第13話

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「富樫君、元気を出してよ。まだ人生は長いんだし、新たな出会いがあるかもしれないよ?」

 黒須さんはそう言うと、僕の肩をポンと叩いた。
 心美のことが忘れられたのかというと、そうでもない。昨日の朋恵といい、今日の黒須さんといい、どうして僕にはギャルにしか相手にしてもらえないのだろうか?

「ここ最近はずっとギャルっぽい女の子ばかりで、清楚な女の子なんて……」

 僕は独りごちると、黒須さんは髪を少し弄りながら、「ん? ひょっとして、そういった子が良かったのかな?」と不満そうに呟いた。

 まずい。気になることを言ってしまった。
 ここはフォローしておかないと!

「いえ、今のままでも十分素敵ですよ」
「ありがと。お世辞でも嬉しいよ。頑張ってイメチェンした甲斐があったな」

 適当に取り繕ったけど、黒須さんは少しだけ笑顔になってくれた。
 確か、黒須さんって以前はもうちょっと地味だったはず……。

「実を言うとね、夏休み以前は……こんな感じだったんだよ」

 黒須さんは胸ポケットから生徒手帳を取り出して僕に見せた。
 身分証明書を見ると、名前のところには確かに「黒須侑里」とある。
 ただ、髪型が今と違って若干幼く見え、髪の色も黒かった。
 肝心の目つきは変わっていなかったが、今の方が引き締まって見える。

「今に比べて少し地味ですね」
「そうだよ。夏休み前はお下げにしていたけど、みなもが……いえ、アタシの友達がね、ロングストレートにして髪を染めたほうが良いってしきりに勧めてきてね」
「なるほど」
「でも、いざやってみたら『似合う』とか『綺麗だ』とか褒めてくれるようになったの。ただ、マナには『ストレートにするのはともかく、どうして染めたのか聞かせてくれないか』って尋問されたけどね」

 確か、夏休み前に一声運動をやっていたな。
 校門前に、やけにイケメン風の女子生徒が「おはようございます」とハキハキとした声で挨拶していた記憶があった。
 その時の生徒が愛未だったとは思いもよらなかったな。
 そういえば、今日はお昼にいつもゲームをやっている子に近寄っていたけど……。

「でも、うちの学校はこう見えて割と自由じゃない? 担任の先生も『良いじゃないか? 誰だって変わりたい時期はあるし』と言ってくれたし。マナも先生にそう言われてからはそんなに注意しなくなったからね」

 黒須さんの言う通り、うちの学校は偏差値が高めだとはいえ、割と自由なところがある。

 脱色パーマの上にピアス、アクセサリー、スカートの丈の長さでアウトだったら速攻で注意される。しかし、黒須さんは髪の色以外は制服の着崩しをしておらず、スカートの丈の長さも適正範囲内に収まっている。
 朋恵は怪しいところがあったけど、それでも校則は守っている方だった……、かな?

 風紀委員はもうちょっと仕事してくれとは思うけれども、文化祭でもパトロールをしている辺り、きちんと仕事をしているのだろう。学校内でエッチな真似をしたら、さすがに黙っていないだろうけど。

「それもそうですね。ところで、もう日の入りの時刻を過ぎていますよ」

 時計を見たら、もうすでに五時半を軽く回っていた。我ながら、いじめのことなどを良く語ったなぁと思う。秋の日は釣瓶落としだな。

「ホントだ。そろそろお開きにしようか」

 僕は軽く頷くと、机を元に戻してから自分の鞄を取った。

 ◇

「ねえ」

 昇降口に向かう途中、階段の踊り場で僕は黒須さんに呼び止められた。

「何?」
「せっかくだし、LINEのアドレスを交換しない?」

 昨日の朋恵達に続いて、か。

「? それまたどうして?」
「実を言うとね、家に帰ったらインタビューの文字起こしをしなきゃいけないじゃない。それで君が話した内容と起こした文章が合っているか見てもらいたいの」

 なるほど。そういうことならば仕方ないか。

「分かりました。ここでします?」
「そうだね。QRコードを出すから、スマホを出して」
「オッケー」

 黒須さんに言われた通りにスマホを差し出すと、彼女は慣れた手つきで僕のIDを登録した。
 僕は男の友達がほとんど居ないに、女の友達ばかりが増えていくのはどういうこと何だろうか? 不思議に思いながらも、二人で宵闇に染まりつつあった昇降口に向かった。



