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第三百三十話

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 甲板上に、来栖善吉の怪人体が露わになった瞬間、外で戦っていた者たちは、その信じられない光景を目の当たりにしていた。変貌した彼もそうだが、それに食って掛かる三人の英雄の姿も合わせて、驚きそのものであったのだ。
 礼安とエヴァ、そして敵に回っていたはずの信玄、その新たな姿が、各々に願い、心を託した者たちへ、デザインの異なる翼を授けたのだ。礼安は蒼、エヴァは純白、信玄は黒ベースのオレンジ。順当な翼の形や、武器によって形作られたもの、サイバティックな風貌の翼。それぞれに似合った、巨悪を討つ者に授けられた翼としては上等であった。
 宙を舞いながら、無数に闇の魔力を触手として伸ばし続ける意思無き善吉の猛攻を回避しながら、己が武器たちで応戦していく。
 圧倒的巨体に対峙するには、頼りなく思える英雄たち。しかし、これほどサイズ感があればどう立ち回っても不正解は無いのだ。
 宙を高速飛行しながら、体中を刻んでいく礼安たち。しかし、片っ端から全て回復していく。しかし、それは単純に相手を害する目的で行っている訳では無い。少しでももう一人から意識を逸らすための案であった。
 エヴァは、というと、怪物の習性を短時間で全て、学習(ラーニング)しようとしていたのだ。どのようなムーブをしたら相手はどう動くか、その傾向を全て頭の中に叩き込んで、その傾向を味方二人に全て魔力により共有、各々の作戦を組みやすくするための策であった。
 実際、まだ人間の体を保っていた時では出来ない、未完成も同然の作戦であったのだが、巨体になり一行を襲う大怪物と成り果てた後は、それぞれに割く思考力が極端に低下、破壊力以外は敵ではなかったのだ。
 礼安と信玄は、そんなエヴァのための先遣隊。特別作戦を伝えた訳ではないが、各々がやれることをやる、そんな柔軟性の通りに動いたまでである。
 そうして遂に、エヴァは光の魔力を超高速で二人に飛ばし、大声を張り上げる。
「腕、落としにかかりますよ、二人とも!」
 そう叫ぶエヴァであったが、彼女に目掛け巨大な拳を叩き込みにかかる。しかし、エヴァも無策で叫んだわけではなかった。
 折れたはずの鋼鉄(スチール)の剣を手に持ち、すぐさまそれに小鎚を叩き込んで変質。高性能アタッシュケース内に機能として備わっていた超高性能シールドに変貌させたのだ。
 そのシールドに叩き込まれる、巨大な体躯から放たれる全力の拳。普通ならば、装甲があってもあまりにもの衝撃に、一瞬にして戦闘不能状態に追い込まれてしまうだろう。よりにもよって、纏っている魔力が闇。当人の生命力や、魔力を媒介にする代わりに圧倒的推進力を得ているのだ。
 だが、武具としての性質を学び、完全に理解した武器は、その材質で作られていないとしても完璧に作り上げることが出来る。
 滲みだす闇の魔力は防ぎきれないために、(デコイ)としての役割しか果たせないのだが。

「――だけど、それでいい!!」

 礼安と信玄が、念剣と神聖剣にて、全霊の魔力を帯びた一撃にてぶった斬る。型など関係ない、ただそこに『斬る』という意思がある限り、爆発的な一撃として威力が足りうるのだ。巨体であれ、雄叫びを上げながら全力でぶった斬ったのだ。
 しかし、善吉は獣のような叫びを上げながら新たな腕を瞬時に生成。無数の触手を蠢かせながら、造り上げていくのだ。
 礼安と信玄は、闇の魔力の残滓を振り払いながら、次の策を考え始めた。しかし、どこまで行っても無限に再生し続ける彼の体に有効打を叩き込むには長さ(リーチ)距離適性(レンジ)が足らないと思案していた。
 悩む一行を救う策は、その場の三人以外が考え付いていた。
 なんと、下の方から莫大な魔力反応がしたためにそちらを向くと、綾部が蒼の槍――すなわち、ゲイ・ボルグを生成、右腕に全力を込め、ターゲットを定めていたのだ。

