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第三百二十六話

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 自身の持てる、フルパワーで放ったはず。それなのに、善吉は窮地に追い込まれたことによって、まるで土壇場に立たされた英雄(ヒーロー)のような覚醒を、何度も果たしたのだ。偏に、それは単なる意地と本人の努力の産物。同じ相手に、二度も負けるわけにはいかない。子供のような、実に大人げないものと称されてもおかしくは無いが、それほどに善吉は己が掲げる理想(ゆめ)を欲望のままに成し遂げたかったのだ。
 当たる当たらないに関わらず、超必殺技を放ったことによる疲労によって、そして闇の魔力によって魔力を吸収され、徐々に全体的な出力が下降線をたどる礼安たちは、窮地そのものであったのだ。

『まだだ……まだだまだだまだだまだだまだだァァァァァッ!! 俺は、俺の計画(ゆめ)を完遂させるまで死ねないんだァァァッ!! アハハハハハハハッ!!』

 すぐさま技を中断し、何とか程離れた位置に着地する二人。明らかな疲労の色が見て取れるほどに、消耗していた。
「闇と光のベース能力は水と油……互いに特効が掛かり合うもので、正直現状の私だと、制御(コントロール)しきれていません。でも……アイツは、生死の境を彷徨ったことで、因子が更なる高みへ登った……魔力の奔流も並の相手の数倍以上にまで膨れ上がっていますから――――このままだとジリ貧確定です」
 元々、長生きかつ健康オタクであった家康の逸話から来る固有能力である、自動再生能力が悪さをし、生半可な傷は無意味なものとして処理される。しかも、この能力の質の悪い部分は、毒物や病気の類の、少々変化球な『傷』すら効果が薄まるかそもそも効かなくなる。
「――だから、私の『(ショック)』による強制心肺蘇生法(ダイレクトマッサージ)も効果が薄いんだ」
「はい。効果が無いとは言いませんが、正直……本当に厳しい状況です」
 さらに魔力を増幅する善吉は、いよいよこれまでの武者然とした見た目から、肥大化し艦長室の天井すら壊していく。どこまでも際限なく成長する、まさに生物兵器(オーガニック・バイオ・ウエポン)そのものであった。

『俺は、お前等とは違う!! 俺こそがこの国の頂点に立つ存在!! 多くの無能(クソ)を淘汰し、あらゆる有能を束ねる人類の宝だ!!』

 しかし、エヴァは何となく察知した。際限なく成長する闇の魔力によって、徐々にその力の支配権が薄れていっていることを。本当に制御(コントロール)できているのならば、自分の意志とは無関係の肥大化・更なる変貌は起こらないはず。
「――来栖善吉。アンタに……一応忠告しておきます。今ドライバーを外せば……きっとその『暴走』は終わる。アンタがアンタらしく私たちを殺したいのなら……ライセンスを一枚減らすか外しなさい」
『そんな口車には乗らない!! 誰も信用しない、誰も頼らない!! 俺だけが俺を安心、満足させてくレルンだ!!』
 その言葉とは裏腹に、徐々に主導権が奪われていく善吉。まだ無事であった腕は完全に圧し折れて、人体の構造上向かない方向へ方向転換。そして触手が纏わりつき、新たに巨大な腕が生成されていくのだ。
 多腕かつ巨大な化け物。家康の因子や、秀吉の力など、一切関係なしにドライバーが善吉を食らっていくのだ。物語に己が魔力をドレッシングのようにアレンジ、欲深な人間を食い物にして、人知を超えた怪物が生まれるのだ。

『殺ス!! 終ワラセル!! 邪魔サセナイ!! 俺タチノッッ!! 悲願ヲッッッ!! ソレガッッ、犠牲ニナッタ同胞ト――――『右腕』ノタメニィィッッッッ!!』

 自我が失われていく中でも、礼安とエヴァに対して想像を絶する敵対心を抱き続ける、その執着心に――エヴァはある意味感服していた。どこまでも計画の成功に動き、身を粉に、どころか自分を失くしてしてまで動き続けた善吉に、これまでの恨みなど関係なしに己が正義を振りかざす以外にないと考えたのだ。
 礼安とエヴァは二人頷くと、崩落しつつある艦長室を吹き曝しとなった天井から飛び出し、開放的な空母上へと舞台を移した。
「――礼安さん。まだ、やれますか?」
「甲板まで侵食し始めた化け物……あまりにも大きすぎて、合同演習会を思い出すよ。でも……死ぬ気でやって見せる。ここで私たちが止めなかったら、また多くの被害が生まれる!」
 二人が覚悟を決め、もはや善吉の意志のみが残る巨大な化け物を目の前にして、戦闘態勢を取る。しかし――二人が予想だにしない来訪者が一人、その場に参戦することとなったのだ。

