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第37話 純白に身を包んで、愛を誓う

ー/ー



「うぅぅ、お腹痛い……」

「何、言ってんのよシャロン」


 シャロンは今、胃痛に襲われていた。そんな彼女をカノアが呆れながら見つめている。

 現在、シャロンは長の家で花嫁衣装の着付けを施されていた。カノアがドレスを整え、オーキュペテーが髪をアレンジしている。

 今日はシャロンとジークハルトの結婚式の日だ。王に認められて、ジークハルトは無事にハルピュイアの里の住人となった。

 それからは二人の結婚式のために里総出で準備をして、こうして当日を迎えている。

 シャロンは姿見に映る自分の姿を確認する。純白の肩を出したマーメイドラインのドレスは自分でも驚くほどに似合っていた。

 きらきらと宝石が散りばめられている煌びやかな花嫁衣裳は、自分が着ていいものなのかと思ってしまうほどの完成度だ。

 これを成人の儀をする前のハルピュイアたちが作ってくれたのだ。

 宝石は王であるムジラークから「少しはこちらも手伝わせてほしい」ということで貰ったものを使っている。

 生地はマリーナからの贈り物で、「絶対にお姉様は白が似合うわ!」と、彼女が真剣に選んでくれたものだ。

 この花嫁衣裳にはたくさんの想いが籠められている。

 それは嬉しいことなのだが、あまりにも緊張してしまって、シャロンは胃痛を起こしてしまっていた。


「シャロンちゃん、すっごく可愛くて綺麗だから大丈夫よ!」

「そうですけどぉ……国王と姫様がお忍びで来ているわけでぇ」

「そりゃあ、見にくるでしょ」


 自分の息子、兄の結婚式なのだから。カノアの冷静な突っ込みにその通りですとしかシャロンは返せない。

 国王ムジラークと姫マリーナはジークハルトとシャロンの結婚式のためにお忍びでハルピュイアの里を訪れていた。

 里の規則によって外で結婚式を挙げることはできないので、特別な許可を得て二人は護衛を連れてわざわざ足を運んでくれたのだ。

 あれからフィルクスは王位継承権をはく奪され、重い処罰を受けた。

 詳しくは教えてはくれなかったが、表舞台に立つこともシャロンが会うこともないだろうと聞いている。

 それだけで、どれほどの罰だったのか察することができた。

 王位継承権は第二王子であるハーラルトへと渡った。

 彼も結婚式に参加したかったのだが、王都を離れる国王の代わりに公務をするために来てはいない。

 ただ、祝いの品としてブルーローズを送ってくれた。

 ハルピュイアの結婚式で花冠を作るというのを聞いて、「ブルーローズが一番、似合う」ということで、使ってくれと。

 オーキュペテーはシャロンのくせのある髪を緩く巻いてから、ブルーローズの花冠を被せてくれた。


「はい、終わり。シャロンちゃん、大丈夫だから胸を張って」


 とっても素敵な花嫁よ。にこりとオーキュペテーが微笑んだ。シャロンは彼女からの心からの祝福の言葉にうんと頷く。

 姿見に映る純白のドレス姿の自分の姿をしっかりと目に焼き付けてから部屋を出た。

 長の家から会場となっている広場までの道のりをカノアとオーキュペテーに付き添われながら歩く。その間に気持ちを落ち着かせて、シャロンは舞台に上がった。

 舞台で待っていたジークハルトが目を瞬かせる。

 その様子におかしなところがあっただろうかとシャロンが衣服を確認にしていれば、彼は「いや、おかしいとかではない」と答える。


「とても似合っていたんだ」


 とても綺麗で、驚いた。ジークハルトの言葉にシャロンは照れる。何せ、彼が真面目な顔で言うものだから。

 そんな二人に会場に集まった里の住人たちから祝福の声がかけられる。舞台から広場を見渡してみれば、ムジラークとマリーナが前の席で拍手してくれていた。


「流石、あたしの娘だね!」

「そんな大きな声を出したらシャロンが緊張するだろう」

「何を言っている。あたしの娘なのだから褒めて当然だろう!」


 前の席から聞こえる両親の大きな声にシャロンはまたやってるなと笑ってしまった。それでなんだか緊張がゆるむ。

