第54話

ー/ー



「おっ、今回のマップはSplit Aroundだね」
「いかにも海外の人が考える日本の街をイメージしたマップですね」

 今日のアンレートで選ばれたマップは狭い路地が多く、高層ビルなどからのスナイプがやりやすそうな感じがする。
 何度もデスマッチで練習したマップだから慣れているとはいえ、油断は禁物だ。

「まずはエージェント選びですが、お二方はどんなのを使っていますか?」
「私は韓国出身のデュエリストをメインで使っているよ」
「米沢さんは最前線で戦うのが好きなんですか」
「そうだね。チアではいっつも恵麻を支えてばっかりだから、ゲームの中だけでも前に出たいからね」
「私はトップをやっているから、ゲームの中では目立たないようにしているのでコントローラーを使っていますね」

 片倉さんと米沢さんの会話を聞いていると、二人ともよく考えてエージェントを選んでいる感じがする。
 僕はというと、初心者向けであるイギリス出身のデュエリストを使っている。自分自身で回復できるし、撃ち合いに慣れていないからね。

 今回のメンバーが誰を選んだのかというと――。

・僕:デュエリスト(イギリス出身)
・那須君:デュエリスト(ドイツ出身)
・藤島さん:センチネル(中国出身)
・片倉さん:コントローラー(出身地不明)
・米沢さん:デュエリスト(韓国出身)

 ――見事なまでに最前線で戦うキャラクターがメインの構成じゃないか。

「大丈夫かなぁ~」

 ちょっと不安な面持ちで藤島さんに話すと、「大丈夫ですよ、いつも通り落ち着いてやれば」と励ましてくれた。

「私は那須君とBメイン側に回りますから、米沢さん達はAヘブン周辺に回ってください」
「Aヘブンか、ここは私の腕の見せ所だね」
「瑞希ちゃん、良い所見せてね」
「合点承知!」
「富樫君は私についてきて、那須君のバックアップをお願いします」
「了解」

 会話していると、あっという間に購入フェーズが終わった。
 向かい側では朋恵と愛未がPCを起動して何かしているけれども、……それどころじゃないや。今は試合に集中、集中!

 ◇

 三十分後――。

「ふー、終わった~」

 試合終了と共に、米沢さん達が真っ先に声を上げた。
 結果は13対12で逆転負けとなったものの、僕たちは満足げな表情を浮かべていた。
 同じ部活ではない生徒とGYALORANTをやるのは初めての体験だったから緊張したけれども、楽しかった。

 チア部で忙しいのにゲームもやっている米沢さん達があっという間に危機的な状況を覆したお陰で、試合は最後までもつれ込んだ。
 最後は相手がスパイクを解除するのを阻止しようと奔走したが、回復が間に合わずに全滅して試合終了となった。

 負けたとはいえ、僕達は満足感で満ち溢れていた。
 いつも先輩達とやっているフルパーティーでのアンレートを初見の人たちと一緒にやれるなんて――。

「ホント、楽しかったですよ。米沢さん達には何度も助けられました」
「藤島さんも結構立ち回りが上手いじゃない。やりこんでいるのかな?」
「ええ。ここ最近は勉強もしながらですが、デスマッチだけは一日一戦やるようにしていますから」
「那須君も頑張ったね。ナイスアシスト!」
「いえいえ、僕はまだ片倉さんに比べればまだまだですから」
「何を言っているの、那須君もそろそろ別のエージェントを試してみたらどうなの?」
「僕は今のエージェントのミッションを終わらせないといけないから、しばらくはこのエージェントを使おうかと思っているんだ」

 藤島さん達、試合後で盛り上がっているなぁ。
 その一方で、僕たちが試合中に向かい側に座っていた朋恵達はというと――。

「また負けた~……」
「見事に押し出されたね」
「うぅ~……、ムカつく~……」

 僕たちがGYALORANTをやっている間、ずっと黒澤先輩のPCを使ってFall Boysをやっていた。
 朋恵の口ぶりから、連敗を重ねていたようで……、お疲れ様。

「ねえ朋恵、初戦で何連敗したの?」

 僕の席から見て右斜め上に座っている米沢さんが声を掛けると、目が半分白目で口は半開きの朋恵が米沢さんの方を向いた。

「……五……」
「え? 五連敗?」
「……言いたくないわ……」

 朋恵の表情を見た感じでは五連敗どころか、それ以上負けを重ねた感じがしてならない。
 生気を失った感じというのか、何というのか……。
 すると、左隣に居た片倉さんまでもバタンキュー状態の朋恵を見に近寄った。

「わ、私はいいところまで行ったんだよ。それで交替してトモが始めたら案の定……ね」
「……言わないでよ、マナ……」
「その、ご愁傷様です、朋恵ちゃん」
「エマちゃんまでも~……」
「やれやれ、最初のステージで負けた時点で私に交代しておくべきだったな」

 ふとチア部の部員たちのやり取りを見ていると、連敗を重ねてもめげない朋恵って、ああ見えて負けず嫌いなのだろうかと思ったりもした。
 何というか、その……、心が折れなければ必ず勝つと思っているのだろうか。

 こうして、先輩達の居ない放課後の一日目は幕を閉じた。
 最初は一年生三人で何とかなるのかなと思ったけど、チア部の生徒達が来てくれるならばありがたいだろう。
 自主練ばかりじゃ大変そうだし、また相手したいな。
 片倉さんと米沢さんはGYALORANTを結構やりこんでるから、僕としては彼女達からも教わりたいし、ね。



