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 一討猟団(いっとうりょうだん)の所属していた関東超人連合では「狂裂逝男(くるいざき ゆきお)」の行動が問題視されていた。

 関東最大の「超人」勢力であるという看板に泥を塗られている状況だからだ。

 それも野良の「超人」一人の手によって。

 故に今回は彼のためだけのための会議が開かれている。

 逝男に殺された「超人」は一討猟団だけではない。

 ビリビリ・キッド、殺殺(せっさ)タクマ等複数の所属「超人」たちが逝男の手によって殺されている。

 この一件で勢いを失い始めた関東超人連合から離脱して、独立勢力を立ち上げる「超人」まで現れる始末。

 このまま放置しては組織の面子に関わる。そう考えた組織の上層部は二名の超人を派遣することを決定した。

 レディー・モーニングスター。烈怒騎士(レッドナイト)

 二人とも歴戦の「超人」であり、優れた能力の持ち主だった。



 ナポリタンと一討猟団のことなど忘れ、住み家で鍋焼きうどんを食べている逝男。

 その住み家の上空から十を超える気配が接近してくるのを感じた。

 「超人」のものと思えるのは精々二つ、残りは「ぶたにんげん」だろうと彼は考える。

 彼の住み家はボロボロの工場跡である。

 食以外に頓着のない彼はスーパーやコンビニに近いというだけで廃墟同然の場所に寝泊まりしている。

 かつて命までは取らなかった「超人」が報復に来たことはあったが、ここまでの規模の襲撃は初めてだった。

 気配を感知してから数秒後、次々と「ぶたにんげん」が屋根を破って落ちてくる。

 肉塊と化したそれらには赤いランプの点滅するリュックが背負わされていた。

 次々と爆発する「ぶたにんげん」たち。

 とっさに逝男は食べかけの鍋焼きうどんを隠そうとするが、爆風で彼自身の身体も「ぶたにんげん」同様ぐちゃぐちゃになる。

 だが一秒もあれば回復するのが彼の能力である。

 しかし爆風で大きく二つに別れた彼の身体を二本の鎖が絡めとる。

 その先端には棘の生えた鉄球が付いており、鎖の大本が「モーニングスター」という武器であることを物語る。

 それは「超人」レディー・モーニングスターによる変幻自在の武器である。

 時に鉄球を人間ごと圧し潰すサイズに拡大することもできる。鎖部分も変幻自在だ。

 そして仮面で顔を覆ったボンデージ姿の妖艶なレディー・モーニングスターは、再生を始めた二つの肉塊が一体化することのないように渾身の力を込めてそれを阻止する。

「えっと、このままこいつを本部に持って帰ればいいんでしたっけ?」

 レディー・モーニングスターに話しかけるのは烈怒騎士。

 全身を甲冑で覆った人物。声からして男だ。

「無理無理! くっつかないようにするので精一杯だから! 殺し切るしかないって!」

「……ああ!? 聞いてた話と違うじゃねえか! 言ってたよなあ! 捕獲任務だってよお! おい! 適当抜かしてるとお前から先に殺しちまってもいいんだぜ!」

 突如として態度を豹変させる烈怒騎士。

「てめえ、後で犯してぶっ殺すからな! アバズレ!」

 烈怒騎士は怒りをエネルギーにして全身を強化する「超人」である。

 だが戦いが終わって怒りを放出し終わると元の礼儀正しい性格に戻る。

 それを知るレディー・モーニングスターは適当にあしらう。

「いいから! コイツがくっつくのを止めてよ! 相手なら今度してあげるからさあ!」

 それぞれ腕の復活した半身が一つに戻ろうと、鎖の束縛に抵抗する。

 それを見た烈怒騎士は今度は怒りの標的を逝男に向ける。

「めんどくせえ仕事押し付けやがって! カスが!」

 烈怒騎士が全身を苛む怒りのエネルギーを一度に放出する。

 爆発にも似たそのエネルギー波は逝男の肉塊を消し飛ばした。

 狂裂逝男の残骸は最早跡形もない。

「ええと、消えちゃいましたけど。いいんでしたっけ?」

 素の性格に戻った烈怒騎士がレディー・モーニングスターに問う。

「あのさあ、もうアンタと仕事したくないんだけど」

「はあ」

 だが、撤収の作業に入る二人の背後に突然複数の「超人」の反応が現れた。

 すかさず振り返ると、そこには十人ほどに増殖した狂裂逝男の姿があったのだ。

 油断しきっていた二人は何か言う間もなく、数の暴力によって蹂躙され死んだ。

 逝男は一秒あればミンチからでも元通りに戻れる。

 形さえ残さない小さな肉片からでもそれは可能だ。

 そんな彼を粉々にした結果、それぞれの肉片が再生し逝男の数が増えてしまったのだ。

「こうなるといくら飯があっても足らんから嫌なんだけどな」

「いい加減面倒だ。もう潰すか、関東超人連合(カンチョー)