 マリーナが「綺麗よ、お姉様!」と負けずに声をかけてくれていた。


「では、式を始めようか」


 アエローの言葉にジークハルトがそっと出を差し出す。


「シャロン。共に居よう」

「はい!」


 シャロンは差し出された手を握った、優しく温かく。にこやかに晴れやかに舞台に立てば皆が皆、拍手を贈ってくれた。夫婦となる二人を祝して。

 少し前のことをシャロンは思い出していた。

 転生してきたことを、恋愛なんて無理だと、ジークハルトを拾ってしまいこれからやっていけるかと不安だったことを。

 けれど、彼と出逢って今は良かったと思った。共に過ごして、愛することを、愛されることを知れたから

 今は不安などない。だって、ジークハルトが傍にいてくれるのだから。


「花冠の授与はシャロンの意向によって、成人の儀を迎える前のハルピュイアの中から選ばれた者に与えられることになった」


 アエローの言葉に一人のハルピュイアが舞台に上がってきた。

 少し幼く見える愛らしい容姿に良く似合う、淡い紫の髪を肩で切り揃えているハルピュイアが、緊張したように立っている。

 そんな様子にシャロンが微笑みかけながら花冠を外して、彼女に被せてあげた。心配しなくていいわと。


「私の幸せをあなたにも」

「あの、わたしにも現れるでしょうか?」


 シャロンさんのように花嫁になれますか。不安げに問う彼女にシャロンさんは「大丈夫」と頭を撫でてやった。


「きっと素敵な花嫁になれるよ。私もね、あなたと同じように花冠を貰ったの。花嫁の祝福があったのだから」


 大丈夫、きっとあなたの前にも現れるわ、素敵な存在が。シャロンはそう言って彼女を抱きしめた、安心させるように。

 花冠を貰ったハルピュイアは「はい!」と元気な声で返事をして、微笑み返してくれた。その笑みに不安はなくて。


「新たな夫婦に祝福を!」


 ケライノーの掛け声と共にハルピュイアたちが花々を撒いて、沢山の拍手が響き渡る。シャロンは涙がこぼれてしまそうになる、幸せを感じて。


「シャロン」


 名前を呼ばれて顔を上げれば、ジークハルトの温かな眼が。あぁ、愛されている。

 これは現実なんだとシャロンは実感して彼に抱き着いた。


END



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「うぅぅ、お腹痛い……」
「何、言ってんのよシャロン」
 シャロンは今、胃痛に襲われていた。そんな彼女をカノアが呆れながら見つめている。
 現在、シャロンは長の家で花嫁衣装の着付けを施されていた。カノアがドレスを整え、オーキュペテーが髪をアレンジしている。
 今日はシャロンとジークハルトの結婚式の日だ。王に認められて、ジークハルトは無事にハルピュイアの里の住人となった。
 それからは二人の結婚式のために里総出で準備をして、こうして当日を迎えている。
 シャロンは姿見に映る自分の姿を確認する。純白の肩を出したマーメイドラインのドレスは自分でも驚くほどに似合っていた。
 きらきらと宝石が散りばめられている煌びやかな花嫁衣裳は、自分が着ていいものなのかと思ってしまうほどの完成度だ。
 これを成人の儀をする前のハルピュイアたちが作ってくれたのだ。
 宝石は王であるムジラークから「少しはこちらも手伝わせてほしい」ということで貰ったものを使っている。
 生地はマリーナからの贈り物で、「絶対にお姉様は白が似合うわ!」と、彼女が真剣に選んでくれたものだ。
 この花嫁衣裳にはたくさんの想いが籠められている。
 それは嬉しいことなのだが、あまりにも緊張してしまって、シャロンは胃痛を起こしてしまっていた。
「シャロンちゃん、すっごく可愛くて綺麗だから大丈夫よ!」
「そうですけどぉ……国王と姫様がお忍びで来ているわけでぇ」
「そりゃあ、見にくるでしょ」
 自分の息子、兄の結婚式なのだから。カノアの冷静な突っ込みにその通りですとしかシャロンは返せない。
 国王ムジラークと姫マリーナはジークハルトとシャロンの結婚式のためにお忍びでハルピュイアの里を訪れていた。
 里の規則によって外で結婚式を挙げることはできないので、特別な許可を得て二人は護衛を連れてわざわざ足を運んでくれたのだ。
