君の最上級のぬくもりと、最大級の心配。
ー/ー「海勢頭授業さぼってんじゃんw」
黒板に大きく自習と書かれた教室では、海勢頭君が授業に参加しないことで愚痴を言っている男子や女子の声で埋もれていた。
「海勢頭君、どうしたんだろう。」
私は後ろの席にいる小羽玖にそっと耳打ちした。
「お腹痛いとかでトイレにでも行ったとか。そんな重大なことではないんじゃない?海勢頭君の事だし。」
「そ、っか」
いや、確かにさっきあんなに酷いこと言われたんだし。一颯君は私が一颯君の彼女だ宣言するし。ちょっと、衝撃的だったな。
「ね、一颯が守ってくれたんでしょ?穂稀を海勢頭君から。」
「う、ちょ、」
もう、はずいから変な声出たじゃんか!さっきまでの事、小羽玖に教えなかったら良かったかも。さすがにハグしたまでは言ってないけどね。言うわけないじゃん。
「確かにそうだけどさぁ、でも、うーん」
「おや?照れちゃってるのかな?」
なんか小羽玖変わってないか?
「そっそんなことない!ないない!うん、ないな、絶対」「ww」
そう、一颯君。私の大大大好きな人。
一颯君が海勢頭君から私を守ってくれたんだ。もうほんっとに好きだ。優しいし、運動できるし、私にとってはめっちゃカッコいいし。最っ高だ。
「海勢頭ってホント酷いよなぁ。口悪いし。」
男子が大きめの声でそう叫ぶ。
「それなー!」
それにつられて他の子も頷く。
確かに、酷いは酷いけど、悪口をいうのはダメなんじゃないかな。でもそんな思いは、次の言葉が張ってられると同時に、一瞬でどこかに行ってしまった。
「ほんとに、死んだらいいのに。」
私だって海勢頭君に散々辛い思いをさせられてきた。ほんとに毎回毎回。嫌になるほど見てきた海勢頭君の顔。もう、見たくない。
海勢頭君は最低最悪な人だから。
誰かがそう言った言葉に対しては笑いが起きた。
私の口からもふっと息が漏れる。
この言葉がどれだけ重いものか、全く気にしずに。
「あー、あっという間に休み時間だね~!」
小羽玖の声が聞こえて私はハッとした。
「なになに、寝ぼけてるのかな穂稀さんw」
「う、うん。だっ、だい、じょうぶ、だよ…」
あ、ヤバい。ホントにヤバい。死にそう。死んでもいい。
「あ、あれ?穂稀どうしたの?」
「…」
私はほぼ小羽玖の声が聞こえなくなっていた。
ほんとにやばい、これ。
あ、うわ。ちょ。何やってたんだ私。
「穂希見すぎ!見すぎだよ!」
耳元で小羽玖の注意の声が聞こえて、またハッとした。
「ご、ごめん。」
私が何気なくそう言うと小羽玖はにかっと笑って
「もー、恋する乙女は暇じゃないな~w」
なんてことを言う。は、恥ずかしいじゃん。
まぁ、そりゃ、ハグしちゃったからね。
「だって、はぐ…あっ、いや、なんでもない。」
「ん?はぐ?」
そうだ、忘れるところだった。小羽玖には一颯君とは、ハグしたこと伝えてないんだった。危な。
「だから、何でもないって!」
「ww」
顔がとてつもなく熱いことがはっきりと分かる。目玉焼きでも焼けそうだ。
あぁ、早く一颯君と話したいな。一颯君の声を聞きたい。
私は小羽玖から目をそらし、一颯君の横顔を眺める。クラスメイトの男子友達と楽しそうにじゃれ合っているその顔が愛おしかった。可愛くて、仕方がなかった。それに、たまに見せる真剣な顔も、とてつもなくカッコいい。
ふいに一颯君の瞳が私をとらえた。
「へっ⁉」
とっさに上擦った声を上げてしまい、隠すように両手で口元を覆っていると、
「穂稀どうした?」
って一颯君が言う。な、なんで大声でそんなこと言うの⁉「え、あ、そっ、その、な、」
私が一人でわちゃわちゃやってると、一颯君は私に近寄ってきて、今朝のように上から目線で私を見下ろしてきた。あぁ、カッコいいな、相変わらず。
