第44話

ー/ー



「朋恵、遅かったじゃない。お昼ご飯、もう出来ているわよ」

 ダイニングに向かうと、朋恵の父さんがテレビのある真向いの場所に座っていた。
 僕と愛未は朋恵の母さんに案内されて上座に座り、朋恵の父さんと母さんがその次に、そして朋恵はリビングダイニングの入り口側に座った。
 朋恵の母さんが割と朋恵にそっくりなのに対して、朋恵の父さんはどことなく若白髪で麻雀をこよなくやっているVtuberに似ているなぁ。

 二人に「はじめまして。我妻さんと同じクラスの富樫泰久です」と挨拶すると、真っ先に朋恵の母さんが「この子、トモちゃんの彼氏なの?」と尋ねてきた。

「いや、違います。ただクラスが同じだけで……」
「そうなの?」
「そうだよ、ママ」

 朋恵のお母さんが頷いて席に座ると、今度は隣に居る朋恵の父さんがちょっと身を乗り出してきた。

「冨樫君ってサッカーをやっていたのか? 娘から話は聞いたよ」
「いや、小学校の頃の話ですけどね。部活でいじめに遭って辞めちゃいました」
「そりゃあ大変だったな。いじめをする奴は心が腐っている! なぁに、俺みたいに体を鍛えれば問題ないさ!」

 そう話すと、朋恵の父さんが力こぶを作って僕に見せつけてきた。
 朋恵の父さんは見た感じでは僕の父さんと同じ年代だが、見た目以上にパワフルな印象だった。下手したら、とあるスリーピースロックバンドの曲を聞きながら体を鍛えているのかもしれない。

「時々遊びに来てお昼をご馳走になっている身で申し訳ないのですが、こんなに作って大丈夫なんですか?」
「ええ。折角クラスの男の子が来る~って言うから、沢山用意しなきゃって、ねぇ」

 愛未が朋絵のお母さんに尋ねると、笑顔で応じてくれた。その男子は僕の事なんだけどね。
 朋恵の普段の身なりからして親御さんがどんな方なのか気になったけど、ここまでしっかりしている人であれば問題ないだろう。

 そうすると、何故ギャルファッションに身を包むようになったんだろう? そこが引っ掛かるな。
 先月の実力テスト対策の時に話していた姉の影響なのか、それとも自分でファッションを勉強して高校デビューを果たしたのか……、おそらく後者の可能性は大きいけどね。

「ほら、何ぼーっとしているの? ママが作ってくれた自慢のパスタとサンドイッチだよ」

 いかんいかん、ちょっとだけ考え込んでいた。
 僕は改めて、テーブルに並べられているお昼を見渡す。
 ほうれん草のクリームパスタとお手製のハムカツにレタスなどを散りばめたボリュームたっぷりのサンドイッチ……。見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだ。

「これって全部手作り、ですか?」
「そうなのよ。気にしないで食べてね」
「それでは、お言葉に甘えて――」
「「「「「いただきます」」」」」

 僕はクリームパスタを少しずつ皿に取り、少しずつ口の中に入れていった。
 玉ねぎやベーコン、ほうれん草とやや滑らかなソースが決め手となって、いくらでも食べられそうだ。
 それに、サンドイッチに乗っているボリューム満点のサンドイッチも美味しくてたまらない。コンビニのサンドイッチも良いけれど、やはり手作りのサンドイッチほど美味しいものはない。小学校の頃の運動会、否、四月末に開催かれたを思い出すな。
 あの時は朋恵達と声を掛けたことがあったかな……? いや、あまり覚えていないか。

「それで、富樫君……だっけ? 朋恵とは上手くやっているのかな?」

 ちょっと考え事をしていると、不意に朋恵の父さんに話しかけられた。

「え、ええ。ここ一ヶ月半は一緒に勉強していました。それに、文化の日には三人で一緒に買い物をして、昨日はチア部と僕が所属している部活の先輩達と一緒にカラオケにも行きました」

