第53話

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 無事加茂さんとのデートを乗り切ってから三日後、今日は11月30日だ。

 今日からe-Sports愛好会の先輩達三人が修学旅行に出発した。
 桃花先輩と桜花先輩からはそれぞれ「お土産、期待してね♡」とのメッセージが僕宛に届いていた。
 先輩達のことだから、多分多くの土産物を持ってくるだろう。

 その一方で、学校に残された僕たち一年生と三年生は通常通りの授業だ。
 他の学校だとこの期間に後期中間試験が行われるが、幸いにも僕たちは今月中旬に済ませている。夏希姉の学校だと、今頃は留守している生徒たちが悪戦苦闘しているだろう。

 部活動も通常通り行われるのだが、二年生の先生が顧問を務める部活、特に運動部は先生が居ないと休みになるところがある。
 ロリ声なのに体は大人な山内先生が顧問をしているチア部も例外ではなく――。

「ヤス~! お邪魔するよ~!」
「お邪魔します」
「「こんにちはー」」

 ……何故か知らないけど、見知らぬ生徒が部屋の入り口に一人、否、二人いた。

 朋恵の隣に居る子は見た感じでは158センチはあって胸は標準サイズだ。
 それに、チアをやっているせいもあって脚はすらっとしていて体全体は引き締まっている。
 顔はお人形さんの様に整っていて、それでいて髪は修学旅行中の美礼姉にも似てサラサラで(へそ)の辺りまでありそうだ。

 もう一人は朋恵と身長がほぼ同じ160センチ台前半で胸は朋恵よりもやや小さいかほぼ同じ感じで、足元のストッキングがセクシーな感じを引き立てている。
 髪型も先ほどの女の子にも似ているけれども、顔つきはちょっと大人っぽくてセクシーなお姉さんって感じだ。

「あの、キミ達は一体誰なんだ?」

 那須君が呆気にとられると、片倉さんと米沢さんが一歩前に出た。

「あ、私は一年五組でチア部に所属しているの片倉(かたくら)恵麻(えま)です。道路を挟んで北側にあるテレビ局の近くに住んでいます。よろしくお願いしますね」
「私は一年五組の米沢(よねざわ)瑞希(みずき)。恵麻と住んでいるところは一緒かな。よろしくね」

 見た感じ、二人とも結構可愛いじゃないか。
 それと、片倉さんが話していたテレビ局は最近になって長町駅裏に引っ越してきた局と違って、小さくなった名探偵が活躍するアニメを抱えているところじゃないか。  
 二人がどうしてここに来たのか、分からないな。

「今日はどうしてここに来たんですか?」

 藤島さんが問いかけると、片倉さんがちょっと戸惑いながら口を開く。

「実はですね……、瑞希ちゃん、その辺を説明してもらえますか?」
「今日から顧問の先生が揃って修学旅行に行ったから、チア部は実質お休みなの。その辺の事情はね……」

 米沢さんが照れくさそうな表情を浮かべながら後ろを振り向くと、二人の後ろに居た愛未が僕たちに向けて手を振っていた。

「私達チア部は華やかなイメージがある反面、怪我などのトラブルに巻き込まれることもあるんだ。そこで、顧問の先生が居ない間は木曜日を除いて休みにしようってことになってね」
「そうしたら昨日の夜にね、藤島さんからマナに『ぜひ遊びに来ませんか』ってメッセージが届いたのよ。どうせ家に帰ってもやることが無いから、お邪魔しようかなぁ~とおもって。どうかな?」

 いつも騒がしい国分姉妹に付き合わされているから、今更三人~四人増えてもさして問題ないだろう。

「大丈夫ですよ」

 僕がそう言って那須君が首を縦に振ると、僕の左隣にの席に座ってAIM Trainerを弄っている居る藤島さんが「那須君、四人なんてムチャです。空いているパソコンが三台しかありませんよ」と心配そうに声を掛けてくる。

 最近は僕たち一年生が東側に、二年生は西側に座っていることが多く、顧問の先生が居る時はたまに椅子を隣の文芸部から借りてくることが多い。
 椅子が足りなくなることで心配そうな藤島さんだったが、朋恵が「大丈夫だよ」と答え、その後で愛未が「隣の文芸部にお邪魔して椅子をお借りするから、心配は要らないよ」と藤島さんに伝えると、藤島さんはホッとした表情を浮かべた。

