第16話
ー/ー「うーん……」
「富樫君、どうしたんです?」
「実は転校する前にいじめを経験しているから、出来れば部活には参加したくないなぁって思っていて……」
そう、僕には中学校の時にいじめられた時の心の傷がまだ残っている。
あの頃は、部活に行きたくないと言っても行かざるを得ない地獄のような日々が続いた。学校の先生も僕を助けてくれず、僕は一人悩んだ。自衛のために、学校が終わったらすぐ家に帰ることを選んだ。
仙台の中学校では週一回の部活動が必須だったらしく、いじめられていたことを先生に相談した結果、僕は美術部に何とか入れて貰えた。
先生によると廃部を防止するための措置だったらしいが、それでも僕にとっては居心地の良い場所だった。
高校に入ってからは映画愛好会に入っているが、時折顔を出すくらいで、あまり活動らしいことはしていない。
僕は今のままでも十分青春していると思うが、それって他の人の目からどう映るのだろうか? 多分陰キャだと思われるだろう。
僕はそれでいいのだ。いじめられた末にサッカー部を辞めたんだから。
「別に今のままでも十分なんです。勉強をしていて、時折ゲーム実況者やVtuberの配信を追いかける程度で良いんです。僕なんて、サッカーをやってもいじめられてばっかりで……」
僕みたいな人間が部活をやっても、中学校と同じようにいじめられるのがオチだ。
仙台に来てからは――チャラ男に寝取られた心美は別として――透明人間で二年間を過ごしてきたんだから、別に悔いはないさ。
「そんなことないと思いますよ。富樫君、スマホを私に貸してください」
すると、藤島さんは僕にスマホを貸すようにせがんできた。
よく見ると、この衣装だとスマホを潜めるスペースがなさそうだ。
藤島さんだと胸に挟み込む真似は出来ないから、あったとしてもスカートのところに潜ませるか、だな。
「あ、それとロックしているならあらかじめ解いてからでお願いします」
藤島さんにロックを解いてからでスマホを渡すと、慣れた手つきで操作し始める。
「藤島さん、何を……?」
「実況者を追いかけるくらいなら、ゲームをやればいいじゃないですか」
「え? それって、どういうこと?」
「実況動画を挙げているオジサンですが、いつも動画の概要欄に『動画で予習して自分でもゲームに挑戦してみよう!』と書いていますよ。富樫君もゲームをやればいいんですよ、私達と一緒に」
藤島さんが僕に見せたのは、良く知っているホラーゲームをメインに実況しているおじさんが『ザ・キラーⅢ』をプレイしている動画だった。
誰にも見られないようにターゲットを殺害するゲームで、どうやらこの作品で全ての謎が解けるようになっているらしい。
その人の動画はじっくりやりこんでいるせいもあってか、見ていて爽快感すら感じてしまう。
参ったな。ここまで外堀を埋められたら、断りようがない。
「……それじゃあ、話を聞くだけでも聞いてみますね」
「良かった。衣装の余りを把握しておいて良かったよ」
「ありがとうございます、富樫君」
愛未が胸を撫で下ろす一方で、藤島さんは僕に向かってお辞儀をした。
藤島さんって、こうして見ると案外可愛いんだな。
「じゃあ、私は顧問の先生がうるさいのでこれで失礼するよ。ヤス、後で結果を聞かせてくれ」
そう言うと、愛未は踵を返して体育館の方に去っていった。
ホント、愛未の去り際が格好良すぎる。
イケメン女子と言われるゆえんだな。
◇
「行っちゃいましたね、飯田さん」
「そう……だね」
昨日同様、放課後の教室で僕たちは二人きりになった。
二人っきりになったとしても、話すことなんて特になさそうだ。
それにしても……、藤島さんって可愛いんだな。
以前の彼女だった心美には遠く及ばないけど、活発そうではある。
「それじゃ、行きますか? 私達の活動場所に」
「え? 今から?」
「だって、もう四時過ぎていますよ? 私は着替えと鞄を取ってきますので、富樫君は先に行ってください」
藤島さんに言われた通り時計を見ると、確かに午後五時を回ったところだ。
「部室は南校舎のすぐ脇にある西校舎にあります。私達の部室は三階にあって、文芸部さんの隣になっています」
西校舎か……。あそこには軽音楽部が練習の拠点を設けていると聞いた事がある。
行く機会がなかったから、行ってみよう。
「場所は分かったから、先に行ってていいよ」
「ありがとうございます、富樫君」
藤島さんがまたペコリとお辞儀をすると、僕はその後を追うようにして西校舎へと足を運んだ。
みんなのリアクション
