第26話

ー/ー



「美味しかったね~」
「そうだな。たまにはいいものだね」

 二人の胸の感触を味わう間もなくモンブランを食べ終わると、僕ら三人は幸せな気分に浸れた。
 ここ一週間は転部手続きなどで忙しい日々を送っていたこともあってゆっくりする暇がなかったけど、甘いモノ(スイーツ)を食べるとそんな疲れも吹っ飛ぶ。

「そういえば、近いうちに色々あるだろう? 模試が来週あたりにあるし、来月には中間試験も……」
「模試かぁ~、嫌だなぁ~」
「それに、時折小テストが出されることもあるんだよなぁ」

 と思ったら、いつの間にか僕らの話題は高校生の悩みである定期試験に模試の話になった。
 うちの学校は部活が活発でありながら県下でも有名な進学校で、小テストや課題も割と多く出されるのだ。
 勉強をこなさなければならないのは分かるけど、時間がいくらあっても足りない!

「ここ最近はゲーム実況を少しずつ見ているけど、ついつい見てしまうと時間ばかりが過ぎるのがね……。勉強したいけど」
「ヤス、ゲーム実況なんて見ているのか?」
「うん。部活でFPSをやっているから、参考になるかなって」
「アタシも~。メイク動画を見たいけど、時間が無くて」
「朋恵、もう少し勉強に時間を割いたらどうだ?」
「え~、嫌だ~」
「それと、ヤスもあまり動画を見すぎるのも良くないぞ」
「うん、分かってはいるけど……」

 愛未の説教はごもっともだ。
 ここ一週間は勉強する時間よりも、ゲーム実況やゲームを遊ぶ時間が増えている。
 このままだと時々実施される小テストや模試、定期試験の結果に跳ね返ってしまいそうだ。
 成績優秀者で、なおかつ風紀委員をやっている愛未の言葉が重い。というか、重すぎる。胸を触らせた時とのギャップが凄すぎるよ。

 すると朋恵が何か思いついたらしく、急に立ち上がった。

「そうだ! 明後日はどうせ部活がないでしょ? 皆で一緒に勉強会しない?」
「いいね、それ」
「勉強会か……、私はちょっと厳しいかな」

 朋恵が勉強会をやろうと言い出したけれど、どうも愛未は乗り気じゃない。
 成績優秀な愛未なら「私も参加する」と答えるはずなのに、どうしたのだろう。

「どうしたの、愛未?」
「いや、実を言うと妹のことがちょっとだけ気になってね。来年私と一緒の学校を受けるらしくて、必死になって勉強していてね」
「妹さん?」
「うん。一つ年下の香澄って子が居てね、私よりもダンスが上手いんだ。何せブレイクダンスの達人だからね」

 ふと去年のローカルテレビニュースで、うちの中学校でブレイクダンスをやっている女の子を特集していたのを思い出した。
 白い帽子にジャケット、黒のシャツにスカートで格好良く踊っていた姿がやけに印象的だった。
 彼女の様に取り柄がある子だと、うちの学校よりも春と秋に中庭でお祭りが繰り広げられる緑町を選ぶのに、部活動が活発なうちの学校に入ろうなんて思うのは意外だな。

「何故僕たちの高校に? 緑町でも良いんじゃないか」
「いやね、香澄が……うちの妹がね、『どうしても姉さんと一緒の学校に行きたい!』っていつも言うんだ。私は『勉強が大変だぞ』と説得しているけど、あの子の決意は変わらなくてね。それだから私が勉強を見ているんだ」
「面倒見が良いんだね~、マナは」
「何だよ、急に。褒めても何にも出ないぞ」

 朋恵の話している通り、愛未は見た目以上に優しくて面倒見が良いな。
 顔だけでなく、心までもちょっとイケメンが入っているのだろうか。

「じゃあ、マナの代わりにユウを呼んでみようかな」
「ユウか。アイツなら私よりも頼りになりそうだな」

 侑里と聞いて、こないだインタビューした原稿が書き終わったのか、それだけが気になった。
 それに普段どういう風に勉強しているのか、もうちょっと知りたい。
 ただ、彼女はラノベオタクなんだよなぁ。それを差し引いても気になる。

「愛未、僕も行ってもいい?」
「構わないよ。私は妹のことがあるから、是非とも行ってくれ」

 普段はあまり表情が変わらない愛未が、ちょっとだけ笑顔を見せてくれた。
 一緒に勉強できないのは残念だなぁ。

「とりあえず、明後日の午前十時にアタシが住んでいるマンションの前に来てもらえる?」
「明後日の午前十時、……と。スケジュールに入れておいたよ」
「ヤスのマンションからは歩いてすぐだと思うけど、寝坊はしないでね」
「分かったよ」

 その後で僕たちはいつもと違う道を通って、お互いの帰路についた。

 明後日は朋恵と勉強会になったわけだけど、黒須さんと朋恵がどのように勉強しているのかが気になるところだ。
 黒須さん、いったいどういう勉強すれば一位を取るんだろうか、分からないんだよなぁ。



