第23話

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「うん、これでPCとモニター、キーボードとマウスの接続は完了ね。後はPCを起動して……。桜花、5号機は大丈夫?」
「オッケー。OSの初期セットアップが間もなく……、うん、無事終わったよ! 桃花、6号機は?」
「6号機は初期セットアップ中だよ。明日は必要なソフトなどのインストールなどで一日かかりそうだね」

 国分姉妹がパソコンのセットアップをしている間、僕らはというと……。

「富樫、付き合っている女の子がいたんだな」
「まぁ、お恥ずかしながら二週間前に振られましたけどね」

 黒澤先輩と世間話をしていた。
 最初に会った時は警戒していたんだけど、案外話しやすい人で良かった。
 見た目がちゃらちゃらしていて、心美を奪った奴と同じタイプだったらどうしようかと思っていたけど、話せば話すほど僕と似た感じがした。
 なんというか、「陽キャのように見えて実は陰キャ」なんだろうな。
 もしくは「陰キャに優しい陽キャ」が適切なのかな?

「ふーん、で、どこの生徒だったんだ?」
「甲子園の常連校に通っているんですよ。しかもチア部に入っています。彼女から贈られてきた写真、見てみますか?」
「おう、いいとも」

 僕はスマホを操作して、先輩に心美がチア衣装に身を包んだ写真を見せた。
 黒澤先輩、食い入るように見ているな。

「可愛い奴じゃないか。なんでまた振られたんだ?」

 先輩からスマホを受け取ると、「久しぶりにデートしようとしたらイケメンのチャラ男と一緒に歩いていたんですよ」と、ちょっと寂しそうに語った。

「そのイケメンのチャラ男が僕に対して難癖付けたんですよ。まぁ、二週間経った今となっては常に傷心し続けたためだって納得しましたけどね」
「違いないや。そういやお前、先々週の金曜日にここに来たときはしょぼくれた顔していたってサクラから聞いたぜ」
「え? そんな顔していましたっけ?」
「ああ、してたさ」

 確かに、あの時はずっと悲しげな顔をしていたな。
 今朝顔を洗うついでに鏡を見たら、やっと前を向いて歩けるようなイケメンの顔になってきていた。
 ここ一週間で色々と動いた上に、髪を短くしたのが功を奏したんだな、うん。

「それと、山形でいじめられていた……って話は知っていますか?」
「ああ、知っているさ。サクラ達から聞いたぜ。ホント、頼りにならねぇ連中ばかりで大変だったな、お前」
「そう言ってもらえるとありがたいですよ。それで仙台(こっち)に来たんですから」
「で、そこで彼女と出会ったってわけか」
「そうです。僕を受け入れた彼女ですが、別々の学校に通うようになって一気に疎遠になり、その結果は……、最初話したとおりです。まぁ、彼女に嫌われたのはいじめで傷心していたのを引きずったのと、アイツがチャラ男に目移りしたってことで」
「大変だったな。ただ、過去を引きずるのは良くないぜ。大切なのは今、そしてこれからなんだから」

 そう言いながら、黒澤先輩は僕の肩を叩いた。
 ああ見えて優しいんだな。

 これで僕がクズ野郎だったら復讐の一つや二つをしてやることが出来るけれども、僕にはそこまで出来る技量などない。
 置かれたところこそが今の居場所だと人は良く言うけれど、僕にとってはここが自分自身の置かれた場所なんだろうな。

「ヤス君、パソコンのセットアップをお願い!」

 っと、いけない、いけない。桜花先輩からお呼びがかかった。

 僕は椅子に座ると、デスクトップパソコンに入っているアプリを確認した。
 定番の各種デジタルストアはともかくとして、配信ソフトも入っている。ゲームはまだ明日から入れる感じになっているけれども、その前にユーザーIDを入れておかないと。
 今までは二日に一片しか活動できず、金曜日は交代しながらエイムの練習をしていたけど、これで心置きなく練習できる環境が整うことになりそうだ。

「なになに、まずはFall Boysをインストールしておいて、PORTLIGHTとミサイルリーグ、それにGYALORANT……ですか」
「そうだね。競技で使うゲームは一通り入れておくことになるかもね」
「それと、Fall Boysはどうやって手に入れたのですか?」
「那須君は別として、部の費用を使って購入したの。申請は通してあるから、問題ないよ」
「他の部員もですか?」
「もちろんだよ」

 調べてみたら、Fall Boysって二千円ちょっと掛かるんだな。それを部の経費で落とすなんて、良い環境だな。

 物思いに(ふけ)っている間も、次から次へとゲームをインストールしていく。
 最初はここの学校の回線でゲームをダウンロードして大丈夫なのか? と思ったけれども、学校の回線を利用しているならば問題はない……よね。
 先生達の仕事の邪魔にならないかどうかが気がかりだけど。

「こちらはFall Boysを入れましたよ、桜花先輩」
「ヒロ君、早いじゃん! お疲れ~! 次はPORTLIGHTだよ」

 桜花先輩が付き添っている那須君は、Fall Boysのインストール作業が無事終わったようだ。
 那須君の顔には安心感が漂っているけれど、競技用のゲームをまだ入れなければならないのは大変だよな……。



