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14話 お仕舞

ー/ー



 武装した傭兵たちを従えて再度「Aショップ」襲撃に動き出すシロとクロ。

 彼女らを指揮するカラレスは、クロの爆発で地下鉄の一画ごと「便利屋コロシ部」を埋め立ててしまうつもりだった。

 質量という単純なかつ圧倒的な力の前には、並大抵の能力では対抗することはできない。

 そしてシロには作戦成功まで何度でも「やり直す」力がある。

 だからそれ以上の戦力はあえて送り込まなかった。

 崩落によってルナたちが手にしたチップが壊れてもいいし、運良く破損しなければ「カラーズ」が回収すればいい。

 彼ら「カラーズ」が信奉している大量破壊者・柊陽向のデータではあるが、他人の手に渡らなければそれでいいと考えていた。

 昨晩「ヤマト陸軍」の息のかかった「極殺小隊」が香川を狙い、護衛に就いた「便利屋コロシ部」に敗北した情報は既にカラレスの耳に入っている。

 そしてカラレスはルナが陽向の妹とも知らず抹殺しにかかるのだった。

 *

 二人の少女が地下鉄のレールの上を進む。

 瓜二つ……というよりかはほくろの位置すら同じ、まるで複写したかのような顔が並んだ。

 ただ彼女たちに血縁関係はなかったし、他人の空似というわけでもなかった。

 名前も「シロとクロ」ではなく、それぞれの親に付けられた本名が別にあった。

 それなのに双子のような容姿をしている理由。

 それは、旧時代の雑誌に載っていたファッションモデルの顔に似せて同じ顔に整形手術をしたからだ。

 二人にとって一心同体であることの証。

 互いを真似るように振る舞う中で、言動も次第に統一されていった。

 欠陥能力の持ち主として冷遇されてきたクロと、唯一無二の能力ではあるものの条件が特殊なため持て余されていたシロ。

 自爆という戦い方は到底「東京軍」には認められず、訓練期間修了後に除隊した二人は標的を問わない殺し屋になった。

 訓練生時代に二人を馬鹿にしてきた、“優秀”な訓練生たちの組んだチームを丸ごと吹き飛ばしてやったのがきっかけだった。

 今まで能力を制限されてきた鬱憤を晴らすように、気に食わなかった奴らや新たな敵対者を殺していると「殺し屋」としての依頼が入ってくるようになったのだ。

 チームに属さない非合法の殺し屋「キラーツインズ」は、何度死んでもその回数だけやり直して数多くの標的を殺してきた。

 報復を受けることもあったが、それすらシロの力でやり直してクロが敵をまとめて吹き飛ばした。

 結局二人は「カラーズ」に敗北し、指導者「紅蓮」の命でカラレスの指揮下へ入ることを条件に生き延びることとなる。

『お前らみたいな馬鹿な目立ちたがりには派手な仕事を回してやる』というのはカラレスの弁。

 シロとクロというのはその時与えられた名前。

 金を遊び道具程度にしか思っていない二人は、カラレスから格安な報酬で危険な任務ばかり割り振られていることに気付いていない。

 危なっかしくて向こう見ずな二人を、カラレスはいつも厄介払いのつもりで送り出している。

 それがシロとクロに対する「カラーズ」の認識だった。

 *

「地下道互助会の者だが、何かあったのか?」

 地下鉄の住民を装った傭兵の一人が半壊した「Aショップ」の外から声をかける。

 地上から逃げ、仕方なく地下に住む者たちが重武装なのはおかしいので彼らが持っている武器は拳銃程度だった。

 クロの「とっておき」を除けばの話ではあるが。

「はあ? 見りゃわかるでしょうよ。店をぶっ壊されたの。今から被害総額を計算するから忙しいんだけど」

「そうか、俺たちに手伝えることがあれば何でも言ってくれ。男手が必要なこともあるだろうし……」

「はい嘘。今まで互助会が私にしてくれたことなんて何一つないんだから」

 互助会を騙る傭兵はすぐ亞矢に見破られてしまい、開き直ったかのように店に近づく。

 名前こそ「地下道互助会」ではあるが、本来の彼らは自分から助けを求める者にしか手を貸さない。

 地下には物資にも人員にも余裕がないからだ。