「ステーキが食いてえなあ」

 自分同士で会話をしながらさらに今にも崩れそうな工場跡地を出る逝男たち。

 対策を間違ったあまり、一人相手取るだけで始末に負えない男が十倍以上の数に増えてしまった。

 関東超人連合の崩壊までそう時間はかからなかった。

 そしてこの争いに巻き込まれ死んだ「ぶたにんげん」の数は一万人を超えたのだった。



 そうして今日も狂裂逝男はコンビニ店員の「ぶたにんげん」を殺し、カップ麺を箱ごと盗み出していた。

 彼は関東超人連合戦後に「誰を本物として残すか」の戦いに生き残った個体であり、手の甲にはマジックペンで書かれ消えかかった「8」の字がある。

 狂裂逝男という存在は自らを捕食することによって増殖した自分自身の数を減らすことができた。

 故に自分同士で食べ物を奪い合う状況を良しとしなかった彼らは自身が最後の一人になるために殺し合ったのだ。

「あっ……お湯入れてくるの忘れた」

 そう言うと強盗をしたばかりのコンビニに再び狂裂逝男は戻っていくのだった。

 こうして逝男の日常は続く。




みんなのリアクション

 |一討猟団《いっとうりょうだん》の所属していた関東超人連合では「|狂裂逝男《くるいざき ゆきお》」の行動が問題視されていた。
 関東最大の「超人」勢力であるという看板に泥を塗られている状況だからだ。
 それも野良の「超人」一人の手によって。
 故に今回は彼のためだけのための会議が開かれている。
 逝男に殺された「超人」は一討猟団だけではない。
 ビリビリ・キッド、|殺殺《せっさ》タクマ等複数の所属「超人」たちが逝男の手によって殺されている。
 この一件で勢いを失い始めた関東超人連合から離脱して、独立勢力を立ち上げる「超人」まで現れる始末。
 このまま放置しては組織の面子に関わる。そう考えた組織の上層部は二名の超人を派遣することを決定した。
 レディー・モーニングスター。|烈怒騎士《レッドナイト》。
 二人とも歴戦の「超人」であり、優れた能力の持ち主だった。
 ナポリタンと一討猟団のことなど忘れ、住み家で鍋焼きうどんを食べている逝男。
 その住み家の上空から十を超える気配が接近してくるのを感じた。
 「超人」のものと思えるのは精々二つ、残りは「ぶたにんげん」だろうと彼は考える。
 彼の住み家はボロボロの工場跡である。
 食以外に頓着のない彼はスーパーやコンビニに近いというだけで廃墟同然の場所に寝泊まりしている。
 かつて命までは取らなかった「超人」が報復に来たことはあったが、ここまでの規模の襲撃は初めてだった。
 気配を感知してから数秒後、次々と「ぶたにんげん」が屋根を破って落ちてくる。
 肉塊と化したそれらには赤いランプの点滅するリュックが背負わされていた。
 次々と爆発する「ぶたにんげん」たち。
 とっさに逝男は食べかけの鍋焼きうどんを隠そうとするが、爆風で彼自身の身体も「ぶたにんげん」同様ぐちゃぐちゃになる。
 だが一秒もあれば回復するのが彼の能力である。
 しかし爆風で大きく二つに別れた彼の身体を二本の鎖が絡めとる。
 その先端には棘の生えた鉄球が付いており、鎖の大本が「モーニングスター」という武器であることを物語る。
 それは「超人」レディー・モーニングスターによる変幻自在の武器である。
 時に鉄球を人間ごと圧し潰すサイズに拡大することもできる。鎖部分も変幻自在だ。