「――お三方、ちょーっと射線上に立たない方が良いよ!! ぶっ貫かれたくないならね!!」

 三人は目的を察知したために、善吉が視界一杯に広がるよう綾部の視界(サイト)から逃れる。それを察知したがために、怪物は綾部に手を伸ばし始める。
「簡単に……おいそれと手出しさせるかっての!!」
 狙いを定め、出力を高めている状況の無防備な綾部を助けるのは、変身こそしていないもののベース能力にて即席防壁(バリア)を作り出す灰崎と丙良。丙良は満身創痍状態であるために、土や泥の壁を固める出力が安定していなかったものの、灰崎の氷壁によって完全に補強。中に土や泥を混ぜ込んだ、強度抜群の壁が出来上がったのだ。
 氷の力が、怪物の腕を伝染し、徐々に凍り付かせていく。一切の身動きが取れない状態にまで追い込む。
 ただ、それも一時的なものであることは十分理解していた。凍てついた腕から、歪んだ魔力と闇の魔力が噴き出し、そこから新たな細い腕を生み出して攻め立ててくる。
「悪いが……俺も俺でついさっき因子を覚醒させたばっかりだからよ!! 踏ん張り利かせる脚の補強くらいしか後は手助けできねえぞ!!」
「ありがとうございます、その位の機会(じかん)貰えたら上等でしょう!!」
 腕を伸ばし、左手でLのサインを作り上げ、三平方の定理を応用し距離を計測。あれほどの巨体を貫くほどの強さは欲しく、かといってその向こう側に槍が抜けてしまっては要らぬ被害を生む。恨みがある以上、どこまででも自分を顧みることなく強くは出来るが、二次災害は彼女の望む物ではない。
 それに、きっと槍を奴の心臓に残せば、それがまだ見ぬ『少しの奇跡』を起こせる。作戦こそ一切伝えられていないものの、そう信じていたのだ。
 全力を蒼槍(ゲイ・ボルグ)に込め、全力で地面を踏みしめ。踏ん張りに用いた氷を砕くほどの勢いで、究極の投擲。

「行ッッッけェエェェェェェェェェェッ!!!!」

 ただ貫くのではなく、それ以前に存在する氷と土の障壁やら、魔力やら触手やら、善吉を守るもの全てを振り払い貫くために、回転式穿孔機(ドリル)のように回転のエネルギーをそこに内包した。そのために先端も回転式穿孔機(ドリル)状に変形させ、これまでの恨みをぶつけにかかるのだ。
 宙をただ漂うのではなく、目で追うことすら出来ない怒涛の速度で迫っていき、怪物の腕すら易々とかき分け貫いていき、胸部中央に着弾。あまりにもの直接的な痛みに、巨大な化け物は大きな悲鳴を上げるのだった。
 致命の一撃に近い場、心臓部にて喀血するは、ひた隠しにされてきた善吉の本体。
 大量出血と共に、表に出た善吉は、自身の膨大な魔力とドライバーから発せられる強大な魔力に飲まれ、人の言葉を話すことすら出来なかった。
 善吉の頭上には、非常に冷えた空気が蔓延していた。それは、灰崎が現在やれる最大限を示した証である。あまりにもの疲労に、その場に倒れこむのだった。
 そして、その冷えた空気が満ちた雲に放つは、海ほまれの千葉県側にて戦っていた院の焔矢。そこに暴風を伴う透のトッピングも合わせ、強烈な雨雲――否、雷雲を作り出したのだ。
『行ってきなさい、礼安!』『弱点に、手痛い一撃叩き込んでやれ!!』
 装甲に送られるは、二人の心意気を表したメッセージ。信玄と共に頷き、信玄の念能力によって巨大な手を生成、それによってフルスイングで投げ飛ばされる。飛行能力によって方向を是正しながら、自分自身が雷となるべく、そこに全霊の一撃を叩き込むのだ。
『超必殺承認!! 遍く悪を浄化する、円卓の轟雷(オールオーバー・ラウンズテーブル・サンダーボルト)!!』
 雲自体に轟雷を叩き込んで、呼び起こすは人造×自然のエネルギー。魔力によって齎された雷の爆薬によって、家屋やビルすらその雷で完全に破壊するほどの爆雷が生まれ、本人に直接落雷。心臓部には、ちょうどいい『避雷針』も立っていたために、全ての雷のエネルギーを――産地直送と言わんばかりに届けたのだ。
 巨大生物、その全体が、一発の轟雷によって悲鳴を上げる。あまりにもの一撃に、体の形を成さずそのまま一部が崩れていく。そこから礼安たち三人は、己が武器を用いて善吉を繋ぎとめていた魔力を切除し分解、ほぼありのままの善吉だけが、宙に放りだされたのだ。