一颯君は制服のズボンのポケットに手を突っ込んで、柔らかな笑顔を私に向けている。
「穂稀、どうかした?」
一颯君の口から私の名前が発せられる。
「なんでも、ないよ。」
私はそう答え、クラス中の視線から逃れようとした。でも、一颯君は全く諦めようとしないで、逆にもっと聞き出したいような雰囲気を身にまとっていた。
一颯君の目が同じ高さにある。至近距離で目が合う。
「へ」
私の口からは頼りない細い声が出ていた。
おそらく、今の状況を把握するのは困難だ。だって、一颯君が目の前にいるんだもん。恥ずかしくて目が合わせられない。
―手に、ぬくもりを感じた。
「キャー!」
「ヤバいって。」
クラスメイトのざわめきが耳に聞こえた。
クラス中の視線が私に向いている気配を感じた私は、手の方に視線を落とした。
「へっ⁉」
私の手の上に一颯君の手が重なっている。
衝撃的すぎて、口が動かない。
「穂稀、なんかあったらちゃんと俺に言えよ。」
「……」
口が震える、頭が回らない。
「穂稀?どうした?」
一颯君の声が遠い。耳が聞こえづらい。
ただ頭の中のどこかだけはフル回転していた。
なんだろう、この感じ。妙に複雑な気分だ。
幸せで、甘くて、どこか不愉快な、そんなほんとによく分からない気分だった。私の手に触れた一颯君の最上級のぬくもりが、眩暈がするほどに優しくて、呆れるほどにうるさかった。
「穂稀!穂稀っ!」
一颯君が私の肩をがっしりとつかんで前後に揺さぶる。
私の肩をつかむ一颯君の手にぐっと力が入る。
「穂稀っ!しっかりしろ!」
なんにも応答しない私に一颯君は最大級の心配をしてくれているみたいだ。そんなの、いらないのに。
心の中がざわざわしている。東京での帰宅ラッシュ時の駅みたいに。
この気持ちはうれしい、なのかな。不快、なのかな。今はただ、この空間から抜け出したい一心だった。
再び一颯君の手に力がこもる。
「穂稀っ、なぁ!聞こえるか?穂稀っ!お前は、俺の…俺の彼女だろ!」
彼女、という言葉が聞こえたとき、私の体のどこかでぷちっという音がした。まるで何かが限界に達して切れたみたいに。
「ほま…」
「ほっといてよ!」
私が急に立ち上がった拍子に、ガタンと椅子が音を立て、後ろの小羽玖の席にぶつかる。
「え……」
周りの空気が凍りつく。
がやがやしていた教室もしんと静まり返る。
穂稀、と小羽玖が私に何かを呼び掛けている。ただその声は私の右耳から入り左耳から抜けていった。
「は、なに、穂稀。冗談だろ。」
「名前……」
「は、なに笑」
「名前!馴れ馴れしく呼ばないで!」
「はぁ⁉お前が穂稀って呼んでほしいって言ったんだろ。何言ってんの、バカかよ。」
「……っ!」
「お前は俺の彼女だろ。」
黒板に大きく自習と書かれた教室では、海勢頭君が授業に参加しないことで愚痴を言っている男子や女子の声で埋もれていた。
「海勢頭君、どうしたんだろう。」
私は後ろの席にいる小羽玖にそっと耳打ちした。
「お腹痛いとかでトイレにでも行ったとか。そんな重大なことではないんじゃない?海勢頭君の事だし。」
「そ、っか」
いや、確かにさっきあんなに酷いこと言われたんだし。一颯君は私が一颯君の彼女だ宣言するし。ちょっと、衝撃的だったな。
「ね、一颯が守ってくれたんでしょ?穂稀を海勢頭君から。」
「う、ちょ、」
もう、はずいから変な声出たじゃんか!さっきまでの事、小羽玖に教えなかったら良かったかも。さすがにハグしたまでは言ってないけどね。言うわけないじゃん。
「確かにそうだけどさぁ、でも、うーん」
「おや?照れちゃってるのかな?」
なんか小羽玖変わってないか?
