第21話

ー/ー



『お前、どうせ女に甘えて愛好会に入っただろ?』

 ん? 一体お前は誰だ?

 ……そうだ、見覚えがある。
 心美を奪ったあの茶髪で髪の長いチャラ男だ!
 テメェ、良くも俺の彼女を奪いやがって……。

『うるせぇ。俺に指図する気か』
『指図するも何も、俺はお前のありのままを言っているんだぜ? 甘ちゃんよぉ』

 うるさいな……。
 幸い、今の俺には武器(ピストル)がある。
 狙いはあいつの眉間だ。
 こいつの頭を撃ち抜けば……。

『おい、何をする気だよ? 落ち着けよ? 話せば分かるって!』
『うるせぇんだよ!! 消え失せろ!!』

 ズキューン! という音と共に、チャラ男の眉間には9ミリ弾が撃ち込まれる。

『なにす……』

 男は何も言わずに眉間から血を吹き出して、吹っ飛びながら――

 ☆

 ピピピ、ピピピ、ピピピ……

 目覚まし時計のアラームで目が覚めた。
 
 僕は体を起こして、枕元にあった目覚まし時計を止めた。
 時計は6時ちょうど、いつも起きる時刻だ。

「……なんだ、夢か」

 今日の夢は心美を奪った奴を手にした拳銃で撃ちぬく夢だった。
 どうしてアイツなのだろうか。まぁ、今となっては過ぎたことだけど。

 思えば、先々週の金曜日にe-Sports愛好会に入ると決めてからは怒涛の一週間だったなぁ。
 月曜日には映画愛好会の会長に退会することを話してからe-Sports愛好会への入会届を提出し、それからは各種IDの取得と自宅のPCに練習するゲームをインストールして……。
 そのお陰で、心美に対することやいじめに遭って辛い思いをしたことなどを考える余裕は全く無かった。ホント、人間って不思議だな。

 親からは「急にどうしたんだ」と言われたけど、新たに別の部活に入ったことを話したら妙に納得してくれた。
 最初は反対するだろうと思ったけど、やっとサッカーに代わって夢中になれるものが見つかって安心したのだろう。

 映画愛好会の会長も「向こうでは頑張れよ」と餞別の言葉をくれた。
 映画の撮影にもロクに参加していなかったダメ会員だったけど、先輩の言葉は温かかった。

 うちの学校は卒業生の約半数が国公立大学に進学する進学校でありながら、女子生徒だけでなく男子生徒までも優しい。
 転入先の中学校で頑張って勉強をした甲斐があったよ。

 先々週、否、ここ三年間の鬱々真っ盛りな状況から、今では絶好調の兆しを見せている。
 心美でさえも癒えなかった心の傷は回復傾向にある。

 もし未練があったとしても、断ち切るまでだ。
 今日も一日頑張ろう!

 ◇

 放課後になると、僕はまたいつものようにe-Sports愛好会の部室に入ろうとして、ドアをノックした。
 入部を決めた直後は手続きなどで部室に行けない日があったし、今日は大丈夫だろう。

「は~い」

 この甲高い声は、桜花先輩だ。中に居るのかな?

「富樫です。入っていいですか?」
「どうぞぉ」

 中に入るのも躊躇うけど、ここで入らなかったら……って、悩む必要ないか。

「失礼します!」
「「こんにちは~」」

 すると桃花先輩と桜花先輩が両手を広げて僕を歓迎した……、のはいいけど!
 どうしてチア衣装を着ているんだ! しかも良く見かけるコスプレ用の!
 ……まぁ、嬉しいけどさ。

「先輩達、いったいどうしてこの衣装で……?」
「こないだ奏音ちゃんがチア衣装で富樫君を迎えに来たと聞いて、それでネット通販で買ったんだよ」
「桃ちゃんが青を選んだから、私は赤で……ってわけで。どう? 似合う? ポンポンも一緒に買ったんだよ。フレー、フレー!」

 桜花先輩は赤基調の目たるポンポンを見様見真似で振りながらチアダンスっぽく踊っているけど、この間見たチア部の練習で見たものとは正反対だった。
 何というか、その……ちょっとぎこちない感じ?

「あの、いったい何がありましたか? Discordに『今日凄いことがあるから』って送っていたのですが……」

 そう言うと、また二人とも息の合った動きをしてみせる。
 ……ごめんなさい、正直、たまりません、それ。

「ふっふっふ~」
「実はね~……」
「「パソコン二台、本日到着するんだよ~!」」

 マジかよ? ゲームができるパソコンって一台十五万以上するものだろ?
 それにモニターが四万円程度で、キーボードとマウス、ヘッドセットを合わせるとゆうに二十万超えるじゃないか! 
 一体どういう魔法を使ったんだよ?

「それって、どういうこと?」
「まぁ、これは私達の父さんの話だけどね……」
「私達の父さん、隣町で市議会議員をしているのは知っている?」
「う、うん」

 この間e-Sports愛好会に入ると親に話したときに、父さんが国分先輩達の父親のことを話していたな。向こうの街で市議会議員をやっていて、年齢の割に色々とやっているとか――。
 わざわざ公立の進学校に通わせるのも、やっぱり彼女達の親がこの学校の出身者だからだろうな。

「それで、父さんに富樫君が入部するって話をしたら、速攻でパソコンを手配したんだよね~。しかもモニターもセットで」
「ま、マジかよ!?」
「うん、マジ。だってうちの父さん、隣町でガソリンスタンドやコンビニを経営しているよ。それにこの学校のOBで、同窓会の会長さんだから」
「しかも今年からPTAの会長を務めているよ」

