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第13話 シニガミ・キリングフィールド

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(倒れてる先輩を守らないと……!)

 ワゴン車から降りてきた武装したヘルメットの集団が一矢とつぐみの下へにじり寄ってくる。体格から見て全員男のように見えた。

 先陣を切って一矢目がけて金属バットを振り上げたヘルメット集団の一人の胴に、一矢は鋭い前蹴りを叩き込む。

 体勢を崩したヘルメットの手首を警棒で殴り付け、バットを手放させる。

 一矢は急いで地面に転がったバットを拾い、かがんだ状態からすくい上げるようにヘルメットの顎にバットを叩きつけた。男は崩れ落ちる。

 一人目の男が倒れるとすぐさま次の男がゴルフクラブを横薙ぎに振った。

 一矢はバットでそれを打ち払うが、手応えのなさに違和感を覚えた。

(こいつら、弱い!? だが、隠してる能力があるはずだ。絶対に能力発動を見逃すな!)

 ひしゃげたゴルフクラブを捨てて殴りかかってくる第二の男。一矢はバットの先端を男のみぞおちに勢いよくねじ込む。前のめりに倒れるヘルメット男。

 すかさず三人目の男がクロスボウで一矢を狙い撃つ。放たれた矢を難なく掴み取る一矢。

 ワゴン車から降りた男は六人いた。残りの三人は後方で一矢を撃った少年を守るように陣取っている。

 奇妙なのは男たちが一人も能力らしきものを見せないことだ。だが一矢の意識に干渉してきた少年の能力を思い出す。能力の発動に予兆があるとは限らない。

(違う! もう何かの能力が発動していると考えろ!)

 倒れた二人目の男が一矢の足首を掴む。クロスボウの男が次の矢を放とうとする。

 次の瞬間。少年を護衛していた三人の男たちのうちの二人が消えた。

「何!?」

 次の瞬間。消えた二人の男が一矢の左右に現れ、中心の一矢目がけてそれぞれがバットをなぎ払う。

 一矢はジャンプで避けようとするが、足首を掴む男がそれを邪魔する。二本のバットに挟まれる一矢。だがひしゃげたのはバットの方だった。一矢が両腕で二人を押しのけると、迫りくる矢を手にしたバットで弾き飛ばした。

(ヘルメットで顔を隠しているが、体格も、攻撃の仕方も不自然なくらい似てる。瞬時に消えたり出たりするところから見て……分身ってところか)