 そして男の手が店のドアにかかろうとしたその瞬間。

 戸口に立てかけてあっただけのドアが弾けるように吹き飛ぶ。

 それは最前列の傭兵の顔の骨を粉砕して、体の上へ覆いかぶさるように乗った。

 続いて放り捨てられるように店から飛び出し、ガラガラと音を立てて落下する鉄板。

 すかさず傭兵たちが店内に銃口を向ける。

 彼らが目標を視認するよりも早く、薄暗い店内から「何か」が立て続けに射出され、傭兵たちは次々と倒れ始める。

 店内から応戦しているのは専用の特注拳銃を両手に構えたルナ。

 対「極殺小隊」では出番のなかったその拳銃は、「引き寄せ」によって抉り取ったコンクリートの欠片を「反発」の力で射出しているのだ。

 拳銃の側面には「引き寄せ」た弾を取り込むための穴が開けてあった。

「ごめん。うちの部員が怪我しちゃって、あなたたちに八つ当たりしてる」

 ただ男たちは軽装とはいえども最低限の装備はしている。

 ルナは先ほど自らが「反発」で投げ飛ばした鉄板から鉄を「引き寄せ」て鉄の弾丸も生成していた。

 彼女は敵の生身の部分にはコンクリート弾を、服の上からしか狙えない相手には鉄の弾丸を的確に使い分け撃ち込んでいく。

 対して男たちからの銃弾は次々とルナの後方へと軌道が逸れる。

 これはルナが弾を「引き寄せ」続けて背後の一点に集めていることによるもの。

 そうやってルナの弾しか当たらない一方的な射撃戦を続けているうちに、傭兵たちが弾切れを起こし始める。

「悪いけど私に弾切れはないから」

 一方的に傭兵が倒れていく現状を見て、シロとクロは顔を見合わせほくそ笑んだ。

 倒れた傭兵たちの「配置」が二人にとって理想的な形だったからだ。

 傭兵たちが持つ、事前に抜いておいたクロの血液を詰めた缶。

 クロが「とっておき」と呼ぶ手製の爆弾。

 それを一斉に起爆してしまえば今度こそ敵を店ごと吹き飛ばすことができる。

「どうしてあなたたちが生きてるの?」

 最後の傭兵が倒れると、ルナは物陰でくすくすと笑う二人を見つけ冷たく問いかける。

 爆死した跡も近くにある、死んでいるはずの二人組。

「そんなに気になるんなら当てて見ればー?」

 能力を明かしていないシロが強気でルナを挑発する。

「正解者は抽選で地獄にご招待ー!」

「間違えても地獄行きにご招待ー!」

 勝利を確信した二人は、敵の生殺与奪を握っているという事実に興奮して過剰に煽り立てる。

「あっそ」

 ルナはただ冷たい態度を崩さずに短く答えた。

「あー!? 気取りやがってー!」

「おー!? 変な服着やがってー!」

 シロとクロはこの状況から何も知らない敵を爆殺するという至福の段階に移行することを決めた。

 余裕ぶった相手、ルナが吹き飛ぶ様を想像する二人。

「『キラーツインズ』……あなたたち、もうこの業界じゃ有名になりすぎたんだよ」

「バッカじゃん? 知っててケツまくって逃げなかったの? こいつバカすぎー! ねえシロ?」

 だが、クロの予想に反してシロは返事をしないまま崩れ落ちた。

 それを実現したルナの隠し玉。その正体は凝縮した空間に閉じ込められ、力を解放する場を求めていた無数の弾丸。

 つまりシロは傭兵たちが弾切れになるまで撃ち尽くした弾丸を全身に浴びたのだ。

 ルナによる「反発」と本来銃弾が持つ運動エネルギーの相乗効果により加速した超高速散弾は、少女の肉体を余すところなく貫いた。

 ルナの「引き寄せ」と「反発」だけで対処可能な爆弾人間クロはあえて後に回し、シロから先に無力化したのだ。

「待っててシロ! すぐやり直すから……!」

 シロが「赤い糸」を発動できるうちに、両者が確実に死ねる方法をクロは半ば錯乱した思考で考える。

 傭兵に持たせた血液爆弾を起動すれば確実に敵は吹き飛ぶが、シロとクロの二人を巻き込んで確実に死に至らしめるという保証がない。

 クロの脳裏によぎったのは自爆という手段。

 自爆を決行しようとしたクロは、寸前で一つの可能性に突き当たる。

 爆発の威力次第では地下鉄のトンネルが崩落して「復活地点」も埋まってしまうという、致命的な問題。

(どうしようどうしようどうしよう……!)