 ま、マジか……。何そのチートっぷり。
 先輩二人を敵に回さなくて良かったよ。



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『お前、どうせ女に甘えて愛好会に入っただろ?』
 ん? 一体お前は誰だ?
 ……そうだ、見覚えがある。
 心美を奪ったあの茶髪で髪の長いチャラ男だ!
 テメェ、良くも俺の彼女を奪いやがって……。
『うるせぇ。俺に指図する気か』
『指図するも何も、俺はお前のありのままを言っているんだぜ? 甘ちゃんよぉ』
 うるさいな……。
 幸い、今の俺には武器《ピストル》がある。
 狙いはあいつの眉間だ。
 こいつの頭を撃ち抜けば……。
『おい、何をする気だよ? 落ち着けよ? 話せば分かるって!』
『うるせぇんだよ!! 消え失せろ!!』
 ズキューン! という音と共に、チャラ男の眉間には9ミリ弾が撃ち込まれる。
『なにす……』
 男は何も言わずに眉間から血を吹き出して、吹っ飛びながら――
 ☆
 ピピピ、ピピピ、ピピピ……
 目覚まし時計のアラームで目が覚めた。
 僕は体を起こして、枕元にあった目覚まし時計を止めた。
 時計は6時ちょうど、いつも起きる時刻だ。
「……なんだ、夢か」
 今日の夢は心美を奪った奴を手にした拳銃で撃ちぬく夢だった。
 どうしてアイツなのだろうか。まぁ、今となっては過ぎたことだけど。
 思えば、先々週の金曜日にe-Sports愛好会に入ると決めてからは怒涛の一週間だったなぁ。
 月曜日には映画愛好会の会長に退会することを話してからe-Sports愛好会への入会届を提出し、それからは各種IDの取得と自宅のPCに練習するゲームをインストールして……。
 そのお陰で、心美に対することやいじめに遭って辛い思いをしたことなどを考える余裕は全く無かった。ホント、人間って不思議だな。
 親からは「急にどうしたんだ」と言われたけど、新たに別の部活に入ったことを話したら妙に納得してくれた。
 最初は反対するだろうと思ったけど、やっとサッカーに代わって夢中になれるものが見つかって安心したのだろう。
 映画愛好会の会長も「向こうでは頑張れよ」と餞別の言葉をくれた。
 映画の撮影にもロクに参加していなかったダメ会員だったけど、先輩の言葉は温かかった。
 うちの学校は卒業生の約半数が国公立大学に進学する進学校でありながら、女子生徒だけでなく男子生徒までも優しい。
 転入先の中学校で頑張って勉強をした甲斐があったよ。
 先々週、否、ここ三年間の鬱々真っ盛りな状況から、今では絶好調の兆しを見せている。
 心美でさえも癒えなかった心の傷は回復傾向にある。
 もし未練があったとしても、断ち切るまでだ。
 今日も一日頑張ろう!
 ◇
 放課後になると、僕はまたいつものようにe-Sports愛好会の部室に入ろうとして、ドアをノックした。
 入部を決めた直後は手続きなどで部室に行けない日があったし、今日は大丈夫だろう。
「は~い」
 この甲高い声は、桜花先輩だ。中に居るのかな?
「富樫です。入っていいですか?」
「どうぞぉ」
 中に入るのも躊躇うけど、ここで入らなかったら……って、悩む必要ないか。
「失礼します!」
「「こんにちは~」」
 すると桃花先輩と桜花先輩が両手を広げて僕を歓迎した……、のはいいけど!
 どうしてチア衣装を着ているんだ! しかも良く見かけるコスプレ用の!
 ……まぁ、嬉しいけどさ。
「先輩達、いったいどうしてこの衣装で……?」
「こないだ奏音ちゃんがチア衣装で富樫君を迎えに来たと聞いて、それでネット通販で買ったんだよ」
「桃ちゃんが青を選んだから、私は赤で……ってわけで。どう? 似合う? ポンポンも一緒に買ったんだよ。フレー、フレー!」
 桜花先輩は赤基調の目たるポンポンを見様見真似で振りながらチアダンスっぽく踊っているけど、この間見たチア部の練習で見たものとは正反対だった。
 何というか、その……ちょっとぎこちない感じ?
「あの、いったい何がありましたか? Discordに『今日凄いことがあるから』って送っていたのですが……」
 そう言うと、また二人とも息の合った動きをしてみせる。
 ……ごめんなさい、正直、たまりません、それ。
「ふっふっふ~」
「実はね~……」
「「パソコン二台、本日到着するんだよ~!」」
 マジかよ? ゲームができるパソコンって一台十五万以上するものだろ?
 それにモニターが四万円程度で、キーボードとマウス、ヘッドセットを合わせるとゆうに二十万超えるじゃないか! 
 一体どういう魔法を使ったんだよ?
「それって、どういうこと?」
「まぁ、これは私達の父さんの話だけどね……」
「私達の父さん、隣町で市議会議員をしているのは知っている?」
「う、うん」
 この間e-Sports愛好会に入ると親に話したときに、父さんが国分先輩達の父親のことを話していたな。向こうの街で市議会議員をやっていて、年齢の割に色々とやっているとか――。
 わざわざ公立の進学校に通わせるのも、やっぱり彼女達の親がこの学校の出身者だからだろうな。
「それで、父さんに富樫君が入部するって話をしたら、速攻でパソコンを手配したんだよね~。しかもモニターもセットで」
「ま、マジかよ!?」
「うん、マジ。だってうちの父さん、隣町でガソリンスタンドやコンビニを経営しているよ。それにこの学校のOBで、同窓会の会長さんだから」
「しかも今年からPTAの会長を務めているよ」
 ま、マジか……。何そのチートっぷり。
 先輩二人を敵に回さなくて良かったよ。