「今だ!! ここで全て、終わらせるぞ!!」

 信玄の張り上げた声で、三人の心は完全に一致。それぞれ空気を蹴り飛ばし、より高所に陣取って、全身全霊の力を込め飛び蹴りの体勢を整えたのだ。

『『『超必殺承認!!』』』
「「「「「「「「「行けェェェェェェェッ!!!!」」」」」」」」」

 狐川、葵、中山、院、透、灰崎、千尋、綾部、丙良。それぞれの思いが、三人の背を押し、絶叫に似た雄叫びと共に、三人の絶技を叩き込むのだった。

村正蹴撃一ノ段・跳蹴光雄撃(ムラマサキッキング・ファースト=ヒーローズインパクト)!!』
遍く悪を浄化する、円卓の轟雷(オールオーバー・ラウンズテーブル・サンダーボルト)!!』
絶技・信蘭恩讐烈蹴撃(サイコキネティック・リベンジャーズフルファイヤ)!!』

 三人の一撃が、綾部の蒼槍(ゲイ・ボルグ)にそのまま着弾。圧倒的破壊力を、そのまま善吉の肉体を貫くために利用しながら、避雷針となって焼け焦げたものが、三人の力によって成す術なく砕け散る。
 そのまま、百何十トンにも及ぶ一撃が、骨を、臓器を、肉を、全てを蹂躙しながら、まるで彗星のように堕ちていく。怪物がいたはずの甲板上に、爆発と共にそのまま叩き込んだのだ。
 これまで、だいだらぼっちのように甲板上に君臨していた巨大生物は、轟雷とその後に放たれた三発の彗星によって、完全に瓦解。泥のように崩れ去っていき、元々の肉体など忘れ去ったと言わんばかりに、解け、消滅していくだけであった。
 程離れた位置に着地した三人は、ただ無言で笑みを浮かべながらハイタッチ。それと共に三人の変身は解除され、ぼろぼろの三人が爆発を背に立つのみであったのだ。

 これにより、英雄学園東京本校英雄科一年一組所属・『瀧本礼安(タキモト ライア)』と二年一組所属・『森信玄(モリ ノブハル)』、そして武器科二年一組所属・『エヴァ・クリストフ』VS五斂子社代表取締役社長兼、『流浪の獣(リウラン・ショウ)』二代目総帥兼、新生山梨支部支部長・『来栖善吉(クルス ゼンキチ)』の勝負は、どこまでも追い詰め追い詰められの平行線上の戦闘(シーソー・ゲーム)状態な中、信玄が洗脳から解かれ、本当の記憶を取り戻してから一変。
 三対一の構図となり、それぞれの全力を出し合った結果、山梨県と千葉県を震撼させた大罪人を、覚醒を果たした者全て、そして英雄陣営の全勢力を結集させ、完全に事件を終息させたのだった。