 考え込む一矢の背後から、起き上がった男の持つナイフが一矢を狙う。

 造作もなく後ろ回し蹴りで男を吹き飛ばす一矢。異能者ではあるが、あまりにも弱い。この数か月間、怪異と戦ってきた一矢の敵ではなかった。

「おい。俺の能力がまた発動するまでは耐えてくれよ」

「うるせえ。死神って普通にやったらこんなに強いのかよ」

 少年とヘルメットの一人が話している。

 一矢にはなんとなく敵のやり口がわかってきた。少年の能力で認識を阻害し、神出鬼没の分身で足止めしつつ、少年を守る。

 だが死神相手にはあまりにもお粗末な戦法だと一矢は考える。

 一矢は頭部への銃撃で能力から解放された。半端な攻撃では認識の阻害が解除される以上、一撃で死神を殺せるような攻撃手段が必要なはずなのだ。

「二宮はなにやってんだよ。まだ中なのか?」

 どうやら決め手となるのは「二宮」という存在らしい。

「それはこいつか?」

 椿の声。

 口から血を流した大学生くらいの男を引きずりながら事件現場の家から出てくる。

 椿は男を路上に放り捨てると分身を次々と銃撃した。霧散する分身たち。

 すぐさま再度分身を展開する本体のヘルメット男。

「椿さん、気を付けて! そいつは認識をおかしくする!」

 一矢が椿に警告する。

「いいところに来たな。お前ら、同士討ちしろ」

 少年がそう言うと、椿はゆっくりと右手に持った拳銃を一矢に向ける。

 認識阻害による少年と、さらに状況をひっかき回す分身能力の男。

 そして椿には通用しなかった一ノ瀬による「相手の血液を逆流させる」能力。

 血液の逆流は死神にとって霊力操作の破壊を意味し、彼らを極端に弱体化させる。

 それには一定時間相手に触れる危険を冒す必要があったが、それを可能にしていたのが二人の攪乱だった。

「椿さん!」

 発砲音が響く。

 肩を撃たれた少年が膝をついた。

「は……?」

「幻術にかかったときの感覚に似ているな。しかし本当にこんなもので死神を殺せたのか? 二宮とやらの口ぶりだと引っかかった馬鹿がいたようだが」

 椿がジャケットの中に引っ込めていた左手を出す。

 するとその手には手のひらサイズのもう一丁の拳銃が握られていた。彼女は少年を見ることもなくジャケット越しの射撃をしたのだ。

 ヘルメット男たちの本体は仲間たちが倒れるのを見ると分身に突撃させ、自身は車に乗り込もうと走り出した。

「待てーい!」

 いつの間にか復活したつぐみが目にもとまらぬスピードで突撃し、ヘルメット男を車のボンネットにめり込ませる。男はそれっきり動かなくなった。

「終わったな。どうして死神に挑戦するなんて馬鹿をやった?」

「うるせえ……」

「まあいい。聞こえるか、異能者だ。転送しろ」

 肩を押さえた少年。車にめり込んだヘルメットの男、二宮と呼ばれた青年が光の粒子のようになって空に昇っていく。

「これは……?」

「ヴァルキリーに引き渡した。殺してもいいが弾の無駄だからな」

 目の前の光景について問う一矢に椿が答える。

「ヴァルキリーが死神の標的に指定した対象を殺すか、戦闘不能にして転送すれば、狩りの証が報酬として与えられる」

「狩りの証?」

「体内に取り込むことで狩りの対象を狩ったことになる非常食のようなものだな。私が取り込むと死神を殺したことになる。かなり不味い」

 確か椿は「実力不足の死神や、狩りの対象が強力な死神が招集に応じる」と言っていた。納得する一矢。

 その一方で未だに狩りの対象が不明な自分のことを不思議に思う。

「でもどうして、やつらは事件を起こしてまで死神をおびき寄せる必要があったんでしょうか?」

「知るか。破滅願望でもあるんじゃないのか? ここ最近の事件はそういうのばっかりだろ」

 すると二人の下へつぐみが駆け寄ってくる。車に轢かれたダメージは一時的なもののようだ。

「見てー! ぶつかった衝撃でスマホ落としたみたい! 変なこと書いてあるよ!」

 画面のひび割れたスマートフォンには、黒い画面に白い文字の簡素なページが表示されていた。

『チーム・トライアングルは脱落しました』

「おい、見てくれ。お前よく触ってるだろ」

 椿は必要最低限しか携帯電話を触らない。一矢も特段詳しいわけではないが、この件に関係があると感じてスマートフォンを受け取る。

「『TOPに戻る』……え? これって……!」

「どうした?」

 画面に表示された文字に一矢は驚いて声を漏らす。

『このゲームは現実を舞台とした“死神狩り”のゲームです』

『チームを組んで能力を活かし、死神を殺しましょう』

『最も多くポイントを得たチームには、全ての人類を超越した“神”になる権利が与えられます』

『ランキング一位 “チーム・カタストロフィ”』

『かつてないスリリングなゲームを楽しみながら、“神”を目指しましょう』

 一矢は画面の説明文を読み終えて改めて驚愕した。

 これが本当なら、先ほどの三人組は「異能者たちによる死神を殺すゲーム」に参加していたようだ。

「シニガミ・キリングフィールド」

 それがそのゲームのタイトルだった。


次のエピソードへ進む 第14話 レッツプレイ、死神ハント!