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みんなのリアクション

「富樫君、元気を出してよ。まだ人生は長いんだし、新たな出会いがあるかもしれないよ?」
 黒須さんはそう言うと、僕の肩をポンと叩いた。
 心美のことが忘れられたのかというと、そうでもない。昨日の朋恵といい、今日の黒須さんといい、どうして僕にはギャルにしか相手にしてもらえないのだろうか?
「ここ最近はずっとギャルっぽい女の子ばかりで、清楚な女の子なんて……」
 僕は独りごちると、黒須さんは髪を少し弄りながら、「ん? ひょっとして、そういった子が良かったのかな?」と不満そうに呟いた。
 まずい。気になることを言ってしまった。
 ここはフォローしておかないと!
「いえ、今のままでも十分素敵ですよ」
「ありがと。お世辞でも嬉しいよ。頑張ってイメチェンした甲斐があったな」
 適当に取り繕ったけど、黒須さんは少しだけ笑顔になってくれた。
 確か、黒須さんって以前はもうちょっと地味だったはず……。
「実を言うとね、夏休み以前は……こんな感じだったんだよ」
 黒須さんは胸ポケットから生徒手帳を取り出して僕に見せた。
 身分証明書を見ると、名前のところには確かに「黒須侑里」とある。
 ただ、髪型が今と違って若干幼く見え、髪の色も黒かった。
 肝心の目つきは変わっていなかったが、今の方が引き締まって見える。
「今に比べて少し地味ですね」
「そうだよ。夏休み前はお下げにしていたけど、みなもが……いえ、アタシの友達がね、ロングストレートにして髪を染めたほうが良いってしきりに勧めてきてね」
「なるほど」
「でも、いざやってみたら『似合う』とか『綺麗だ』とか褒めてくれるようになったの。ただ、マナには『ストレートにするのはともかく、どうして染めたのか聞かせてくれないか』って尋問されたけどね」
 確か、夏休み前に一声運動をやっていたな。
 校門前に、やけにイケメン風の女子生徒が「おはようございます」とハキハキとした声で挨拶していた記憶があった。
 その時の生徒が愛未だったとは思いもよらなかったな。
 そういえば、今日はお昼にいつもゲームをやっている子に近寄っていたけど……。
「でも、うちの学校はこう見えて割と自由じゃない? 担任の先生も『良いじゃないか? 誰だって変わりたい時期はあるし』と言ってくれたし。マナも先生にそう言われてからはそんなに注意しなくなったからね」
 黒須さんの言う通り、うちの学校は偏差値が高めだとはいえ、割と自由なところがある。
 脱色パーマの上にピアス、アクセサリー、スカートの丈の長さでアウトだったら速攻で注意される。しかし、黒須さんは髪の色以外は制服の着崩しをしておらず、スカートの丈の長さも適正範囲内に収まっている。
 朋恵は怪しいところがあったけど、それでも校則は守っている方だった……、かな?
 風紀委員はもうちょっと仕事してくれとは思うけれども、文化祭でもパトロールをしている辺り、きちんと仕事をしているのだろう。学校内でエッチな真似をしたら、さすがに黙っていないだろうけど。
「それもそうですね。ところで、もう日の入りの時刻を過ぎていますよ」
 時計を見たら、もうすでに五時半を軽く回っていた。我ながら、いじめのことなどを良く語ったなぁと思う。秋の日は釣瓶落としだな。
「ホントだ。そろそろお開きにしようか」
 僕は軽く頷くと、机を元に戻してから自分の鞄を取った。
 ◇
「ねえ」
 昇降口に向かう途中、階段の踊り場で僕は黒須さんに呼び止められた。
「何?」
「せっかくだし、LINEのアドレスを交換しない?」
 昨日の朋恵達に続いて、か。
「? それまたどうして?」
「実を言うとね、家に帰ったらインタビューの文字起こしをしなきゃいけないじゃない。それで君が話した内容と起こした文章が合っているか見てもらいたいの」
 なるほど。そういうことならば仕方ないか。
「分かりました。ここでします?」
「そうだね。QRコードを出すから、スマホを出して」
「オッケー」
 黒須さんに言われた通りにスマホを差し出すと、彼女は慣れた手つきで僕のIDを登録した。
 僕は男の友達がほとんど居ないに、女の友達ばかりが増えていくのはどういうこと何だろうか? 不思議に思いながらも、二人で宵闇に染まりつつあった昇降口に向かった。