛未が二人並んで立っていた。
「いらっしゃい」
僕は二人に声を掛けると、朋恵が手に持っているケーキの箱を受け取った。
「そうそう、このケーキって、もしかしてブッシュ・ド・ノエル?」
クリスマスケーキとなると、僕の家ではブッシュ・ド・ノエルといって丸太を模ったケーキを買うことが多い。三人で食べても丁度いい量だし、何せあそこの店のお菓子は美味しいものばかりだ。
「そうだよ」
朋恵が頷くと、さらに二人はそれぞれのバッグを僕に渡した。
待てよ? 荷物ってことは、今夜ここに泊まるってことか?
「……まさか、親に了解は取ったの?」
「「うん」」
二人とも顔を真っ赤にして頷いたってことは、本当なのか。
まさかとは思ったけど、……いや、こういうことって……。
「そ、それじゃあ案内するから、上がって」
僕が二人にそう語りかけると、二人は靴とコートを脱いで家の中に上がった。
プレゼントは昨日のうちに買っておいたけど、この状況で渡せるかな……?