みんなのリアクション

(倒れてる先輩を守らないと……!)
 ワゴン車から降りてきた武装したヘルメットの集団が一矢とつぐみの下へにじり寄ってくる。体格から見て全員男のように見えた。
 先陣を切って一矢目がけて金属バットを振り上げたヘルメット集団の一人の胴に、一矢は鋭い前蹴りを叩き込む。
 体勢を崩したヘルメットの手首を警棒で殴り付け、バットを手放させる。
 一矢は急いで地面に転がったバットを拾い、かがんだ状態からすくい上げるようにヘルメットの顎にバットを叩きつけた。男は崩れ落ちる。
 一人目の男が倒れるとすぐさま次の男がゴルフクラブを横薙ぎに振った。
 一矢はバットでそれを打ち払うが、手応えのなさに違和感を覚えた。
(こいつら、弱い!? だが、隠してる能力があるはずだ。絶対に能力発動を見逃すな!)
 ひしゃげたゴルフクラブを捨てて殴りかかってくる第二の男。一矢はバットの先端を男のみぞおちに勢いよくねじ込む。前のめりに倒れるヘルメット男。
 すかさず三人目の男がクロスボウで一矢を狙い撃つ。放たれた矢を難なく掴み取る一矢。
 ワゴン車から降りた男は六人いた。残りの三人は後方で一矢を撃った少年を守るように陣取っている。
 奇妙なのは男たちが一人も能力らしきものを見せないことだ。だが一矢の意識に干渉してきた少年の能力を思い出す。能力の発動に予兆があるとは限らない。
(違う! もう何かの能力が発動していると考えろ!)
 倒れた二人目の男が一矢の足首を掴む。クロスボウの男が次の矢を放とうとする。
 次の瞬間。少年を護衛していた三人の男たちのうちの二人が消えた。
「何!?」
 次の瞬間。消えた二人の男が一矢の左右に現れ、中心の一矢目がけてそれぞれがバットをなぎ払う。
 一矢はジャンプで避けようとするが、足首を掴む男がそれを邪魔する。二本のバットに挟まれる一矢。だがひしゃげたのはバットの方だった。一矢が両腕で二人を押しのけると、迫りくる矢を手にしたバットで弾き飛ばした。
(ヘルメットで顔を隠しているが、体格も、攻撃の仕方も不自然なくらい似てる。瞬時に消えたり出たりするところから見て……分身ってところか)
 考え込む一矢の背後から、起き上がった男の持つナイフが一矢を狙う。
 造作もなく後ろ回し蹴りで男を吹き飛ばす一矢。異能者ではあるが、あまりにも弱い。この数か月間、怪異と戦ってきた一矢の敵ではなかった。
「おい。俺の能力がまた発動するまでは耐えてくれよ」
「うるせえ。死神って普通にやったらこんなに強いのかよ」
 少年とヘルメットの一人が話している。
 一矢にはなんとなく敵のやり口がわかってきた。少年の能力で認識を阻害し、神出鬼没の分身で足止めしつつ、少年を守る。
 だが死神相手にはあまりにもお粗末な戦法だと一矢は考える。
 一矢は頭部への銃撃で能力から解放された。半端な攻撃では認識の阻害が解除される以上、一撃で死神を殺せるような攻撃手段が必要なはずなのだ。
「二宮はなにやってんだよ。まだ中なのか?」
 どうやら決め手となるのは「二宮」という存在らしい。
「それはこいつか?」
 椿の声。
 口から血を流した大学生くらいの男を引きずりながら事件現場の家から出てくる。
 椿は男を路上に放り捨てると分身を次々と銃撃した。霧散する分身たち。
 すぐさま再度分身を展開する本体のヘルメット男。
「椿さん、気を付けて! そいつは認識をおかしくする!」
 一矢が椿に警告する。
「いいところに来たな。お前ら、同士討ちしろ」
 少年がそう言うと、椿はゆっくりと右手に持った拳銃を一矢に向ける。