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「うーん……」
「富樫君、どうしたんです?」
「実は転校する前にいじめを経験しているから、出来れば部活には参加したくないなぁって思っていて……」
そう、僕には中学校の時にいじめられた時の心の傷がまだ残っている。
あの頃は、部活に行きたくないと言っても行かざるを得ない地獄のような日々が続いた。学校の先生も僕を助けてくれず、僕は一人悩んだ。自衛のために、学校が終わったらすぐ家に帰ることを選んだ。
仙台の中学校では週一回の部活動が必須だったらしく、いじめられていたことを先生に相談した結果、僕は美術部に何とか入れて貰えた。
先生によると廃部を防止するための措置だったらしいが、それでも僕にとっては居心地の良い場所だった。
高校に入ってからは映画愛好会に入っているが、時折顔を出すくらいで、あまり活動らしいことはしていない。
僕は今のままでも十分青春していると思うが、それって他の人の目からどう映るのだろうか? 多分陰キャだと思われるだろう。
僕はそれでいいのだ。いじめられた末にサッカー部を辞めたんだから。
「別に今のままでも十分なんです。勉強をしていて、時折ゲーム実況者やVtuberの配信を追いかける程度で良いんです。僕なんて、サッカーをやってもいじめられてばっかりで……」
僕みたいな人間が部活をやっても、中学校と同じようにいじめられるのがオチだ。
仙台に来てからは――チャラ男に寝取られた心美は別として――透明人間で二年間を過ごしてきたんだから、別に悔いはないさ。
「そんなことないと思いますよ。富樫君、スマホを私に貸してください」
すると、藤島さんは僕にスマホを貸すようにせがんできた。
よく見ると、この衣装だとスマホを潜めるスペースがなさそうだ。
藤島さんだと胸に挟み込む真似は出来ないから、あったとしてもスカートのところに潜ませるか、だな。
「あ、それとロックしているならあらかじめ解いてからでお願いします」
藤島さんにロックを解いてからでスマホを渡すと、慣れた手つきで操作し始める。
「藤島さん、何を……?」
「実況者を追いかけるくらいなら、ゲームをやればいいじゃないですか」
「え? それって、どういうこと?」
「実況動画を挙げているオジサンですが、いつも動画の概要欄に『動画で予習して自分でもゲームに挑戦してみよう!』と書いていますよ。富樫君もゲームをやればいいんですよ、私達と一緒に」
藤島さんが僕に見せたのは、良く知っているホラーゲームをメインに実況しているおじさんが『ザ・キラーⅢ』をプレイしている動画だった。
誰にも見られないようにターゲットを殺害するゲームで、どうやらこの作品で全ての謎が解けるようになっているらしい。
その人の動画はじっくりやりこんでいるせいもあってか、見ていて爽快感すら感じてしまう。
参ったな。ここまで外堀を埋められたら、断りようがない。
「……それじゃあ、話を聞くだけでも聞いてみますね」
「良かった。衣装の余りを把握しておいて良かったよ」
「ありがとうございます、富樫君」
愛未が胸を撫で下ろす一方で、藤島さんは僕に向かってお辞儀をした。
藤島さんって、こうして見ると案外可愛いんだな。
「じゃあ、私は顧問の先生がうるさいのでこれで失礼するよ。ヤス、後で結果を聞かせてくれ」
そう言うと、愛未は踵を返して体育館の方に去っていった。
ホント、愛未の去り際が格好良すぎる。
イケメン女子と言われるゆえんだな。
◇
「行っちゃいましたね、飯田さん」
「そう……だね」
昨日同様、放課後の教室で僕たちは二人きりになった。
二人っきりになったとしても、話すことなんて特になさそうだ。
それにしても……、藤島さんって可愛いんだな。
以前の彼女だった心美には遠く及ばないけど、活発そうではある。
「それじゃ、行きますか? 私達の活動場所に」
「え? 今から?」
「だって、もう四時過ぎていますよ? 私は着替えと鞄を取ってきますので、富樫君は先に行ってください」
藤島さんに言われた通り時計を見ると、確かに午後五時を回ったところだ。
「部室は南校舎のすぐ脇にある西校舎にあります。私達の部室は三階にあって、文芸部さんの隣になっています」
西校舎か……。あそこには軽音楽部が練習の拠点を設けていると聞いた事がある。
行く機会がなかったから、行ってみよう。
「場所は分かったから、先に行ってていいよ」
「ありがとうございます、富樫君」
藤島さんがまたペコリとお辞儀をすると、僕はその後を追うようにして西校舎へと足を運んだ。