「ちょっとだけ私は椅子を借りてくるよ」

 そう話して愛未が文芸部の部室に向かうと、朋恵と片倉さん、米沢さんはそれぞれ僕たちと向かい合うように座った。
 僕の正面には朋恵が居て、左右に片倉さんと米沢さんが座っている。
 朋恵は……、ゲームをやらなさそうな感じがするけど、まぁいいかな。

「それでは、まず皆さんパソコンを起動してください。さて、皆さんはGYAROLANTをやるのは初めてですか?」
「いいえ、私は少し嗜む程度で楽しんでいます」
「私も恵麻ちゃんと同じで、ちょっとだけやっているよ」
「アタシとマナはやったことが無いから、見学で良いかな」
「それでは、飯田さんと我妻さんは見学で、片倉さんと米沢さんは参加で構いませんか」
「オッケー!」

 そう返事すると、朋恵が椅子を携えて僕の後ろ側に座った。
 朋恵は僕の視線に気づくなり、ウインクして見せた。
 朋恵に見られながらゲームするのは……、ちょっと緊張するな。

 それと、先輩達のPCを見学する二人に使わせても大丈夫なのだろうか?

「藤島さん、先輩達からPC使用の許可は取ったのか?」
「先輩達からちゃんと了解は取っていますから、気にすることはありませんよ」

 良かった。それなら大丈夫だ。
 僕は胸を撫で下ろすと、ヘッドセットを装着してすぐゲームに集中できるよう体制を整えた。
 その一方で――。

「よし、いつでも行けます」
「こっちもだよ!」

 片倉さんと米沢さんも準備万端だった。むしろ決まっている。
 いつだったか忘れたけど、女性だけのVtuber兼プロゲーマー集団があると黒澤先輩から聞かされたことがあった。その時にFPSに触れている女子生徒も少なからず居るだろうと思っていた。
 しかもチア部にFPSをやっている子が居たなんて、驚いたよ。

「お二方共、Discordはやっていますか?」
「「もちろん!」」
「それぞれのユーザー名を教えていただけますか?」
「私はEmanon_0821ですね。ちょっと名前をもじりました」
「私はMiZKi_Knightだね」
「分かりました。お二方には、ダイレクトメッセージでサーバーのURLを送りました」
「ありがとう、藤島さん」
「こちらも届いたよ」

 藤島さんが二人をe-Sports愛好会のDiscordサーバーに案内したようで、VC(ボイスチャット)のチャンネルに入るなり――。

『こちらは片倉です。聞こえますか、どうぞー』
『こちらは米沢、どーぞー』

 と、ものの見事に二人の美声が容赦なく響き渡った。

 僕は二人に「良好です、どうぞ」と返すと、早々に仲間外れになった朋恵の様子を見ていた。

「遅いなぁ、マナ。椅子を借りるだけならばすぐ済むのに」

 そう話しながら、壁際にもたれかかってスマホを弄っていた。
 仲間外れになった朋恵の姿は、どことなく寂しそうに見えた。

「朋恵ちゃん、多分マナさんは黒須さんと話し込んでいるかもしれないよ」

 片倉さんがそう話すと、愛未が椅子を片手に「ごめん、ちょっとだけユウたちと話し込んでいた」と部室に現れた。
 やっぱりね、と片倉さんは呆れ半分、苦笑い半分で愛未を迎え入れた。
 今日も総合学習で一緒のグループだったから、そのことについて話していたのだろうか。それとも、黒須さんの見た目について注意していたのだろうか。

「ユウ……否、文芸部の生徒達はちょっと作業している。だから、今日はその……」
VC(ボイスチャット)、です」
「そう、ボイスチャットで盛り上がらないように注意してもらえれば大丈夫、かな?」
「わかりました、なるべく声のボリュームを下げますね」
「私も気をつけるね」
「僕も」
「私もです」

 愛未は隣の黒須さん達の様子を見に行っていたのか。それならば、静かにしよう。気遣いは大事だ。
 初稿を添付したメールが送られてきたときも、追伸に『いつも騒がしいので、静かにしてもらえない?』と書かれていたからな。ただ、その原因を作っている桃花先輩達は今は修学旅行だけど。

「それでは、これからフルパーティーでGYAROLANTのアンレートマッチを始めます。皆、準備は出来ましたか?」
「OKだよ」
「こちらも大丈夫です」
「オッケー!」
「OK」
「それでは、リーダーの私が入ります。3,2,1……ゴー!」