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 甲板上に、来栖善吉の怪人体が露わになった瞬間、外で戦っていた者たちは、その信じられない光景を目の当たりにしていた。変貌した彼もそうだが、それに食って掛かる三人の英雄の姿も合わせて、驚きそのものであったのだ。
 礼安とエヴァ、そして敵に回っていたはずの信玄、その新たな姿が、各々に願い、心を託した者たちへ、デザインの異なる翼を授けたのだ。礼安は蒼、エヴァは純白、信玄は黒ベースのオレンジ。順当な翼の形や、武器によって形作られたもの、サイバティックな風貌の翼。それぞれに似合った、巨悪を討つ者に授けられた翼としては上等であった。
 宙を舞いながら、無数に闇の魔力を触手として伸ばし続ける意思無き善吉の猛攻を回避しながら、己が武器たちで応戦していく。
 圧倒的巨体に対峙するには、頼りなく思える英雄たち。しかし、これほどサイズ感があればどう立ち回っても不正解は無いのだ。
 宙を高速飛行しながら、体中を刻んでいく礼安たち。しかし、片っ端から全て回復していく。しかし、それは単純に相手を害する目的で行っている訳では無い。少しでももう一人から意識を逸らすための案であった。
 エヴァは、というと、怪物の習性を短時間で全て、|学習《ラーニング》しようとしていたのだ。どのようなムーブをしたら相手はどう動くか、その傾向を全て頭の中に叩き込んで、その傾向を味方二人に全て魔力により共有、各々の作戦を組みやすくするための策であった。
 実際、まだ人間の体を保っていた時では出来ない、未完成も同然の作戦であったのだが、巨体になり一行を襲う大怪物と成り果てた後は、それぞれに割く思考力が極端に低下、破壊力以外は敵ではなかったのだ。
 礼安と信玄は、そんなエヴァのための先遣隊。特別作戦を伝えた訳ではないが、各々がやれることをやる、そんな柔軟性の通りに動いたまでである。
 そうして遂に、エヴァは光の魔力を超高速で二人に飛ばし、大声を張り上げる。
「腕、落としにかかりますよ、二人とも!」
 そう叫ぶエヴァであったが、彼女に目掛け巨大な拳を叩き込みにかかる。しかし、エヴァも無策で叫んだわけではなかった。
 折れたはずの|鋼鉄《スチール》の剣を手に持ち、すぐさまそれに小鎚を叩き込んで変質。高性能アタッシュケース内に機能として備わっていた超高性能シールドに変貌させたのだ。
 そのシールドに叩き込まれる、巨大な体躯から放たれる全力の拳。普通ならば、装甲があってもあまりにもの衝撃に、一瞬にして戦闘不能状態に追い込まれてしまうだろう。よりにもよって、纏っている魔力が闇。当人の生命力や、魔力を媒介にする代わりに圧倒的推進力を得ているのだ。
 だが、武具としての性質を学び、完全に理解した武器は、その材質で作られていないとしても完璧に作り上げることが出来る。
 滲みだす闇の魔力は防ぎきれないために、|囮《デコイ》としての役割しか果たせないのだが。
「――だけど、それでいい!!」
 礼安と信玄が、念剣と神聖剣にて、全霊の魔力を帯びた一撃にてぶった斬る。型など関係ない、ただそこに『斬る』という意思がある限り、爆発的な一撃として威力が足りうるのだ。巨体であれ、雄叫びを上げながら全力でぶった斬ったのだ。
 しかし、善吉は獣のような叫びを上げながら新たな腕を瞬時に生成。無数の触手を蠢かせながら、造り上げていくのだ。