「そっそんなことない!ないない!うん、ないな、絶対」「ww」
そう、一颯君。私の大大大好きな人。
一颯君が海勢頭君から私を守ってくれたんだ。もうほんっとに好きだ。優しいし、運動できるし、私にとってはめっちゃカッコいいし。最っ高だ。
「海勢頭ってホント酷いよなぁ。口悪いし。」
男子が大きめの声でそう叫ぶ。
「それなー!」
それにつられて他の子も頷く。
確かに、酷いは酷いけど、悪口をいうのはダメなんじゃないかな。でもそんな思いは、次の言葉が張ってられると同時に、一瞬でどこかに行ってしまった。
「ほんとに、死んだらいいのに。」
私だって海勢頭君に散々辛い思いをさせられてきた。ほんとに毎回毎回。嫌になるほど見てきた海勢頭君の顔。もう、見たくない。
海勢頭君は最低最悪な人だから。
誰かがそう言った言葉に対しては笑いが起きた。
私の口からもふっと息が漏れる。
この言葉がどれだけ重いものか、全く気にしずに。
「あー、あっという間に休み時間だね~!」
小羽玖の声が聞こえて私はハッとした。
「なになに、寝ぼけてるのかな穂稀さんw」
「う、うん。だっ、だい、じょうぶ、だよ…」
あ、ヤバい。ホントにヤバい。死にそう。死んでもいい。
「あ、あれ?穂稀どうしたの?」
「…」
私はほぼ小羽玖の声が聞こえなくなっていた。
ほんとにやばい、これ。
あ、うわ。ちょ。何やってたんだ私。
「穂希見すぎ!見すぎだよ!」
耳元で小羽玖の注意の声が聞こえて、またハッとした。
「ご、ごめん。」
私が何気なくそう言うと小羽玖はにかっと笑って
「もー、恋する乙女は暇じゃないな~w」
なんてことを言う。は、恥ずかしいじゃん。
まぁ、そりゃ、ハグしちゃったからね。
「だって、はぐ…あっ、いや、なんでもない。」
「ん?はぐ?」
そうだ、忘れるところだった。小羽玖には一颯君とは、ハグしたこと伝えてないんだった。危な。
「だから、何でもないって!」
「ww」
顔がとてつもなく熱いことがはっきりと分かる。目玉焼きでも焼けそうだ。
あぁ、早く一颯君と話したいな。一颯君の声を聞きたい。
私は小羽玖から目をそらし、一颯君の横顔を眺める。クラスメイトの男子友達と楽しそうにじゃれ合っているその顔が愛おしかった。可愛くて、仕方がなかった。それに、たまに見せる真剣な顔も、とてつもなくカッコいい。
ふいに一颯君の瞳が私をとらえた。
「へっ⁉」
とっさに上擦った声を上げてしまい、隠すように両手で口元を覆っていると、
「穂稀どうした?」
って一颯君が言う。な、なんで大声でそんなこと言うの⁉「え、あ、そっ、その、な、」
私が一人でわちゃわちゃやってると、一颯君は私に近寄ってきて、今朝のように上から目線で私を見下ろしてきた。あぁ、カッコいいな、相変わらず。
一颯君は制服のズボンのポケットに手を突っ込んで、柔らかな笑顔を私に向けている。
「穂稀、どうかした?」
一颯君の口から私の名前が発せられる。
「なんでも、ないよ。」
私はそう答え、クラス中の視線から逃れようとした。でも、一颯君は全く諦めようとしないで、逆にもっと聞き出したいような雰囲気を身にまとっていた。
一颯君の目が同じ高さにある。至近距離で目が合う。
「へ」
私の口からは頼りない細い声が出ていた。
おそらく、今の状況を把握するのは困難だ。だって、一颯君が目の前にいるんだもん。恥ずかしくて目が合わせられない。
―手に、ぬくもりを感じた。
「キャー!」
「ヤバいって。」
クラスメイトのざわめきが耳に聞こえた。
クラス中の視線が私に向いている気配を感じた私は、手の方に視線を落とした。
「へっ⁉」