 藤島さんの合図とともに待機画面となり、後は相手のマッチングを待つだけとなった。
 普段とは違うメンバーでフルパーティーか……、緊張するなぁ。



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みんなのリアクション

 無事加茂さんとのデートを乗り切ってから三日後、今日は11月30日だ。
 今日からe-Sports愛好会の先輩達三人が修学旅行に出発した。
 桃花先輩と桜花先輩からはそれぞれ「お土産、期待してね♡」とのメッセージが僕宛に届いていた。
 先輩達のことだから、多分多くの土産物を持ってくるだろう。
 その一方で、学校に残された僕たち一年生と三年生は通常通りの授業だ。
 他の学校だとこの期間に後期中間試験が行われるが、幸いにも僕たちは今月中旬に済ませている。夏希姉の学校だと、今頃は留守している生徒たちが悪戦苦闘しているだろう。
 部活動も通常通り行われるのだが、二年生の先生が顧問を務める部活、特に運動部は先生が居ないと休みになるところがある。
 ロリ声なのに体は大人な山内先生が顧問をしているチア部も例外ではなく――。
「ヤス~! お邪魔するよ~!」
「お邪魔します」
「「こんにちはー」」
 ……何故か知らないけど、見知らぬ生徒が部屋の入り口に一人、否、二人いた。
 朋恵の隣に居る子は見た感じでは158センチはあって胸は標準サイズだ。
 それに、チアをやっているせいもあって脚はすらっとしていて体全体は引き締まっている。
 顔はお人形さんの様に整っていて、それでいて髪は修学旅行中の美礼姉にも似てサラサラで臍《へそ》の辺りまでありそうだ。
 もう一人は朋恵と身長がほぼ同じ160センチ台前半で胸は朋恵よりもやや小さいかほぼ同じ感じで、足元のストッキングがセクシーな感じを引き立てている。
 髪型も先ほどの女の子にも似ているけれども、顔つきはちょっと大人っぽくてセクシーなお姉さんって感じだ。
「あの、キミ達は一体誰なんだ?」
 那須君が呆気にとられると、片倉さんと米沢さんが一歩前に出た。
「あ、私は一年五組でチア部に所属しているの片倉《かたくら》恵麻《えま》です。道路を挟んで北側にあるテレビ局の近くに住んでいます。よろしくお願いしますね」
「私は一年五組の米沢《よねざわ》瑞希《みずき》。恵麻と住んでいるところは一緒かな。よろしくね」
 見た感じ、二人とも結構可愛いじゃないか。
 それと、片倉さんが話していたテレビ局は最近になって長町駅裏に引っ越してきた局と違って、小さくなった名探偵が活躍するアニメを抱えているところじゃないか。  
 二人がどうしてここに来たのか、分からないな。
「今日はどうしてここに来たんですか?」
 藤島さんが問いかけると、片倉さんがちょっと戸惑いながら口を開く。
「実はですね……、瑞希ちゃん、その辺を説明してもらえますか?」
「今日から顧問の先生が揃って修学旅行に行ったから、チア部は実質お休みなの。その辺の事情はね……」
 米沢さんが照れくさそうな表情を浮かべながら後ろを振り向くと、二人の後ろに居た愛未が僕たちに向けて手を振っていた。
「私達チア部は華やかなイメージがある反面、怪我などのトラブルに巻き込まれることもあるんだ。そこで、顧問の先生が居ない間は木曜日を除いて休みにしようってことになってね」
「そうしたら昨日の夜にね、藤島さんからマナに『ぜひ遊びに来ませんか』ってメッセージが届いたのよ。どうせ家に帰ってもやることが無いから、お邪魔しようかなぁ~とおもって。どうかな?」
 いつも騒がしい国分姉妹に付き合わされているから、今更三人~四人増えてもさして問題ないだろう。
「大丈夫ですよ」
 僕がそう言って那須君が首を縦に振ると、僕の左隣にの席に座ってAIM Trainerを弄っている居る藤島さんが「那須君、四人なんてムチャです。空いているパソコンが三台しかありませんよ」と心配そうに声を掛けてくる。
 最近は僕たち一年生が東側に、二年生は西側に座っていることが多く、顧問の先生が居る時はたまに椅子を隣の文芸部から借りてくることが多い。
 椅子が足りなくなることで心配そうな藤島さんだったが、朋恵が「大丈夫だよ」と答え、その後で愛未が「隣の文芸部にお邪魔して椅子をお借りするから、心配は要らないよ」と藤島さんに伝えると、藤島さんはホッとした表情を浮かべた。