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みんなのリアクション

「うん、これでPCとモニター、キーボードとマウスの接続は完了ね。後はPCを起動して……。桜花、5号機は大丈夫?」
「オッケー。OSの初期セットアップが間もなく……、うん、無事終わったよ! 桃花、6号機は?」
「6号機は初期セットアップ中だよ。明日は必要なソフトなどのインストールなどで一日かかりそうだね」
 国分姉妹がパソコンのセットアップをしている間、僕らはというと……。
「富樫、付き合っている女の子がいたんだな」
「まぁ、お恥ずかしながら二週間前に振られましたけどね」
 黒澤先輩と世間話をしていた。
 最初に会った時は警戒していたんだけど、案外話しやすい人で良かった。
 見た目がちゃらちゃらしていて、心美を奪った奴と同じタイプだったらどうしようかと思っていたけど、話せば話すほど僕と似た感じがした。
 なんというか、「陽キャのように見えて実は陰キャ」なんだろうな。
 もしくは「陰キャに優しい陽キャ」が適切なのかな?
「ふーん、で、どこの生徒だったんだ?」
「甲子園の常連校に通っているんですよ。しかもチア部に入っています。彼女から贈られてきた写真、見てみますか?」
「おう、いいとも」
 僕はスマホを操作して、先輩に心美がチア衣装に身を包んだ写真を見せた。
 黒澤先輩、食い入るように見ているな。
「可愛い奴じゃないか。なんでまた振られたんだ?」
 先輩からスマホを受け取ると、「久しぶりにデートしようとしたらイケメンのチャラ男と一緒に歩いていたんですよ」と、ちょっと寂しそうに語った。
「そのイケメンのチャラ男が僕に対して難癖付けたんですよ。まぁ、二週間経った今となっては常に傷心し続けたためだって納得しましたけどね」
「違いないや。そういやお前、先々週の金曜日にここに来たときはしょぼくれた顔していたってサクラから聞いたぜ」
「え? そんな顔していましたっけ?」
「ああ、してたさ」
 確かに、あの時はずっと悲しげな顔をしていたな。
 今朝顔を洗うついでに鏡を見たら、やっと前を向いて歩けるようなイケメンの顔になってきていた。
 ここ一週間で色々と動いた上に、髪を短くしたのが功を奏したんだな、うん。
「それと、山形でいじめられていた……って話は知っていますか?」
「ああ、知っているさ。サクラ達から聞いたぜ。ホント、頼りにならねぇ連中ばかりで大変だったな、お前」
「そう言ってもらえるとありがたいですよ。それで仙台《こっち》に来たんですから」
「で、そこで彼女と出会ったってわけか」
「そうです。僕を受け入れた彼女ですが、別々の学校に通うようになって一気に疎遠になり、その結果は……、最初話したとおりです。まぁ、彼女に嫌われたのはいじめで傷心していたのを引きずったのと、アイツがチャラ男に目移りしたってことで」
「大変だったな。ただ、過去を引きずるのは良くないぜ。大切なのは今、そしてこれからなんだから」
 そう言いながら、黒澤先輩は僕の肩を叩いた。
 ああ見えて優しいんだな。
 これで僕がクズ野郎だったら復讐の一つや二つをしてやることが出来るけれども、僕にはそこまで出来る技量などない。
 置かれたところこそが今の居場所だと人は良く言うけれど、僕にとってはここが自分自身の置かれた場所なんだろうな。
「ヤス君、パソコンのセットアップをお願い!」
 っと、いけない、いけない。桜花先輩からお呼びがかかった。
 僕は椅子に座ると、デスクトップパソコンに入っているアプリを確認した。
 定番の各種デジタルストアはともかくとして、配信ソフトも入っている。ゲームはまだ明日から入れる感じになっているけれども、その前にユーザーIDを入れておかないと。
 今までは二日に一片しか活動できず、金曜日は交代しながらエイムの練習をしていたけど、これで心置きなく練習できる環境が整うことになりそうだ。
「なになに、まずはFall Boysをインストールしておいて、PORTLIGHTとミサイルリーグ、それにGYALORANT……ですか」
「そうだね。競技で使うゲームは一通り入れておくことになるかもね」
「それと、Fall Boysはどうやって手に入れたのですか?」
「那須君は別として、部の費用を使って購入したの。申請は通してあるから、問題ないよ」
「他の部員もですか?」
「もちろんだよ」
 調べてみたら、Fall Boysって二千円ちょっと掛かるんだな。それを部の経費で落とすなんて、良い環境だな。
 物思いに耽《ふけ》っている間も、次から次へとゲームをインストールしていく。
 最初はここの学校の回線でゲームをダウンロードして大丈夫なのか? と思ったけれども、学校の回線を利用しているならば問題はない……よね。
 先生達の仕事の邪魔にならないかどうかが気がかりだけど。
「こちらはFall Boysを入れましたよ、桜花先輩」
「ヒロ君、早いじゃん! お疲れ~! 次はPORTLIGHTだよ」
 桜花先輩が付き添っている那須君は、Fall Boysのインストール作業が無事終わったようだ。
 那須君の顔には安心感が漂っているけれど、競技用のゲームをまだ入れなければならないのは大変だよな……。