第8話

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 涙が乾いた後で空を見上げると、夜の闇は少しずつ深くなっていた。
 秋の日は釣瓶(つるべ)落としとはよく言ったもので、四ヶ月前と今とは大違いだ。

「これが僕のQRコードだよ」
「はい、アタシはこれで登録完了だね」
「こっちもOKだ」

 二人の胸で泣いた後、朋恵達は上着を着込み、スマホを取り出して連絡先とLINEの友だち登録をした。
 LINEの友だち登録は家族だけだったので――心美はブロックされたのでカウントしていない――、新たに二人の連絡先が追加されたことになる。

「ところで、二人とも大丈夫? こんな時間まで出歩いて」
「大丈夫だよ。アタシは行く途中で夕ご飯は少しだけ遅くなるってママに連絡したから」
「私も問題ないよ」

 そういえば、僕の住んでいるマンションに行く途中で朋恵は誰かに電話していた。
 男かと思って傍耳を立てていたら「ママ」と言っていたので、彼女の母さんに電話していたのか。

「それにしても、さっきアタシ達の胸の中で泣く前と後で言葉遣いが変わったじゃない。ヤス君、吹っ切れた感じがするね」
「確かに。敬語で話さなくなったな」
「なんかね、泣いたら少しだけ吹っ切れた感じがするので」
「うん、良い事だな」

 朋恵は話を聞きながら腕を組んで頷いていた。

 今までは清楚な女の子じゃないとダメだ! と思っていたけど、二人の胸の中で泣いたお陰で僕は吹っ切れた。
 ギャルやイケメン女性も悪くない。
 顔が良ければ、誰だっていい。

 僕の心が晴れ渡っているのが分かり、二人とも嬉しそうな顔を浮かべている。

「富樫君、私のことはマナと呼んでも構わないよ。その代わり、これから君の事はヤスって呼んでも構わないか?」
「そうだね」

 僕が相槌を打つと、朋恵が「ヤス君、これからアタシのことはトモと呼んで構わないからね」と付け足してくれた。
 チャラ男に心美を寝取られて一足早い冬がやってきた僕の心を温めてくれたのは、朋恵達だった。
 この出会いは大切にしないと、罰が当たるな。

 ◇

 彼女達が帰った後の僕は、日中ずっと死んだ魚の目をしていたのが嘘のように元気になった。
 昨日振られた心美の事がくすぶるのかと思ったが、朋恵達に泣きついたお陰で少しは楽になった。

 いつもの日課である宿題などを済ませてから風呂に入り、ベッドに潜り込むと、僕は少しだけ考え事をしていた。

 あの二人に泣きついて良かったのだろうか?
 朋恵は男子生徒が黙ってはおけないほどにスタイルが良いし、あの美貌だ。
 いじめの件で陰キャ一直線となった僕とはかけ離れた存在だ。

 もう一方の愛未は朋絵同様にスタイルが良いが、あちらはイケメンな風貌から分かる様に女子生徒の憧れの的だ。

 今の僕と彼女達とはどうだろうか? 全く釣り合いが取れない。
 今の僕にとっては、二人ともだった。
 しかし、そんな二人が大きな胸を貸してくれた。
 飛び込んだあの温もりは、今も顔に残っている。
 二人のお陰で僕は少しだけ立ち直れた。
 だけど、心のどこかでは心美のことを引きずっているのかもしれない――。

 そう考えていると、スマホから着信音が鳴り響いた。
 いったいこの時間に誰だろう――。
 スマホを手に取ると、そこには僕宛のメッセージが届いていた。

「朋恵からか……。え~と、なになに、『明日の放課後は空けておいてね。紹介したい人が居るから』、か」

 明日は六時間授業だから、放課後となるとおそらく午後三時半頃になりそうだ。
 朋恵が紹介したい人って、一体どんな人なのだろうか。
 ひょっとして朋恵と同じようなギャルなのだろうか?
 いやいや、もしくは心美に似た清楚な子か?
 答えが出るのは明日の放課後だ、明日は頑張って授業を受けよう。