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「おっ、今回のマップはSplit Aroundだね」
「いかにも海外の人が考える日本の街をイメージしたマップですね」
 今日のアンレートで選ばれたマップは狭い路地が多く、高層ビルなどからのスナイプがやりやすそうな感じがする。
 何度もデスマッチで練習したマップだから慣れているとはいえ、油断は禁物だ。
「まずはエージェント選びですが、お二方はどんなのを使っていますか?」
「私は韓国出身のデュエリストをメインで使っているよ」
「米沢さんは最前線で戦うのが好きなんですか」
「そうだね。チアではいっつも恵麻を支えてばっかりだから、ゲームの中だけでも前に出たいからね」
「私はトップをやっているから、ゲームの中では目立たないようにしているのでコントローラーを使っていますね」
 片倉さんと米沢さんの会話を聞いていると、二人ともよく考えてエージェントを選んでいる感じがする。
 僕はというと、初心者向けであるイギリス出身のデュエリストを使っている。自分自身で回復できるし、撃ち合いに慣れていないからね。
 今回のメンバーが誰を選んだのかというと――。
・僕:デュエリスト(イギリス出身)
・那須君:デュエリスト(ドイツ出身)
・藤島さん:センチネル(中国出身)
・片倉さん:コントローラー(出身地不明)
・米沢さん:デュエリスト(韓国出身)
 ――見事なまでに最前線で戦うキャラクターがメインの構成じゃないか。
「大丈夫かなぁ~」
 ちょっと不安な面持ちで藤島さんに話すと、「大丈夫ですよ、いつも通り落ち着いてやれば」と励ましてくれた。
「私は那須君とBメイン側に回りますから、米沢さん達はAヘブン周辺に回ってください」
「Aヘブンか、ここは私の腕の見せ所だね」
「瑞希ちゃん、良い所見せてね」
「合点承知!」
「富樫君は私についてきて、那須君のバックアップをお願いします」
「了解」
 会話していると、あっという間に購入フェーズが終わった。
 向かい側では朋恵と愛未がPCを起動して何かしているけれども、……それどころじゃないや。今は試合に集中、集中!
 ◇
 三十分後――。
「ふー、終わった~」
 試合終了と共に、米沢さん達が真っ先に声を上げた。
 結果は13対12で逆転負けとなったものの、僕たちは満足げな表情を浮かべていた。
 同じ部活ではない生徒とGYALORANTをやるのは初めての体験だったから緊張したけれども、楽しかった。
 チア部で忙しいのにゲームもやっている米沢さん達があっという間に危機的な状況を覆したお陰で、試合は最後までもつれ込んだ。
 最後は相手がスパイクを解除するのを阻止しようと奔走したが、回復が間に合わずに全滅して試合終了となった。
 負けたとはいえ、僕達は満足感で満ち溢れていた。
 いつも先輩達とやっているフルパーティーでのアンレートを初見の人たちと一緒にやれるなんて――。
「ホント、楽しかったですよ。米沢さん達には何度も助けられました」
「藤島さんも結構立ち回りが上手いじゃない。やりこんでいるのかな?」
「ええ。ここ最近は勉強もしながらですが、デスマッチだけは一日一戦やるようにしていますから」
「那須君も頑張ったね。ナイスアシスト!」
「いえいえ、僕はまだ片倉さんに比べればまだまだですから」
「何を言っているの、那須君もそろそろ別のエージェントを試してみたらどうなの?」
「僕は今のエージェントのミッションを終わらせないといけないから、しばらくはこのエージェントを使おうかと思っているんだ」
 藤島さん達、試合後で盛り上がっているなぁ。
 その一方で、僕たちが試合中に向かい側に座っていた朋恵達はというと――。
「また負けた~……」
「見事に押し出されたね」
「うぅ~……、ムカつく~……」
 僕たちがGYALORANTをやっている間、ずっと黒澤先輩のPCを使ってFall Boysをやっていた。
 朋恵の口ぶりから、連敗を重ねていたようで……、お疲れ様。
「ねえ朋恵、初戦で何連敗したの?」
 僕の席から見て右斜め上に座っている米沢さんが声を掛けると、目が半分白目で口は半開きの朋恵が米沢さんの方を向いた。
「……五……」
「え? 五連敗?」
「……言いたくないわ……」
 朋恵の表情を見た感じでは五連敗どころか、それ以上負けを重ねた感じがしてならない。
 生気を失った感じというのか、何というのか……。
 すると、左隣に居た片倉さんまでもバタンキュー状態の朋恵を見に近寄った。
「わ、私はいいところまで行ったんだよ。それで交替してトモが始めたら案の定……ね」
「……言わないでよ、マナ……」
「その、ご愁傷様です、朋恵ちゃん」
「エマちゃんまでも~……」
「やれやれ、最初のステージで負けた時点で私に交代しておくべきだったな」
 ふとチア部の部員たちのやり取りを見ていると、連敗を重ねてもめげない朋恵って、ああ見えて負けず嫌いなのだろうかと思ったりもした。
 何というか、その……、心が折れなければ必ず勝つと思っているのだろうか。
 こうして、先輩達の居ない放課後の一日目は幕を閉じた。
 最初は一年生三人で何とかなるのかなと思ったけど、チア部の生徒達が来てくれるならばありがたいだろう。
 自主練ばかりじゃ大変そうだし、また相手したいな。
 片倉さんと米沢さんはGYALORANTを結構やりこんでるから、僕としては彼女達からも教わりたいし、ね。