第27話
ー/ー やっと休みになったのは良いが、天気はあいにくの雨模様だった。
約束した以上は行かなければ! と、朝からソワソワしていた。
今日は勉強会の日ということで、英語や現国、数学のノートや問題集とタブレットPCなどを普段あまり使っていない外出用のバッグに詰め込んだ。
肝心のテキストについてだけど、朋恵が言うには「持ってこなくても大丈夫だよ!」とのことだった。
見た感じでは勉強していなさそうな朋恵でも、しっかりと教科書を持ち歩いているんだな。
家に出る時に「女の子の家に遊びに行くよ」と話すと、母さんが驚いた顔を見せた。ここ半年は心美と一緒に出歩くことがなかったから、女の子の家に行くのは実に久しぶりだ。
降りしきる雨の中、傘を差しながら八丁目の路地裏を歩いていると、いつのまにか向かい側のマンションの玄関に通りかかる。
すると、「あ、ヤス! こっちだよ~!」と、朋恵が手を振りながら僕を出迎えてくれた。
ふと見ると、朋恵は体形を強調したオフショルダーのトップスを着ていた。ちょっとサイズが合っていない感じがする一方で、胸元だけはきっちりと強調していた。
普段は少しだけブラウスのボタンを外すなど着崩した感じの制服姿しか見たことがないけれど、これはこれで新鮮な感じがするなぁ。
「ん? どうしたの、ヤス?」
「いや、朋恵ってこういう恰好が好きなのかなって」
「ふふっ。実はこれ、こないだ買ったばかりなんだ」
朋恵は僕の視線に気づいたのだろうか、ちょっと恥ずかしそうな仕草を見せた。
「女の子の恰好はあまり分からないけど、似合っているよ」
「ありがと。そう言ってくれると助かるよ。それに……」
「?」
「ヤス、だんだんカッコ良くなっているじゃない。こないだ泣きついた時に比べるとスッキリしているよ」
実は先週の土曜日に遠出して駅前の床屋に行ってきて、店の人に頼んでバッサリと切ってもらった。
藤島さんや国分先輩達から「髪を切ってさっぱりしたほうが良いよ」とアドバイスされたからだ。
店の人に自分にぴったりな髪型はあるのか、と尋ねたところ、「ベリーショートにして、整髪料をつければ……」と答えてきたので、この際だからバッサリと短めにした。
久しぶりに整髪料をつけて整えたら、「ああ、小学校時代はこうだったな」と懐かしい感じに浸ることが出来た。
見た目を変えることで、サッカー部での暴行事件から始まった三年間のネガティブ全振りだった心は見事に晴れ渡った。
やっぱり、僕は前を向いた方がいいな。
「それで、朋恵はどこの部屋に居るの?」
「オッケー。案内するから、ついてきて」
水を払ってから折り畳み傘を仕舞うと、僕は朋恵に案内されるようにマンションのエントランスから彼女の住んでいるところまで歩いて行った。
彼女が住んでいる部屋の前に到着すると、朋恵が「ちょっと待ってね」と言って、インターホンを押して中に居るはずの両親に話しかけた。
「ママ、クラスの友達を連れてきたよ。空けてくれる?」
『友達? ちょっと待ってね』
オートロックが解除される音が聞こえるとともに、朋恵に「どうぞ」と案内されたので「お邪魔します」と一声かけてから、靴を脱いで彼女の家に上がった。
「ここって、何LDKだったかな?」
「4LDKだよ。パパとママ、それに山形で一人暮らしをしているアネキが居るからね。泉区に居た時はアパートに住んでいたけど、ちょっと手狭になって、小学校に入学した時にちょうどここに引っ越してきたんだ」
我が家は父さんと母さん、そして僕の三人家族なので、ここの南にある3LDKのマンションを選んだけれど、今思えばここのマンションも悪くなかったかもしれない。
父さんもここのマンションにしようと聞いてここも候補にしたけれど、引っ越した当初は空きがなかったらしく、今のところになった。
どっちにせよ、彼女とはどこかで会うことになるとは思っていたけどね。
「アタシの部屋は突き当りから右奥の部屋だよ。ついてきて」
僕は朋恵に言われるままに彼女の部屋に入ると、そこには黒須さんと……やたら髪が短くて、身長がほとんど変わらない活発そうな女の子が居た。
「ヤッホー、ヤス君」
「お初~」