「その地獄に、相乗り――出来るか?」



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 自身の持てる、フルパワーで放ったはず。それなのに、善吉は窮地に追い込まれたことによって、まるで土壇場に立たされた|英雄《ヒーロー》のような覚醒を、何度も果たしたのだ。偏に、それは単なる意地と本人の努力の産物。同じ相手に、二度も負けるわけにはいかない。子供のような、実に大人げないものと称されてもおかしくは無いが、それほどに善吉は己が掲げる|理想《ゆめ》を欲望のままに成し遂げたかったのだ。
 当たる当たらないに関わらず、超必殺技を放ったことによる疲労によって、そして闇の魔力によって魔力を吸収され、徐々に全体的な出力が下降線をたどる礼安たちは、窮地そのものであったのだ。
『まだだ……まだだまだだまだだまだだまだだァァァァァッ!! 俺は、俺の|計画《ゆめ》を完遂させるまで死ねないんだァァァッ!! アハハハハハハハッ!!』
 すぐさま技を中断し、何とか程離れた位置に着地する二人。明らかな疲労の色が見て取れるほどに、消耗していた。
「闇と光のベース能力は水と油……互いに特効が掛かり合うもので、正直現状の私だと、|制御《コントロール》しきれていません。でも……アイツは、生死の境を彷徨ったことで、因子が更なる高みへ登った……魔力の奔流も並の相手の数倍以上にまで膨れ上がっていますから――――このままだとジリ貧確定です」
 元々、長生きかつ健康オタクであった家康の逸話から来る固有能力である、自動再生能力が悪さをし、生半可な傷は無意味なものとして処理される。しかも、この能力の質の悪い部分は、毒物や病気の類の、少々変化球な『傷』すら効果が薄まるかそもそも効かなくなる。
「――だから、私の『|閃《ショック》』による|強制心肺蘇生法《ダイレクトマッサージ》も効果が薄いんだ」
「はい。効果が無いとは言いませんが、正直……本当に厳しい状況です」
 さらに魔力を増幅する善吉は、いよいよこれまでの武者然とした見た目から、肥大化し艦長室の天井すら壊していく。どこまでも際限なく成長する、まさに|生物兵器《オーガニック・バイオ・ウエポン》そのものであった。
『俺は、お前等とは違う!! 俺こそがこの国の頂点に立つ存在!! 多くの|無能《クソ》を淘汰し、あらゆる有能を束ねる人類の宝だ!!』
 しかし、エヴァは何となく察知した。際限なく成長する闇の魔力によって、徐々にその力の支配権が薄れていっていることを。本当に|制御《コントロール》できているのならば、自分の意志とは無関係の肥大化・更なる変貌は起こらないはず。
「――来栖善吉。アンタに……一応忠告しておきます。今ドライバーを外せば……きっとその『暴走』は終わる。アンタがアンタらしく私たちを殺したいのなら……ライセンスを一枚減らすか外しなさい」
『そんな口車には乗らない!! 誰も信用しない、誰も頼らない!! 俺だけが俺を安心、満足させてくレルンだ!!』
 その言葉とは裏腹に、徐々に主導権が奪われていく善吉。まだ無事であった腕は完全に圧し折れて、人体の構造上向かない方向へ方向転換。そして触手が纏わりつき、新たに巨大な腕が生成されていくのだ。
 多腕かつ巨大な化け物。家康の因子や、秀吉の力など、一切関係なしにドライバーが善吉を食らっていくのだ。物語に己が魔力をドレッシングのようにアレンジ、欲深な人間を食い物にして、人知を超えた怪物が生まれるのだ。
『殺ス!! 終ワラセル!! 邪魔サセナイ!! 俺タチノッッ!! 悲願ヲッッッ!! ソレガッッ、犠牲ニナッタ同胞ト――――『右腕』ノタメニィィッッッッ!!』
 自我が失われていく中でも、礼安とエヴァに対して想像を絶する敵対心を抱き続ける、その執着心に――エヴァはある意味感服していた。どこまでも計画の成功に動き、身を粉に、どころか自分を失くしてしてまで動き続けた善吉に、これまでの恨みなど関係なしに己が正義を振りかざす以外にないと考えたのだ。
 礼安とエヴァは二人頷くと、崩落しつつある艦長室を吹き曝しとなった天井から飛び出し、開放的な空母上へと舞台を移した。
「――礼安さん。まだ、やれますか?」
「甲板まで侵食し始めた化け物……あまりにも大きすぎて、合同演習会を思い出すよ。でも……死ぬ気でやって見せる。ここで私たちが止めなかったら、また多くの被害が生まれる!」
 二人が覚悟を決め、もはや善吉の意志のみが残る巨大な化け物を目の前にして、戦闘態勢を取る。しかし――二人が予想だにしない来訪者が一人、その場に参戦することとなったのだ。
「その地獄に、相乗り――出来るか?」