 そして仮面で顔を覆ったボンデージ姿の妖艶なレディー・モーニングスターは、再生を始めた二つの肉塊が一体化することのないように渾身の力を込めてそれを阻止する。
「えっと、このままこいつを本部に持って帰ればいいんでしたっけ?」
 レディー・モーニングスターに話しかけるのは烈怒騎士。
 全身を甲冑で覆った人物。声からして男だ。
「無理無理! くっつかないようにするので精一杯だから! 殺し切るしかないって!」
「……ああ!? 聞いてた話と違うじゃねえか! 言ってたよなあ! 捕獲任務だってよお! おい! 適当抜かしてるとお前から先に殺しちまってもいいんだぜ!」
 突如として態度を豹変させる烈怒騎士。
「てめえ、後で犯してぶっ殺すからな! アバズレ!」
 烈怒騎士は怒りをエネルギーにして全身を強化する「超人」である。
 だが戦いが終わって怒りを放出し終わると元の礼儀正しい性格に戻る。
 それを知るレディー・モーニングスターは適当にあしらう。
「いいから! コイツがくっつくのを止めてよ! 相手なら今度してあげるからさあ!」
 それぞれ腕の復活した半身が一つに戻ろうと、鎖の束縛に抵抗する。
 それを見た烈怒騎士は今度は怒りの標的を逝男に向ける。
「めんどくせえ仕事押し付けやがって! カスが!」
 烈怒騎士が全身を苛む怒りのエネルギーを一度に放出する。
 爆発にも似たそのエネルギー波は逝男の肉塊を消し飛ばした。
 狂裂逝男の残骸は最早跡形もない。
「ええと、消えちゃいましたけど。いいんでしたっけ?」
 素の性格に戻った烈怒騎士がレディー・モーニングスターに問う。
「あのさあ、もうアンタと仕事したくないんだけど」
「はあ」
 だが、撤収の作業に入る二人の背後に突然複数の「超人」の反応が現れた。
 すかさず振り返ると、そこには十人ほどに増殖した狂裂逝男の姿があったのだ。
 油断しきっていた二人は何か言う間もなく、数の暴力によって蹂躙され死んだ。
 逝男は一秒あればミンチからでも元通りに戻れる。
 形さえ残さない小さな肉片からでもそれは可能だ。
 そんな彼を粉々にした結果、それぞれの肉片が再生し逝男の数が増えてしまったのだ。
「こうなるといくら飯があっても足らんから嫌なんだけどな」
「いい加減面倒だ。もう潰すか、|関東超人連合《カンチョー》」
「ステーキが食いてえなあ」
 自分同士で会話をしながらさらに今にも崩れそうな工場跡地を出る逝男たち。
 対策を間違ったあまり、一人相手取るだけで始末に負えない男が十倍以上の数に増えてしまった。
 関東超人連合の崩壊までそう時間はかからなかった。
 そしてこの争いに巻き込まれ死んだ「ぶたにんげん」の数は一万人を超えたのだった。
 そうして今日も狂裂逝男はコンビニ店員の「ぶたにんげん」を殺し、カップ麺を箱ごと盗み出していた。
 彼は関東超人連合戦後に「誰を本物として残すか」の戦いに生き残った個体であり、手の甲にはマジックペンで書かれ消えかかった「8」の字がある。
 狂裂逝男という存在は自らを捕食することによって増殖した自分自身の数を減らすことができた。
 故に自分同士で食べ物を奪い合う状況を良しとしなかった彼らは自身が最後の一人になるために殺し合ったのだ。
「あっ……お湯入れてくるの忘れた」
 そう言うと強盗をしたばかりのコンビニに再び狂裂逝男は戻っていくのだった。
 こうして逝男の日常は続く。


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