 今朝がたはまだ喉が痛かったけどね。
 最後は桜花先輩の提案でスタープ〇チナ対ザ・〇ールドかと言わんばかりのラッシュ合戦で終わったんだから。

「そうか~、朋恵と一緒に青春しているのか。感心、関心」

 朋恵の父さんがしきりに頷くと、「ちょっとパパ、変なこと言わないでよ」と朋恵が止めに入った。
 すると、朋恵の父さんも照れくさそうな表情を浮かべた。
 朋恵の父さん、結構ノリがいい人なんだな。

「富樫君」
「は、はい!」

 すると、朋恵の父さんが僕のところに立ち寄って、肩を叩いて僕の方を向いた。

「朋恵のことをよろしく頼んだよ。あの子は母さんに似て面倒見が良いし、何より気が利くからね」
「は、はい……」

 そこまで言われると、なんだか恥ずかしくなってきた。
 すると朋恵が「パ、パパったら! まだアタシ達付き合っていないんだから!」と言いながら照れくさそうな、ちょっと怒っているような表情を浮かべた。
 これはちょっと怒られるヤツじゃないのか? そうだ、話題を替えよう!

「それで、朋恵さんは(ウチ)では普段は何をしていますか?」
「朋恵? う~ん、普段はほとんど勉強したり、後は時折テレビを見たりしているなぁ。それに、アマプラで映画を見ていたりするね」
「な、なにの映画を見ているかは想像にお任せで……。父さん、余り恥ずかしいことは言わないでね」

 その後も朋恵のお父さんとお母さんとの一問一答を続けたのだが、最後の方になると朋恵が顔を真っ赤にしていたのは言うまでもなかった。ちょっと調子に乗りすぎたな。
 その一方で、時折愛未も朋恵のことを教えてくれたりもした。
 朋恵とは一緒の中学だったのに、分からないことだらけだったなぁ。

 ◇

「それでは、また月曜日にね」

 朋恵の住んでいるマンションの入り口に向かったのは、午後一時を少し過ぎたあたりだった。
 話をしながら昼食を食べたら、いつの間にかお腹がいっぱいだった。
 用意されたお茶も美味しかったし、また機会があれば行きたいな。

「朋恵、その……、今日はごめん。色々と恥ずかしいことを聞いたりして」
「ううん、良いんだよ。うちの父さん、ああ見えてちょっとアタシのことを持ち上げがちなんだから」

 確かに、話を聞く限りでは朋恵の父さんは朋恵をすごく気に入っているようだ。
 親バカなのかどうかは分からないけど、ノリの良さそうな人で良かった。

「愛未も、色々とごめんね」
「いやいや、もう慣れたから平気だよ」

 そう言いながら、愛未はすました表情を浮かべた。
 朋恵のお父さんがああいった感じだから、愛未の父さんはどうなんだろう?

「朋恵、愛未のお父さんってどんな方?」
「う~ん、ちょっと真面目な感じはするけど、うちのパパと似た感じかな?」
「私の父さんは朋恵の言う通りだけど、ちょっと面倒くさがりなんだ。母さんは活発的で、妹も母さんに似たのかな。体つきは私も妹も母さん譲りだけど」

 愛未の父さんも似ている感じがするのか……。後で機会があれば会うかもしれないな。

「じゃあ、また月曜日にね」
「「またね」」

 そうお互いに声を掛けると、僕らはそれぞれのマンションに帰っていった。

 朋恵のご両親とはじめて顔を合わせたけど、二人とも感じのいい人だった。
 お父さんが「よろしく頼んだよ」と言ってくれたけど、僕たちはまだ付き合っても居ないし、告白すらしていないんだよな。

 仮に告白して朋恵と付き合うようになったとしても、僕と朋恵とでは釣り合いが取れるのだろうか。
 学力は大丈夫だとしても、容姿は……、最近になってまたかつての様なイケている顔に戻ってきているから大丈夫だろう。

「……大丈夫だな、うん。大丈夫だ」

 僕は小さい声でそう呟くと、いつの間にかマンションの入り口に辿りついた。
 お向かいにあるだけあって、あっという間だな。後はエレベーターか階段を使って、三階にある家に戻るだけだ。