「ちょっとだけ私は椅子を借りてくるよ」
 そう話して愛未が文芸部の部室に向かうと、朋恵と片倉さん、米沢さんはそれぞれ僕たちと向かい合うように座った。
 僕の正面には朋恵が居て、左右に片倉さんと米沢さんが座っている。
 朋恵は……、ゲームをやらなさそうな感じがするけど、まぁいいかな。
「それでは、まず皆さんパソコンを起動してください。さて、皆さんはGYAROLANTをやるのは初めてですか?」
「いいえ、私は少し嗜む程度で楽しんでいます」
「私も恵麻ちゃんと同じで、ちょっとだけやっているよ」
「アタシとマナはやったことが無いから、見学で良いかな」
「それでは、飯田さんと我妻さんは見学で、片倉さんと米沢さんは参加で構いませんか」
「オッケー!」
 そう返事すると、朋恵が椅子を携えて僕の後ろ側に座った。
 朋恵は僕の視線に気づくなり、ウインクして見せた。
 朋恵に見られながらゲームするのは……、ちょっと緊張するな。
 それと、先輩達のPCを見学する二人に使わせても大丈夫なのだろうか?
「藤島さん、先輩達からPC使用の許可は取ったのか?」
「先輩達からちゃんと了解は取っていますから、気にすることはありませんよ」
 良かった。それなら大丈夫だ。
 僕は胸を撫で下ろすと、ヘッドセットを装着してすぐゲームに集中できるよう体制を整えた。
 その一方で――。
「よし、いつでも行けます」
「こっちもだよ!」
 片倉さんと米沢さんも準備万端だった。むしろ決まっている。
 いつだったか忘れたけど、女性だけのVtuber兼プロゲーマー集団があると黒澤先輩から聞かされたことがあった。その時にFPSに触れている女子生徒も少なからず居るだろうと思っていた。
 しかもチア部にFPSをやっている子が居たなんて、驚いたよ。
「お二方共、Discordはやっていますか?」
「「もちろん!」」
「それぞれのユーザー名を教えていただけますか?」
「私はEmanon_0821ですね。ちょっと名前をもじりました」
「私はMiZKi_Knightだね」
「分かりました。お二方には、ダイレクトメッセージでサーバーのURLを送りました」
「ありがとう、藤島さん」
「こちらも届いたよ」
 藤島さんが二人をe-Sports愛好会のDiscordサーバーに案内したようで、|VC《ボイスチャット》のチャンネルに入るなり――。
『こちらは片倉です。聞こえますか、どうぞー』
『こちらは米沢、どーぞー』
 と、ものの見事に二人の美声が容赦なく響き渡った。
 僕は二人に「良好です、どうぞ」と返すと、早々に仲間外れになった朋恵の様子を見ていた。
「遅いなぁ、マナ。椅子を借りるだけならばすぐ済むのに」
 そう話しながら、壁際にもたれかかってスマホを弄っていた。
 仲間外れになった朋恵の姿は、どことなく寂しそうに見えた。
「朋恵ちゃん、多分マナさんは黒須さんと話し込んでいるかもしれないよ」
 片倉さんがそう話すと、愛未が椅子を片手に「ごめん、ちょっとだけユウたちと話し込んでいた」と部室に現れた。
 やっぱりね、と片倉さんは呆れ半分、苦笑い半分で愛未を迎え入れた。
 今日も総合学習で一緒のグループだったから、そのことについて話していたのだろうか。それとも、黒須さんの見た目について注意していたのだろうか。
「ユウ……否、文芸部の生徒達はちょっと作業している。だから、今日はその……」
「|VC《ボイスチャット》、です」
「そう、ボイスチャットで盛り上がらないように注意してもらえれば大丈夫、かな?」
「わかりました、なるべく声のボリュームを下げますね」
「私も気をつけるね」
「僕も」
「私もです」
 愛未は隣の黒須さん達の様子を見に行っていたのか。それならば、静かにしよう。気遣いは大事だ。
 初稿を添付したメールが送られてきたときも、追伸に『いつも騒がしいので、静かにしてもらえない?』と書かれていたからな。ただ、その原因を作っている桃花先輩達は今は修学旅行だけど。
「それでは、これからフルパーティーでGYAROLANTのアンレートマッチを始めます。皆、準備は出来ましたか?」
「OKだよ」
「こちらも大丈夫です」
「オッケー!」
「OK」
「それでは、リーダーの私が入ります。3,2,1……ゴー!」
 藤島さんの合図とともに待機画面となり、後は相手のマッチングを待つだけとなった。
 普段とは違うメンバーでフルパーティーか……、緊張するなぁ。