 礼安と信玄は、闇の魔力の残滓を振り払いながら、次の策を考え始めた。しかし、どこまで行っても無限に再生し続ける彼の体に有効打を叩き込むには|長さ《リーチ》と|距離適性《レンジ》が足らないと思案していた。
 悩む一行を救う策は、その場の三人以外が考え付いていた。
 なんと、下の方から莫大な魔力反応がしたためにそちらを向くと、綾部が蒼の槍――すなわち、ゲイ・ボルグを生成、右腕に全力を込め、ターゲットを定めていたのだ。
「――お三方、ちょーっと射線上に立たない方が良いよ!! ぶっ貫かれたくないならね!!」
 三人は目的を察知したために、善吉が視界一杯に広がるよう綾部の|視界《サイト》から逃れる。それを察知したがために、怪物は綾部に手を伸ばし始める。
「簡単に……おいそれと手出しさせるかっての!!」
 狙いを定め、出力を高めている状況の無防備な綾部を助けるのは、変身こそしていないもののベース能力にて即席|防壁《バリア》を作り出す灰崎と丙良。丙良は満身創痍状態であるために、土や泥の壁を固める出力が安定していなかったものの、灰崎の氷壁によって完全に補強。中に土や泥を混ぜ込んだ、強度抜群の壁が出来上がったのだ。
 氷の力が、怪物の腕を伝染し、徐々に凍り付かせていく。一切の身動きが取れない状態にまで追い込む。
 ただ、それも一時的なものであることは十分理解していた。凍てついた腕から、歪んだ魔力と闇の魔力が噴き出し、そこから新たな細い腕を生み出して攻め立ててくる。
「悪いが……俺も俺でついさっき因子を覚醒させたばっかりだからよ!! 踏ん張り利かせる脚の補強くらいしか後は手助けできねえぞ!!」
「ありがとうございます、その位の|機会《じかん》貰えたら上等でしょう!!」
 腕を伸ばし、左手でLのサインを作り上げ、三平方の定理を応用し距離を計測。あれほどの巨体を貫くほどの強さは欲しく、かといってその向こう側に槍が抜けてしまっては要らぬ被害を生む。恨みがある以上、どこまででも自分を顧みることなく強くは出来るが、二次災害は彼女の望む物ではない。
 それに、きっと槍を奴の心臓に残せば、それがまだ見ぬ『少しの奇跡』を起こせる。作戦こそ一切伝えられていないものの、そう信じていたのだ。
 全力を|蒼槍《ゲイ・ボルグ》に込め、全力で地面を踏みしめ。踏ん張りに用いた氷を砕くほどの勢いで、究極の投擲。
「行ッッッけェエェェェェェェェェェッ!!!!」
 ただ貫くのではなく、それ以前に存在する氷と土の障壁やら、魔力やら触手やら、善吉を守るもの全てを振り払い貫くために、|回転式穿孔機《ドリル》のように回転のエネルギーをそこに内包した。そのために先端も|回転式穿孔機《ドリル》状に変形させ、これまでの恨みをぶつけにかかるのだ。
 宙をただ漂うのではなく、目で追うことすら出来ない怒涛の速度で迫っていき、怪物の腕すら易々とかき分け貫いていき、胸部中央に着弾。あまりにもの直接的な痛みに、巨大な化け物は大きな悲鳴を上げるのだった。
 致命の一撃に近い場、心臓部にて喀血するは、ひた隠しにされてきた善吉の本体。
 大量出血と共に、表に出た善吉は、自身の膨大な魔力とドライバーから発せられる強大な魔力に飲まれ、人の言葉を話すことすら出来なかった。
 善吉の頭上には、非常に冷えた空気が蔓延していた。それは、灰崎が現在やれる最大限を示した証である。あまりにもの疲労に、その場に倒れこむのだった。
 そして、その冷えた空気が満ちた雲に放つは、海ほまれの千葉県側にて戦っていた院の焔矢。そこに暴風を伴う透のトッピングも合わせ、強烈な雨雲――否、雷雲を作り出したのだ。