 極限状態でクロの心臓が激しく脈打つ。

(これだ……!)

「シロ! 今すぐ助けるから……」

 クロは目を閉じて鼓動の中心を意識する。

 彼女にとって臓器を爆発させるという試みは初めてだった。

 そしてクロがシロに覆いかぶさる。このまま心臓が爆発すればクロは死に、その余波で瀕死のシロも死ぬ。

 その後に体勢を立て直して、作戦を続行するか撤退するかを決めればいい。

 これこそクロが絶体絶命の場面で思いついた打開策。

 爆発の寸前にシロが何かを言おうとして必死で口を動かす、クロは顔を近づけそれを聞き取ろうとした。

「クロ……ダメ……」

 結局何がダメなのかわからないまま、クロは心臓を爆発させて死んだ。

 そしてシロだけがルナの目の前で蘇り、額に銃口を向けられている。

「言ったでしょ。あなたたちは有名になりすぎたって。能力も、手口も」

 シロの「自らの一部を切り離した場所をチェックポイントとし、自身ともう一人までその地点に復活することのできる」力。

 既にこの発動条件は「キラーツインズ」として暴れまわっていた時期には公然のものとなっていた。

 シロを撃ち抜いた際に飛び散った彼女の肉片を、ルナは握り込んだ拳から落とす。

 クロが自爆する前「引き寄せ」によって自身の一部がルナの手に渡ったのをシロは確かに見ていた。

 ルナの手とシロの肉片の接触。

 これで事前に小指を切り離したことによる「チェックポイント」は上書きされる。

 故にシロの蘇生は単独のものとなり、それによりクロの蘇生はもう叶わなくなった。

「こんなの嘘。全部嘘。嘘、嘘、嘘……」

 弾丸が肉を抉る音と共にシロは倒れ「キラーツインズ」は終わりを迎えた。


次のエピソードへ進む 15話 はじまり


みんなのリアクション

 武装した傭兵たちを従えて再度「Aショップ」襲撃に動き出すシロとクロ。
 彼女らを指揮するカラレスは、クロの爆発で地下鉄の一画ごと「便利屋コロシ部」を埋め立ててしまうつもりだった。
 質量という単純なかつ圧倒的な力の前には、並大抵の能力では対抗することはできない。
 そしてシロには作戦成功まで何度でも「やり直す」力がある。
 だからそれ以上の戦力はあえて送り込まなかった。
 崩落によってルナたちが手にしたチップが壊れてもいいし、運良く破損しなければ「カラーズ」が回収すればいい。
 彼ら「カラーズ」が信奉している大量破壊者・柊陽向のデータではあるが、他人の手に渡らなければそれでいいと考えていた。
 昨晩「ヤマト陸軍」の息のかかった「極殺小隊」が香川を狙い、護衛に就いた「便利屋コロシ部」に敗北した情報は既にカラレスの耳に入っている。
 そしてカラレスはルナが陽向の妹とも知らず抹殺しにかかるのだった。
 *
 二人の少女が地下鉄のレールの上を進む。
 瓜二つ……というよりかはほくろの位置すら同じ、まるで複写したかのような顔が並んだ。
 ただ彼女たちに血縁関係はなかったし、他人の空似というわけでもなかった。
 名前も「シロとクロ」ではなく、それぞれの親に付けられた本名が別にあった。
 それなのに双子のような容姿をしている理由。
 それは、旧時代の雑誌に載っていたファッションモデルの顔に似せて同じ顔に整形手術をしたからだ。
 二人にとって一心同体であることの証。
 互いを真似るように振る舞う中で、言動も次第に統一されていった。
 欠陥能力の持ち主として冷遇されてきたクロと、唯一無二の能力ではあるものの条件が特殊なため持て余されていたシロ。
 自爆という戦い方は到底「東京軍」には認められず、訓練期間修了後に除隊した二人は標的を問わない殺し屋になった。
 訓練生時代に二人を馬鹿にしてきた、“優秀”な訓練生たちの組んだチームを丸ごと吹き飛ばしてやったのがきっかけだった。
