二年次最強、森信玄――その帰還に、その場の二人は大いに喜んだ。しかも、すっきりとした本人の様子から、本来の記憶を取り戻したようであり、その点礼安も静かに喜んでいた。
「――しっかしよ。俺の見ない間に……俺の元上司たる糞野郎は、とんだだいだらぼっちになりやがって。しかも本来の理性ある、人間としての姿を取り戻すには……ドライバーを始めとして、中身から引きずり出す必要があると来た。本当……こいつのどこが完璧なんだか、少し前の俺に問い質してやりてえよ」
合同演習会の時にも聞いた記憶のある、相手を小馬鹿にするような軽口。それがこちら側の味方として帰ってきた事実に、礼安は半泣きの状態で接していた。
「――良かった、森ししょー。私たちと一緒に……戦ってくれるんだ」
「無論じゃあねえの。俺は――散々やらかして……それでも生きていてくれ、悪く思わないでくれだなんて
特別待遇受けているんだ。少なくとも……手前のやりてェことのために『生きて、帰る』。何としてでも……今生存している味方の皆を生かし、元の場所に返す。んでもって……
善吉とはちゃんと決着をつける。その位の割り切り方が丁度いい」
二人で不可能なことも、人数を増やせば何とかなる。戦えない者が集うのではなく、適材適所の形で各々の仕事にあたる。それこそが、信玄がここに立つ理由の一つ。
散々嘘を
吐かれた。
散々いいようにされてきた。
それは当人だけではない、県を跨いで大勢の人間が自分の理想のためだけに実験に付き合わされた。当人の意志や願いなど一切尊重せず、命が永遠に流転し続ける
地獄まで一時的とはいえ造られた。
未だ、元大人はあの山梨県に事実上の負の遺産として存在する。さらに、千葉県では東京デスティニーアイランドにて感情をコントロールを施された平和のための存在を悪用し、次なるグレープの惨劇を生み出そうとしていることは事実。
ここで、あらゆる因縁によって集った三人が、眼前の巨悪を打倒することが、世のため人のためになるのだ。
「――こう見ると、まるでゲームみたいですね。最初は人間、そこから変貌を繰り返していって……やがて人間の影など欠片も存在しない、恵まれた体躯を保有した知性無き巨人へ。まるでバイオハザードの
悪役の転落劇のようです」
エヴァは、静かに左手で新銘刀を手にし、その
鋒を善吉だったものへ向ける。それは暗に、
本塁打予告ならぬ
打倒予告であったのだ。
「でも、そう言った存在って……往々にして私たちプレイヤー……いや、そのゲームの主人公たちに倒されるが宿命だよね。最初はどれほど絶望的な状況であったとしても、ロケットランチャーでも何でも使って、大団円で終わる。きっと――今回もそうだよ」
エヴァと逆の右手で、神聖剣を手にし、同じように
鋒を向ける。そうされては、信玄もそうせざるを得ない。頭を困ったように掻きながら、サングラスを整え、ライセンススロットに信長のライセンスを認証、装填する。
「――元はと言えば、全ては合同演習会の後から始まった。そこから
手前の欲望を満たすために、大勢の奴が犠牲になった。確かにアンタは上司としてはまあまあ良かった。
見た目至上主義に囚われず、ただ
成果主義を胸に手柄を立てた部下に正当な評価と褒賞を与え、その度に反省させ次なるより良い結果を待つ。世の中の社会人が、上に立つ有能として……喉から手が出るほどに欲しいだろうな。我が身可愛さに横取りだのなんだの、平気でする
輩が大勢いやがるからな」
その後、信長のライセンスの力が込められた状態で、何と『森蘭丸』のライセンスを認証、装填する。これまで以上の出力を誇る、相乗効果による爆発力を持ったエネルギーを、念銃に
装填していく。
「だが……お前のせいでどれほどの存在が泣きを見たと思っている。有能、無能を勝手に決めつけられ、排除された奴の気持ちが分かるかよ。――まあ、分からねえだろうな。世の人間を舐め腐ったような
奴に、世の中を必死に生きている奴の気持ちが分かるはずがねえだろうな」
信長と蘭丸、二人分の圧縮装甲弾を遥か上空に放つ。信玄と信之、二人の思いが籠った、手を取り合っていれば有り得たかもしれない『
If』のフォーム。様々な人生の分岐点を、一つも間違わずに辿り着けたのなら、一切しがらみのない共同戦線も張れたであろう。それを、今の信玄が亡き信之に届くよう、新たな可能性を示すのだ。
「お前だけは……お前だけは絶対に許しちゃあならねェ! 俺ら
英雄が、お前という究極の
敵を打倒する!! 俺らだけじゃあねえ、さんざ煮え湯を飲まされ続けた奴の思いも乗せて、お前をぶっ飛ばすんだ!! 変身!!」
装甲弾を裏拳でパージさせながら、空中にて高速変形、信長と蘭丸の力が、信玄の体に装着されていく。
三対一、山梨県と千葉県を巡る、本当の最終決戦の火蓋が、切って落とされたのだった。