「『了解、楽しみにしているよ』っと」

 僕は朋恵に返信をすると、スマホを充電器に繋いで眠りに就いた。



 その日の寝心地は、昨日とは打って変わって気持ちの良いものだった。
 二人の天使と一緒になって空を舞う、そんな夢だった――。



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 涙が乾いた後で空を見上げると、夜の闇は少しずつ深くなっていた。
 秋の日は釣瓶《つるべ》落としとはよく言ったもので、四ヶ月前と今とは大違いだ。
「これが僕のQRコードだよ」
「はい、アタシはこれで登録完了だね」
「こっちもOKだ」
 二人の胸で泣いた後、朋恵達は上着を着込み、スマホを取り出して連絡先とLINEの友だち登録をした。
 LINEの友だち登録は家族だけだったので――心美はブロックされたのでカウントしていない――、新たに二人の連絡先が追加されたことになる。
「ところで、二人とも大丈夫? こんな時間まで出歩いて」
「大丈夫だよ。アタシは行く途中で夕ご飯は少しだけ遅くなるってママに連絡したから」
「私も問題ないよ」
 そういえば、僕の住んでいるマンションに行く途中で朋恵は誰かに電話していた。
 男かと思って傍耳を立てていたら「ママ」と言っていたので、彼女の母さんに電話していたのか。
「それにしても、さっきアタシ達の胸の中で泣く前と後で言葉遣いが変わったじゃない。ヤス君、吹っ切れた感じがするね」
「確かに。敬語で話さなくなったな」
「なんかね、泣いたら少しだけ吹っ切れた感じがするので」
「うん、良い事だな」
 朋恵は話を聞きながら腕を組んで頷いていた。
 今までは清楚な女の子じゃないとダメだ! と思っていたけど、二人の胸の中で泣いたお陰で僕は吹っ切れた。
 ギャルやイケメン女性も悪くない。
 顔が良ければ、誰だっていい。
 僕の心が晴れ渡っているのが分かり、二人とも嬉しそうな顔を浮かべている。
「富樫君、私のことはマナと呼んでも構わないよ。その代わり、これから君の事はヤスって呼んでも構わないか?」
「そうだね」
 僕が相槌を打つと、朋恵が「ヤス君、これからアタシのことはトモと呼んで構わないからね」と付け足してくれた。
 チャラ男に心美を寝取られて一足早い冬がやってきた僕の心を温めてくれたのは、朋恵達だった。
 この出会いは大切にしないと、罰が当たるな。
 ◇
 彼女達が帰った後の僕は、日中ずっと死んだ魚の目をしていたのが嘘のように元気になった。
 昨日振られた心美の事がくすぶるのかと思ったが、朋恵達に泣きついたお陰で少しは楽になった。
 いつもの日課である宿題などを済ませてから風呂に入り、ベッドに潜り込むと、僕は少しだけ考え事をしていた。
 あの二人に泣きついて良かったのだろうか?
 朋恵は男子生徒が黙ってはおけないほどにスタイルが良いし、あの美貌だ。
 いじめの件で陰キャ一直線となった僕とはかけ離れた存在だ。
 もう一方の愛未は朋絵同様にスタイルが良いが、あちらはイケメンな風貌から分かる様に女子生徒の憧れの的だ。
 今の僕と彼女達とはどうだろうか? 全く釣り合いが取れない。
 今の僕にとっては、二人とも《《手が届かない存在》》だった。
 しかし、そんな二人が大きな胸を貸してくれた。
 飛び込んだあの温もりは、今も顔に残っている。
 二人のお陰で僕は少しだけ立ち直れた。
 だけど、心のどこかでは心美のことを引きずっているのかもしれない――。
 そう考えていると、スマホから着信音が鳴り響いた。
 いったいこの時間に誰だろう――。
 スマホを手に取ると、そこには僕宛のメッセージが届いていた。
「朋恵からか……。え~と、なになに、『明日の放課後は空けておいてね。紹介したい人が居るから』、か」
 明日は六時間授業だから、放課後となるとおそらく午後三時半頃になりそうだ。
 朋恵が紹介したい人って、一体どんな人なのだろうか。
 ひょっとして朋恵と同じようなギャルなのだろうか?
 いやいや、もしくは心美に似た清楚な子か?
 答えが出るのは明日の放課後だ、明日は頑張って授業を受けよう。
「『了解、楽しみにしているよ』っと」
 僕は朋恵に返信をすると、スマホを充電器に繋いで眠りに就いた。
 その日の寝心地は、昨日とは打って変わって気持ちの良いものだった。
 二人の天使と一緒になって空を舞う、そんな夢だった――。