 今まで能力を制限されてきた鬱憤を晴らすように、気に食わなかった奴らや新たな敵対者を殺していると「殺し屋」としての依頼が入ってくるようになったのだ。
 チームに属さない非合法の殺し屋「キラーツインズ」は、何度死んでもその回数だけやり直して数多くの標的を殺してきた。
 報復を受けることもあったが、それすらシロの力でやり直してクロが敵をまとめて吹き飛ばした。
 結局二人は「カラーズ」に敗北し、指導者「紅蓮」の命でカラレスの指揮下へ入ることを条件に生き延びることとなる。
『お前らみたいな馬鹿な目立ちたがりには派手な仕事を回してやる』というのはカラレスの弁。
 シロとクロというのはその時与えられた名前。
 金を遊び道具程度にしか思っていない二人は、カラレスから格安な報酬で危険な任務ばかり割り振られていることに気付いていない。
 危なっかしくて向こう見ずな二人を、カラレスはいつも厄介払いのつもりで送り出している。
 それがシロとクロに対する「カラーズ」の認識だった。
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「地下道互助会の者だが、何かあったのか?」
 地下鉄の住民を装った傭兵の一人が半壊した「Aショップ」の外から声をかける。
 地上から逃げ、仕方なく地下に住む者たちが重武装なのはおかしいので彼らが持っている武器は拳銃程度だった。
 クロの「とっておき」を除けばの話ではあるが。
「はあ? 見りゃわかるでしょうよ。店をぶっ壊されたの。今から被害総額を計算するから忙しいんだけど」
「そうか、俺たちに手伝えることがあれば何でも言ってくれ。男手が必要なこともあるだろうし……」
「はい嘘。今まで互助会が私にしてくれたことなんて何一つないんだから」
 互助会を騙る傭兵はすぐ亞矢に見破られてしまい、開き直ったかのように店に近づく。
 名前こそ「地下道互助会」ではあるが、本来の彼らは自分から助けを求める者にしか手を貸さない。
 地下には物資にも人員にも余裕がないからだ。
 そして男の手が店のドアにかかろうとしたその瞬間。
 戸口に立てかけてあっただけのドアが弾けるように吹き飛ぶ。
 それは最前列の傭兵の顔の骨を粉砕して、体の上へ覆いかぶさるように乗った。
 続いて放り捨てられるように店から飛び出し、ガラガラと音を立てて落下する鉄板。
 すかさず傭兵たちが店内に銃口を向ける。
 彼らが目標を視認するよりも早く、薄暗い店内から「何か」が立て続けに射出され、傭兵たちは次々と倒れ始める。
 店内から応戦しているのは専用の特注拳銃を両手に構えたルナ。
 対「極殺小隊」では出番のなかったその拳銃は、「引き寄せ」によって抉り取ったコンクリートの欠片を「反発」の力で射出しているのだ。
 拳銃の側面には「引き寄せ」た弾を取り込むための穴が開けてあった。
「ごめん。うちの部員が怪我しちゃって、あなたたちに八つ当たりしてる」
 ただ男たちは軽装とはいえども最低限の装備はしている。
 ルナは先ほど自らが「反発」で投げ飛ばした鉄板から鉄を「引き寄せ」て鉄の弾丸も生成していた。
 彼女は敵の生身の部分にはコンクリート弾を、服の上からしか狙えない相手には鉄の弾丸を的確に使い分け撃ち込んでいく。
 対して男たちからの銃弾は次々とルナの後方へと軌道が逸れる。
 これはルナが弾を「引き寄せ」続けて背後の一点に集めていることによるもの。
 そうやってルナの弾しか当たらない一方的な射撃戦を続けているうちに、傭兵たちが弾切れを起こし始める。
「悪いけど私に弾切れはないから」
 一方的に傭兵が倒れていく現状を見て、シロとクロは顔を見合わせほくそ笑んだ。
 倒れた傭兵たちの「配置」が二人にとって理想的な形だったからだ。
 傭兵たちが持つ、事前に抜いておいたクロの血液を詰めた缶。
 クロが「とっておき」と呼ぶ手製の爆弾。
 それを一斉に起爆してしまえば今度こそ敵を店ごと吹き飛ばすことができる。