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「朋恵、遅かったじゃない。お昼ご飯、もう出来ているわよ」
 ダイニングに向かうと、朋恵の父さんがテレビのある真向いの場所に座っていた。
 僕と愛未は朋恵の母さんに案内されて上座に座り、朋恵の父さんと母さんがその次に、そして朋恵はリビングダイニングの入り口側に座った。
 朋恵の母さんが割と朋恵にそっくりなのに対して、朋恵の父さんはどことなく若白髪で麻雀をこよなくやっているVtuberに似ているなぁ。
 二人に「はじめまして。我妻さんと同じクラスの富樫泰久です」と挨拶すると、真っ先に朋恵の母さんが「この子、トモちゃんの彼氏なの?」と尋ねてきた。
「いや、違います。ただクラスが同じだけで……」
「そうなの?」
「そうだよ、ママ」
 朋恵のお母さんが頷いて席に座ると、今度は隣に居る朋恵の父さんがちょっと身を乗り出してきた。
「冨樫君ってサッカーをやっていたのか? 娘から話は聞いたよ」
「いや、小学校の頃の話ですけどね。部活でいじめに遭って辞めちゃいました」
「そりゃあ大変だったな。いじめをする奴は心が腐っている! なぁに、俺みたいに体を鍛えれば問題ないさ!」
 そう話すと、朋恵の父さんが力こぶを作って僕に見せつけてきた。
 朋恵の父さんは見た感じでは僕の父さんと同じ年代だが、見た目以上にパワフルな印象だった。下手したら、とあるスリーピースロックバンドの曲を聞きながら体を鍛えているのかもしれない。
「時々遊びに来てお昼をご馳走になっている身で申し訳ないのですが、こんなに作って大丈夫なんですか?」
「ええ。折角クラスの男の子が来る~って言うから、沢山用意しなきゃって、ねぇ」
 愛未が朋絵のお母さんに尋ねると、笑顔で応じてくれた。その男子は僕の事なんだけどね。
 朋恵の普段の身なりからして親御さんがどんな方なのか気になったけど、ここまでしっかりしている人であれば問題ないだろう。
 そうすると、何故ギャルファッションに身を包むようになったんだろう? そこが引っ掛かるな。
 先月の実力テスト対策の時に話していた姉の影響なのか、それとも自分でファッションを勉強して高校デビューを果たしたのか……、おそらく後者の可能性は大きいけどね。
「ほら、何ぼーっとしているの? ママが作ってくれた自慢のパスタとサンドイッチだよ」
 いかんいかん、ちょっとだけ考え込んでいた。
 僕は改めて、テーブルに並べられているお昼を見渡す。
 ほうれん草のクリームパスタとお手製のハムカツにレタスなどを散りばめたボリュームたっぷりのサンドイッチ……。見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだ。
「これって全部手作り、ですか?」
「そうなのよ。気にしないで食べてね」
「それでは、お言葉に甘えて――」
「「「「「いただきます」」」」」
 僕はクリームパスタを少しずつ皿に取り、少しずつ口の中に入れていった。
 玉ねぎやベーコン、ほうれん草とやや滑らかなソースが決め手となって、いくらでも食べられそうだ。
 それに、サンドイッチに乗っているボリューム満点のサンドイッチも美味しくてたまらない。コンビニのサンドイッチも良いけれど、やはり手作りのサンドイッチほど美味しいものはない。小学校の頃の運動会、否、四月末に開催かれたを思い出すな。
 あの時は朋恵達と声を掛けたことがあったかな……? いや、あまり覚えていないか。
「それで、富樫君……だっけ? 朋恵とは上手くやっているのかな?」
 ちょっと考え事をしていると、不意に朋恵の父さんに話しかけられた。
「え、ええ。ここ一ヶ月半は一緒に勉強していました。それに、文化の日には三人で一緒に買い物をして、昨日はチア部と僕が所属している部活の先輩達と一緒にカラオケにも行きました」