黒須さんは朋恵と似た感じだった一方で、もう一人の女の子はダメージジーンズにこれまた大きめのトップスを着ていて、髪はちょっと短い感じがする。
見た感じは結構可愛いけど、いったい誰だ。
「黒須さん、この子?」
「隣に居る子のこと? アタシの幼馴染で、白浜みなも。勉強会することを話したら、この子も一緒に来ることになったけど……だめだったかな?」
黒須さんは首をちょっと傾げて不満そうな表情をしていたけれど、朋恵はちょっとうろたえながら「いやいや、むしろアタシ的には大歓迎だよ!」と照れながらも歓迎してくれていた。
白浜さん、女子生徒の平均身長よりもちょっと高い感じがするけど、目がクリクリしていて可愛いな。
「はじめまして、みなもだよ~。キミ達とは隣のクラスに居るよ。よろしく☆」
しかも、ピースサインを出してウィンクしている。
ノリが軽い、軽すぎるよ。
「あ、はじめまして。黒須さんと同じクラスの富樫泰久です」
こないだ黒須さんに挨拶した時の様に頭を下げると、白浜さんが僕に近寄ってくる。
「ふ~ん、ユウリが話していた子って君かなぁ?」
「そ、そうだけど……」
しかも僕に密着しているよ!
白浜さんの服からバニラの匂いがして、どうにかなりそうだ!
「どうもいじめられっ子って印象がないんだよね~。見た目も割と普通そうだし、性格も悪くなさそうだし」
「まぁ、僕は割とどこにでも居そうで、ちょっと顔が良いだけの男子だったけど、ただ……ね」
ここ近年はいじめのことを引きずり、最近に至っては心美の浮気が発覚した。
心美の件はというと、見事に時間が解決していると言っても過言ではない。
e-Sports愛好会に入ったのと、先輩達や藤島さん、それに朋恵達のお陰で、僕は何とかうまく立ち回れている。それに、朋恵とよく話すようになってギャルに対する抵抗感は薄れた感じ……、かな?
それにしても、女の子が三人集まればここまで騒がしくなるのかな。
女の子と一緒になったのって、小学校四年生以来だよ。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
やっと休みになったのは良いが、天気はあいにくの雨模様だった。
約束した以上は行かなければ! と、朝からソワソワしていた。
今日は勉強会の日ということで、英語や現国、数学のノートや問題集とタブレットPCなどを普段あまり使っていない外出用のバッグに詰め込んだ。
肝心のテキストについてだけど、朋恵が言うには「持ってこなくても大丈夫だよ!」とのことだった。
見た感じでは勉強していなさそうな朋恵でも、しっかりと教科書を持ち歩いているんだな。
家に出る時に「女の子の家に遊びに行くよ」と話すと、母さんが驚いた顔を見せた。ここ半年は心美と一緒に出歩くことがなかったから、女の子の家に行くのは実に久しぶりだ。
降りしきる雨の中、傘を差しながら八丁目の路地裏を歩いていると、いつのまにか向かい側のマンションの玄関に通りかかる。
すると、「あ、ヤス! こっちだよ~!」と、朋恵が手を振りながら僕を出迎えてくれた。
ふと見ると、朋恵は体形を強調したオフショルダーのトップスを着ていた。ちょっとサイズが合っていない感じがする一方で、胸元だけはきっちりと強調していた。
普段は少しだけブラウスのボタンを外すなど着崩した感じの制服姿しか見たことがないけれど、これはこれで新鮮な感じがするなぁ。
「ん? どうしたの、ヤス?」
「いや、朋恵ってこういう恰好が好きなのかなって」
「ふふっ。実はこれ、こないだ買ったばかりなんだ」
朋恵は僕の視線に気づいたのだろうか、ちょっと恥ずかしそうな仕草を見せた。
「女の子の恰好はあまり分からないけど、似合っているよ」
「ありがと。そう言ってくれると助かるよ。それに……」
「?」
「ヤス、だんだんカッコ良くなっているじゃない。こないだ泣きついた時に比べるとスッキリしているよ」
実は先週の土曜日に遠出して駅前の床屋に行ってきて、店の人に頼んでバッサリと切ってもらった。
藤島さんや国分先輩達から「髪を切ってさっぱりしたほうが良いよ」とアドバイスされたからだ。