「どうしてあなたたちが生きてるの?」
 最後の傭兵が倒れると、ルナは物陰でくすくすと笑う二人を見つけ冷たく問いかける。
 爆死した跡も近くにある、死んでいるはずの二人組。
「そんなに気になるんなら当てて見ればー?」
 能力を明かしていないシロが強気でルナを挑発する。
「正解者は抽選で地獄にご招待ー!」
「間違えても地獄行きにご招待ー!」
 勝利を確信した二人は、敵の生殺与奪を握っているという事実に興奮して過剰に煽り立てる。
「あっそ」
 ルナはただ冷たい態度を崩さずに短く答えた。
「あー!? 気取りやがってー!」
「おー!? 変な服着やがってー!」
 シロとクロはこの状況から何も知らない敵を爆殺するという至福の段階に移行することを決めた。
 余裕ぶった相手、ルナが吹き飛ぶ様を想像する二人。
「『キラーツインズ』……あなたたち、もうこの業界じゃ有名になりすぎたんだよ」
「バッカじゃん? 知っててケツまくって逃げなかったの? こいつバカすぎー! ねえシロ?」
 だが、クロの予想に反してシロは返事をしないまま崩れ落ちた。
 それを実現したルナの隠し玉。その正体は凝縮した空間に閉じ込められ、力を解放する場を求めていた無数の弾丸。
 つまりシロは傭兵たちが弾切れになるまで撃ち尽くした弾丸を全身に浴びたのだ。
 ルナによる「反発」と本来銃弾が持つ運動エネルギーの相乗効果により加速した超高速散弾は、少女の肉体を余すところなく貫いた。
 ルナの「引き寄せ」と「反発」だけで対処可能な爆弾人間クロはあえて後に回し、シロから先に無力化したのだ。
「待っててシロ! すぐやり直すから……!」
 シロが「赤い糸」を発動できるうちに、両者が確実に死ねる方法をクロは半ば錯乱した思考で考える。
 傭兵に持たせた血液爆弾を起動すれば確実に敵は吹き飛ぶが、シロとクロの二人を巻き込んで確実に死に至らしめるという保証がない。
 クロの脳裏によぎったのは自爆という手段。
 自爆を決行しようとしたクロは、寸前で一つの可能性に突き当たる。
 爆発の威力次第では地下鉄のトンネルが崩落して「復活地点」も埋まってしまうという、致命的な問題。
(どうしようどうしようどうしよう……!)
 極限状態でクロの心臓が激しく脈打つ。
(これだ……!)
「シロ! 今すぐ助けるから……」
 クロは目を閉じて鼓動の中心を意識する。
 彼女にとって臓器を爆発させるという試みは初めてだった。
 そしてクロがシロに覆いかぶさる。このまま心臓が爆発すればクロは死に、その余波で瀕死のシロも死ぬ。
 その後に体勢を立て直して、作戦を続行するか撤退するかを決めればいい。
 これこそクロが絶体絶命の場面で思いついた打開策。
 爆発の寸前にシロが何かを言おうとして必死で口を動かす、クロは顔を近づけそれを聞き取ろうとした。
「クロ……ダメ……」
 結局何がダメなのかわからないまま、クロは心臓を爆発させて死んだ。
 そしてシロだけがルナの目の前で蘇り、額に銃口を向けられている。
「言ったでしょ。あなたたちは有名になりすぎたって。能力も、手口も」
 シロの「自らの一部を切り離した場所をチェックポイントとし、自身ともう一人までその地点に復活することのできる」力。
 既にこの発動条件は「キラーツインズ」として暴れまわっていた時期には公然のものとなっていた。
 シロを撃ち抜いた際に飛び散った彼女の肉片を、ルナは握り込んだ拳から落とす。
 クロが自爆する前「引き寄せ」によって自身の一部がルナの手に渡ったのをシロは確かに見ていた。
 ルナの手とシロの肉片の接触。
 これで事前に小指を切り離したことによる「チェックポイント」は上書きされる。
 故にシロの蘇生は単独のものとなり、それによりクロの蘇生はもう叶わなくなった。
「こんなの嘘。全部嘘。嘘、嘘、嘘……」
 弾丸が肉を抉る音と共にシロは倒れ「キラーツインズ」は終わりを迎えた。