 今朝がたはまだ喉が痛かったけどね。
 最後は桜花先輩の提案でスタープ〇チナ対ザ・〇ールドかと言わんばかりのラッシュ合戦で終わったんだから。
「そうか~、朋恵と一緒に青春しているのか。感心、関心」
 朋恵の父さんがしきりに頷くと、「ちょっとパパ、変なこと言わないでよ」と朋恵が止めに入った。
 すると、朋恵の父さんも照れくさそうな表情を浮かべた。
 朋恵の父さん、結構ノリがいい人なんだな。
「富樫君」
「は、はい!」
 すると、朋恵の父さんが僕のところに立ち寄って、肩を叩いて僕の方を向いた。
「朋恵のことをよろしく頼んだよ。あの子は母さんに似て面倒見が良いし、何より気が利くからね」
「は、はい……」
 そこまで言われると、なんだか恥ずかしくなってきた。
 すると朋恵が「パ、パパったら! まだアタシ達付き合っていないんだから!」と言いながら照れくさそうな、ちょっと怒っているような表情を浮かべた。
 これはちょっと怒られるヤツじゃないのか? そうだ、話題を替えよう!
「それで、朋恵さんは家《ウチ》では普段は何をしていますか?」
「朋恵? う~ん、普段はほとんど勉強したり、後は時折テレビを見たりしているなぁ。それに、アマプラで映画を見ていたりするね」
「な、なにの映画を見ているかは想像にお任せで……。父さん、余り恥ずかしいことは言わないでね」
 その後も朋恵のお父さんとお母さんとの一問一答を続けたのだが、最後の方になると朋恵が顔を真っ赤にしていたのは言うまでもなかった。ちょっと調子に乗りすぎたな。
 その一方で、時折愛未も朋恵のことを教えてくれたりもした。
 朋恵とは一緒の中学だったのに、分からないことだらけだったなぁ。
 ◇
「それでは、また月曜日にね」
 朋恵の住んでいるマンションの入り口に向かったのは、午後一時を少し過ぎたあたりだった。
 話をしながら昼食を食べたら、いつの間にかお腹がいっぱいだった。
 用意されたお茶も美味しかったし、また機会があれば行きたいな。
「朋恵、その……、今日はごめん。色々と恥ずかしいことを聞いたりして」
「ううん、良いんだよ。うちの父さん、ああ見えてちょっとアタシのことを持ち上げがちなんだから」
 確かに、話を聞く限りでは朋恵の父さんは朋恵をすごく気に入っているようだ。
 親バカなのかどうかは分からないけど、ノリの良さそうな人で良かった。
「愛未も、色々とごめんね」
「いやいや、もう慣れたから平気だよ」
 そう言いながら、愛未はすました表情を浮かべた。
 朋恵のお父さんがああいった感じだから、愛未の父さんはどうなんだろう?
「朋恵、愛未のお父さんってどんな方?」
「う~ん、ちょっと真面目な感じはするけど、うちのパパと似た感じかな?」
「私の父さんは朋恵の言う通りだけど、ちょっと面倒くさがりなんだ。母さんは活発的で、妹も母さんに似たのかな。体つきは私も妹も母さん譲りだけど」
 愛未の父さんも似ている感じがするのか……。後で機会があれば会うかもしれないな。
「じゃあ、また月曜日にね」
「「またね」」
 そうお互いに声を掛けると、僕らはそれぞれのマンションに帰っていった。
 朋恵のご両親とはじめて顔を合わせたけど、二人とも感じのいい人だった。
 お父さんが「よろしく頼んだよ」と言ってくれたけど、僕たちはまだ付き合っても居ないし、告白すらしていないんだよな。
 仮に告白して朋恵と付き合うようになったとしても、僕と朋恵とでは釣り合いが取れるのだろうか。
 学力は大丈夫だとしても、容姿は……、最近になってまたかつての様なイケている顔に戻ってきているから大丈夫だろう。
「……大丈夫だな、うん。大丈夫だ」
 僕は小さい声でそう呟くと、いつの間にかマンションの入り口に辿りついた。
 お向かいにあるだけあって、あっという間だな。後はエレベーターか階段を使って、三階にある家に戻るだけだ。