 あれからフィルクスは王位継承権をはく奪され、重い処罰を受けた。
 詳しくは教えてはくれなかったが、表舞台に立つこともシャロンが会うこともないだろうと聞いている。
 それだけで、どれほどの罰だったのか察することができた。
 王位継承権は第二王子であるハーラルトへと渡った。
 彼も結婚式に参加したかったのだが、王都を離れる国王の代わりに公務をするために来てはいない。
 ただ、祝いの品としてブルーローズを送ってくれた。
 ハルピュイアの結婚式で花冠を作るというのを聞いて、「ブルーローズが一番、似合う」ということで、使ってくれと。
 オーキュペテーはシャロンのくせのある髪を緩く巻いてから、ブルーローズの花冠を被せてくれた。
「はい、終わり。シャロンちゃん、大丈夫だから胸を張って」
 とっても素敵な花嫁よ。にこりとオーキュペテーが微笑んだ。シャロンは彼女からの心からの祝福の言葉にうんと頷く。
 姿見に映る純白のドレス姿の自分の姿をしっかりと目に焼き付けてから部屋を出た。
 長の家から会場となっている広場までの道のりをカノアとオーキュペテーに付き添われながら歩く。その間に気持ちを落ち着かせて、シャロンは舞台に上がった。
 舞台で待っていたジークハルトが目を瞬かせる。
 その様子におかしなところがあっただろうかとシャロンが衣服を確認にしていれば、彼は「いや、おかしいとかではない」と答える。
「とても似合っていたんだ」
 とても綺麗で、驚いた。ジークハルトの言葉にシャロンは照れる。何せ、彼が真面目な顔で言うものだから。
 そんな二人に会場に集まった里の住人たちから祝福の声がかけられる。舞台から広場を見渡してみれば、ムジラークとマリーナが前の席で拍手してくれていた。
「流石、あたしの娘だね!」
「そんな大きな声を出したらシャロンが緊張するだろう」
「何を言っている。あたしの娘なのだから褒めて当然だろう!」
 前の席から聞こえる両親の大きな声にシャロンはまたやってるなと笑ってしまった。それでなんだか緊張がゆるむ。
 マリーナが「綺麗よ、お姉様!」と負けずに声をかけてくれていた。
「では、式を始めようか」
 アエローの言葉にジークハルトがそっと出を差し出す。
「シャロン。共に居よう」
「はい!」
 シャロンは差し出された手を握った、優しく温かく。にこやかに晴れやかに舞台に立てば皆が皆、拍手を贈ってくれた。夫婦となる二人を祝して。
 少し前のことをシャロンは思い出していた。
 転生してきたことを、恋愛なんて無理だと、ジークハルトを拾ってしまいこれからやっていけるかと不安だったことを。
 けれど、彼と出逢って今は良かったと思った。共に過ごして、愛することを、愛されることを知れたから
 今は不安などない。だって、ジークハルトが傍にいてくれるのだから。
「花冠の授与はシャロンの意向によって、成人の儀を迎える前のハルピュイアの中から選ばれた者に与えられることになった」
 アエローの言葉に一人のハルピュイアが舞台に上がってきた。
 少し幼く見える愛らしい容姿に良く似合う、淡い紫の髪を肩で切り揃えているハルピュイアが、緊張したように立っている。
 そんな様子にシャロンが微笑みかけながら花冠を外して、彼女に被せてあげた。心配しなくていいわと。
「私の幸せをあなたにも」
「あの、わたしにも現れるでしょうか?」
 シャロンさんのように花嫁になれますか。不安げに問う彼女にシャロンさんは「大丈夫」と頭を撫でてやった。
「きっと素敵な花嫁になれるよ。私もね、あなたと同じように花冠を貰ったの。花嫁の祝福があったのだから」
 大丈夫、きっとあなたの前にも現れるわ、素敵な存在が。シャロンはそう言って彼女を抱きしめた、安心させるように。
 花冠を貰ったハルピュイアは「はい!」と元気な声で返事をして、微笑み返してくれた。その笑みに不安はなくて。
「新たな夫婦に祝福を!」
 ケライノーの掛け声と共にハルピュイアたちが花々を撒いて、沢山の拍手が響き渡る。シャロンは涙がこぼれてしまそうになる、幸せを感じて。
「シャロン」
 名前を呼ばれて顔を上げれば、ジークハルトの温かな眼が。あぁ、愛されている。
 これは現実なんだとシャロンは実感して彼に抱き着いた。
END