店の人に自分にぴったりな髪型はあるのか、と尋ねたところ、「ベリーショートにして、整髪料をつければ……」と答えてきたので、この際だからバッサリと短めにした。
久しぶりに整髪料をつけて整えたら、「ああ、小学校時代はこうだったな」と懐かしい感じに浸ることが出来た。
見た目を変えることで、サッカー部での暴行事件から始まった三年間のネガティブ全振りだった心は見事に晴れ渡った。
やっぱり、僕は前を向いた方がいいな。
「それで、朋恵はどこの部屋に居るの?」
「オッケー。案内するから、ついてきて」
水を払ってから折り畳み傘を仕舞うと、僕は朋恵に案内されるようにマンションのエントランスから彼女の住んでいるところまで歩いて行った。
彼女が住んでいる部屋の前に到着すると、朋恵が「ちょっと待ってね」と言って、インターホンを押して中に居るはずの両親に話しかけた。
「ママ、クラスの友達を連れてきたよ。空けてくれる?」
『友達? ちょっと待ってね』
オートロックが解除される音が聞こえるとともに、朋恵に「どうぞ」と案内されたので「お邪魔します」と一声かけてから、靴を脱いで彼女の家に上がった。
「ここって、何LDKだったかな?」
「4LDKだよ。パパとママ、それに山形で一人暮らしをしているアネキが居るからね。泉区に居た時はアパートに住んでいたけど、ちょっと手狭になって、小学校に入学した時にちょうどここに引っ越してきたんだ」
我が家は父さんと母さん、そして僕の三人家族なので、ここの南にある3LDKのマンションを選んだけれど、今思えばここのマンションも悪くなかったかもしれない。
父さんもここのマンションにしようと聞いてここも候補にしたけれど、引っ越した当初は空きがなかったらしく、今のところになった。
どっちにせよ、彼女とはどこかで会うことになるとは思っていたけどね。
「アタシの部屋は突き当りから右奥の部屋だよ。ついてきて」
僕は朋恵に言われるままに彼女の部屋に入ると、そこには黒須さんと……やたら髪が短くて、身長がほとんど変わらない活発そうな女の子が居た。
「ヤッホー、ヤス君」
「お初~」
黒須さんは朋恵と似た感じだった一方で、もう一人の女の子はダメージジーンズにこれまた大きめのトップスを着ていて、髪はちょっと短い感じがする。
見た感じは結構可愛いけど、いったい誰だ。
「黒須さん、この子?」
「隣に居る子のこと? アタシの幼馴染で、白浜《しらはま》みなも。勉強会することを話したら、この子も一緒に来ることになったけど……だめだったかな?」
黒須さんは首をちょっと傾げて不満そうな表情をしていたけれど、朋恵はちょっとうろたえながら「いやいや、むしろアタシ的には大歓迎だよ!」と照れながらも歓迎してくれていた。
白浜さん、女子生徒の平均身長よりもちょっと高い感じがするけど、目がクリクリしていて可愛いな。
「はじめまして、みなもだよ~。キミ達とは隣のクラスに居るよ。よろしく☆」
しかも、ピースサインを出してウィンクしている。
ノリが軽い、軽すぎるよ。
「あ、はじめまして。黒須さんと同じクラスの富樫泰久です」
こないだ黒須さんに挨拶した時の様に頭を下げると、白浜さんが僕に近寄ってくる。
「ふ~ん、ユウリが話していた子って君かなぁ?」
「そ、そうだけど……」
しかも僕に密着しているよ!
白浜さんの服からバニラの匂いがして、どうにかなりそうだ!
「どうもいじめられっ子って印象がないんだよね~。見た目も割と普通そうだし、性格も悪くなさそうだし」
「まぁ、僕は割とどこにでも居そうで、ちょっと顔が良いだけの男子だったけど、ただ……ね」
ここ近年はいじめのことを引きずり、最近に至っては心美の浮気が発覚した。
心美の件はというと、見事に時間が解決していると言っても過言ではない。
e-Sports愛好会に入ったのと、先輩達や藤島さん、それに朋恵達のお陰で、僕は何とかうまく立ち回れている。それに、朋恵とよく話すようになってギャルに対する抵抗感は薄れた感じ……、かな?
それにしても、女の子が三人集まればここまで騒がしくなるのかな。
女の子と一緒になったのって、小学校四年生以来だよ。