『行ってきなさい、礼安!』『弱点に、手痛い一撃叩き込んでやれ!!』
 装甲に送られるは、二人の心意気を表したメッセージ。信玄と共に頷き、信玄の念能力によって巨大な手を生成、それによってフルスイングで投げ飛ばされる。飛行能力によって方向を是正しながら、自分自身が雷となるべく、そこに全霊の一撃を叩き込むのだ。
『超必殺承認!! |遍く悪を浄化する、円卓の轟雷《オールオーバー・ラウンズテーブル・サンダーボルト》!!』
 雲自体に轟雷を叩き込んで、呼び起こすは人造×自然のエネルギー。魔力によって齎された雷の爆薬によって、家屋やビルすらその雷で完全に破壊するほどの爆雷が生まれ、本人に直接落雷。心臓部には、ちょうどいい『避雷針』も立っていたために、全ての雷のエネルギーを――産地直送と言わんばかりに届けたのだ。
 巨大生物、その全体が、一発の轟雷によって悲鳴を上げる。あまりにもの一撃に、体の形を成さずそのまま一部が崩れていく。そこから礼安たち三人は、己が武器を用いて善吉を繋ぎとめていた魔力を切除し分解、ほぼありのままの善吉だけが、宙に放りだされたのだ。
「今だ!! ここで全て、終わらせるぞ!!」
 信玄の張り上げた声で、三人の心は完全に一致。それぞれ空気を蹴り飛ばし、より高所に陣取って、全身全霊の力を込め飛び蹴りの体勢を整えたのだ。
『『『超必殺承認!!』』』
「「「「「「「「「行けェェェェェェェッ!!!!」」」」」」」」」
 狐川、葵、中山、院、透、灰崎、千尋、綾部、丙良。それぞれの思いが、三人の背を押し、絶叫に似た雄叫びと共に、三人の絶技を叩き込むのだった。
『|村正蹴撃一ノ段・跳蹴光雄撃《ムラマサキッキング・ファースト=ヒーローズインパクト》!!』
『|遍く悪を浄化する、円卓の轟雷《オールオーバー・ラウンズテーブル・サンダーボルト》!!』
『|絶技・信蘭恩讐烈蹴撃《サイコキネティック・リベンジャーズフルファイヤ》!!』
 三人の一撃が、綾部の|蒼槍《ゲイ・ボルグ》にそのまま着弾。圧倒的破壊力を、そのまま善吉の肉体を貫くために利用しながら、避雷針となって焼け焦げたものが、三人の力によって成す術なく砕け散る。
 そのまま、百何十トンにも及ぶ一撃が、骨を、臓器を、肉を、全てを蹂躙しながら、まるで彗星のように堕ちていく。怪物がいたはずの甲板上に、爆発と共にそのまま叩き込んだのだ。
 これまで、だいだらぼっちのように甲板上に君臨していた巨大生物は、轟雷とその後に放たれた三発の彗星によって、完全に瓦解。泥のように崩れ去っていき、元々の肉体など忘れ去ったと言わんばかりに、解け、消滅していくだけであった。
 程離れた位置に着地した三人は、ただ無言で笑みを浮かべながらハイタッチ。それと共に三人の変身は解除され、ぼろぼろの三人が爆発を背に立つのみであったのだ。
 これにより、英雄学園東京本校英雄科一年一組所属・『|瀧本礼安《タキモト ライア》』と二年一組所属・『|森信玄《モリ ノブハル》』、そして武器科二年一組所属・『エヴァ・クリストフ』VS五斂子社代表取締役社長兼、『|流浪の獣《リウラン・ショウ》』二代目総帥兼、新生山梨支部支部長・『|来栖善吉《クルス ゼンキチ》』の勝負は、どこまでも追い詰め追い詰められの|平行線上の戦闘《シーソー・ゲーム》状態な中、信玄が洗脳から解かれ、本当の記憶を取り戻してから一変。
 三対一の構図となり、それぞれの全力を出し合った結果、山梨県と千葉県を震撼させた大罪人を、覚醒を果たした者全て、そして英雄陣営の全勢力を結集させ、完全に事件を終息させたのだった。