 認識阻害による少年と、さらに状況をひっかき回す分身能力の男。
 そして椿には通用しなかった一ノ瀬による「相手の血液を逆流させる」能力。
 血液の逆流は死神にとって霊力操作の破壊を意味し、彼らを極端に弱体化させる。
 それには一定時間相手に触れる危険を冒す必要があったが、それを可能にしていたのが二人の攪乱だった。
「椿さん!」
 発砲音が響く。
 肩を撃たれた少年が膝をついた。
「は……?」
「幻術にかかったときの感覚に似ているな。しかし本当にこんなもので死神を殺せたのか? 二宮とやらの口ぶりだと引っかかった馬鹿がいたようだが」
 椿がジャケットの中に引っ込めていた左手を出す。
 するとその手には手のひらサイズのもう一丁の拳銃が握られていた。彼女は少年を見ることもなくジャケット越しの射撃をしたのだ。
 ヘルメット男たちの本体は仲間たちが倒れるのを見ると分身に突撃させ、自身は車に乗り込もうと走り出した。
「待てーい!」
 いつの間にか復活したつぐみが目にもとまらぬスピードで突撃し、ヘルメット男を車のボンネットにめり込ませる。男はそれっきり動かなくなった。
「終わったな。どうして死神に挑戦するなんて馬鹿をやった?」
「うるせえ……」
「まあいい。聞こえるか、異能者だ。転送しろ」
 肩を押さえた少年。車にめり込んだヘルメットの男、二宮と呼ばれた青年が光の粒子のようになって空に昇っていく。
「これは……?」
「ヴァルキリーに引き渡した。殺してもいいが弾の無駄だからな」
 目の前の光景について問う一矢に椿が答える。
「ヴァルキリーが死神の標的に指定した対象を殺すか、戦闘不能にして転送すれば、狩りの証が報酬として与えられる」
「狩りの証?」
「体内に取り込むことで狩りの対象を狩ったことになる非常食のようなものだな。私が取り込むと死神を殺したことになる。かなり不味い」
 確か椿は「実力不足の死神や、狩りの対象が強力な死神が招集に応じる」と言っていた。納得する一矢。
 その一方で未だに狩りの対象が不明な自分のことを不思議に思う。
「でもどうして、やつらは事件を起こしてまで死神をおびき寄せる必要があったんでしょうか?」
「知るか。破滅願望でもあるんじゃないのか? ここ最近の事件はそういうのばっかりだろ」
 すると二人の下へつぐみが駆け寄ってくる。車に轢かれたダメージは一時的なもののようだ。
「見てー! ぶつかった衝撃でスマホ落としたみたい! 変なこと書いてあるよ!」
 画面のひび割れたスマートフォンには、黒い画面に白い文字の簡素なページが表示されていた。
『チーム・トライアングルは脱落しました』
「おい、見てくれ。お前よく触ってるだろ」
 椿は必要最低限しか携帯電話を触らない。一矢も特段詳しいわけではないが、この件に関係があると感じてスマートフォンを受け取る。
「『TOPに戻る』……え? これって……!」
「どうした?」
 画面に表示された文字に一矢は驚いて声を漏らす。
『このゲームは現実を舞台とした“死神狩り”のゲームです』
『チームを組んで能力を活かし、死神を殺しましょう』
『最も多くポイントを得たチームには、全ての人類を超越した“神”になる権利が与えられます』
『ランキング一位 “チーム・カタストロフィ”』
『かつてないスリリングなゲームを楽しみながら、“神”を目指しましょう』
 一矢は画面の説明文を読み終えて改めて驚愕した。
 これが本当なら、先ほどの三人組は「異能者たちによる死神を殺すゲーム」に参加していたようだ。
「シニガミ・キリングフィールド」
 それがそのゲームのタイトルだった。