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「美味しかったね~」
「そうだな。たまにはいいものだね」
 二人の胸の感触を味わう間もなくモンブランを食べ終わると、僕ら三人は幸せな気分に浸れた。
 ここ一週間は転部手続きなどで忙しい日々を送っていたこともあってゆっくりする暇がなかったけど、|甘いモノ《スイーツ》を食べるとそんな疲れも吹っ飛ぶ。
「そういえば、近いうちに色々あるだろう? 模試が来週あたりにあるし、来月には中間試験も……」
「模試かぁ~、嫌だなぁ~」
「それに、時折小テストが出されることもあるんだよなぁ」
 と思ったら、いつの間にか僕らの話題は高校生の悩みである定期試験に模試の話になった。
 うちの学校は部活が活発でありながら県下でも有名な進学校で、小テストや課題も割と多く出されるのだ。
 勉強をこなさなければならないのは分かるけど、時間がいくらあっても足りない!
「ここ最近はゲーム実況を少しずつ見ているけど、ついつい見てしまうと時間ばかりが過ぎるのがね……。勉強したいけど」
「ヤス、ゲーム実況なんて見ているのか?」
「うん。部活でFPSをやっているから、参考になるかなって」
「アタシも~。メイク動画を見たいけど、時間が無くて」
「朋恵、もう少し勉強に時間を割いたらどうだ?」
「え~、嫌だ~」
「それと、ヤスもあまり動画を見すぎるのも良くないぞ」
「うん、分かってはいるけど……」
 愛未の説教はごもっともだ。
 ここ一週間は勉強する時間よりも、ゲーム実況やゲームを遊ぶ時間が増えている。
 このままだと時々実施される小テストや模試、定期試験の結果に跳ね返ってしまいそうだ。
 成績優秀者で、なおかつ風紀委員をやっている愛未の言葉が重い。というか、重すぎる。胸を触らせた時とのギャップが凄すぎるよ。
 すると朋恵が何か思いついたらしく、急に立ち上がった。
「そうだ! 明後日はどうせ部活がないでしょ? 皆で一緒に勉強会しない?」
「いいね、それ」
「勉強会か……、私はちょっと厳しいかな」
 朋恵が勉強会をやろうと言い出したけれど、どうも愛未は乗り気じゃない。
 成績優秀な愛未なら「私も参加する」と答えるはずなのに、どうしたのだろう。
「どうしたの、愛未?」
「いや、実を言うと妹のことがちょっとだけ気になってね。来年私と一緒の学校を受けるらしくて、必死になって勉強していてね」
「妹さん?」
「うん。一つ年下の香澄って子が居てね、私よりもダンスが上手いんだ。何せブレイクダンスの達人だからね」
 ふと去年のローカルテレビニュースで、うちの中学校でブレイクダンスをやっている女の子を特集していたのを思い出した。
 白い帽子にジャケット、黒のシャツにスカートで格好良く踊っていた姿がやけに印象的だった。
 彼女の様に取り柄がある子だと、うちの学校よりも春と秋に中庭でお祭りが繰り広げられる緑町を選ぶのに、部活動が活発なうちの学校に入ろうなんて思うのは意外だな。
「何故僕たちの高校に? 緑町でも良いんじゃないか」
「いやね、香澄が……うちの妹がね、『どうしても姉さんと一緒の学校に行きたい!』っていつも言うんだ。私は『勉強が大変だぞ』と説得しているけど、あの子の決意は変わらなくてね。それだから私が勉強を見ているんだ」
「面倒見が良いんだね~、マナは」
「何だよ、急に。褒めても何にも出ないぞ」
 朋恵の話している通り、愛未は見た目以上に優しくて面倒見が良いな。
 顔だけでなく、心までもちょっとイケメンが入っているのだろうか。
「じゃあ、マナの代わりにユウを呼んでみようかな」
「ユウか。アイツなら私よりも頼りになりそうだな」
 侑里と聞いて、こないだインタビューした原稿が書き終わったのか、それだけが気になった。
 それに普段どういう風に勉強しているのか、もうちょっと知りたい。
 ただ、彼女はラノベオタクなんだよなぁ。それを差し引いても気になる。
「愛未、僕も行ってもいい?」
「構わないよ。私は妹のことがあるから、是非とも行ってくれ」
 普段はあまり表情が変わらない愛未が、ちょっとだけ笑顔を見せてくれた。
 一緒に勉強できないのは残念だなぁ。
「とりあえず、明後日の午前十時にアタシが住んでいるマンションの前に来てもらえる?」
「明後日の午前十時、……と。スケジュールに入れておいたよ」
「ヤスのマンションからは歩いてすぐだと思うけど、寝坊はしないでね」
「分かったよ」
 その後で僕たちはいつもと違う道を通って、お互いの帰路についた。
 明後日は朋恵と勉強会になったわけだけど、黒須さんと朋恵がどのように勉強しているのかが気になるところだ。
 黒須さん、いったいどういう勉強すれば一位を取るんだろうか、分からないんだよなぁ。