私の手の上に一颯君の手が重なっている。
衝撃的すぎて、口が動かない。
「穂稀、なんかあったらちゃんと俺に言えよ。」
「……」
口が震える、頭が回らない。
「穂稀?どうした?」
一颯君の声が遠い。耳が聞こえづらい。
ただ頭の中のどこかだけはフル回転していた。
なんだろう、この感じ。妙に複雑な気分だ。
幸せで、甘くて、どこか不愉快な、そんなほんとによく分からない気分だった。私の手に触れた一颯君の最上級のぬくもりが、眩暈がするほどに優しくて、呆れるほどにうるさかった。
「穂稀!穂稀っ!」
一颯君が私の肩をがっしりとつかんで前後に揺さぶる。
私の肩をつかむ一颯君の手にぐっと力が入る。
「穂稀っ!しっかりしろ!」
なんにも応答しない私に一颯君は最大級の心配をしてくれているみたいだ。そんなの、いらないのに。
心の中がざわざわしている。東京での帰宅ラッシュ時の駅みたいに。
この気持ちはうれしい、なのかな。不快、なのかな。今はただ、この空間から抜け出したい一心だった。
再び一颯君の手に力がこもる。
「穂稀っ、なぁ!聞こえるか?穂稀っ!お前は、俺の…俺の彼女だろ!」
彼女、という言葉が聞こえたとき、私の体のどこかでぷちっという音がした。まるで何かが限界に達して切れたみたいに。
「ほま…」
「ほっといてよ!」
私が急に立ち上がった拍子に、ガタンと椅子が音を立て、後ろの小羽玖の席にぶつかる。
「え……」
周りの空気が凍りつく。
がやがやしていた教室もしんと静まり返る。
穂稀、と小羽玖が私に何かを呼び掛けている。ただその声は私の右耳から入り左耳から抜けていった。
「は、なに、穂稀。冗談だろ。」
「名前……」
「は、なに笑」
「名前!馴れ馴れしく呼ばないで!」
「はぁ⁉お前が穂稀って呼んでほしいって言ったんだろ。何言ってんの、バカかよ。」
「……っ!」
「お前は俺の彼女だろ。」
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「海勢頭授業さぼってんじゃんw」
黒板に大きく自習と書かれた教室では、海勢頭君が授業に参加しないことで愚痴を言っている男子や女子の声で埋もれていた。
「海勢頭君、どうしたんだろう。」
私は後ろの席にいる小羽玖にそっと耳打ちした。
「お腹痛いとかでトイレにでも行ったとか。そんな重大なことではないんじゃない?海勢頭君の事だし。」
「そ、っか」
いや、確かにさっきあんなに酷いこと言われたんだし。一颯君は私が一颯君の彼女だ宣言するし。ちょっと、衝撃的だったな。
「ね、一颯が守ってくれたんでしょ?穂稀を海勢頭君から。」
「う、ちょ、」
もう、はずいから変な声出たじゃんか!さっきまでの事、小羽玖に教えなかったら良かったかも。さすがにハグしたまでは言ってないけどね。言うわけないじゃん。
「確かにそうだけどさぁ、でも、うーん」
「おや?照れちゃってるのかな?」
なんか小羽玖変わってないか?
「そっそんなことない!ないない!うん、ないな、絶対」「ww」
そう、一颯君。私の大大大好きな人。
一颯君が海勢頭君から私を守ってくれたんだ。もうほんっとに好きだ。優しいし、運動できるし、私にとってはめっちゃカッコいいし。最っ高だ。
「海勢頭ってホント酷いよなぁ。口悪いし。」
男子が大きめの声でそう叫ぶ。
「それなー!」
それにつられて他の子も頷く。
確かに、酷いは酷いけど、悪口をいうのはダメなんじゃないかな。でもそんな思いは、次の言葉が張ってられると同時に、一瞬でどこかに行ってしまった。
「ほんとに、死んだらいいのに。」
私だって海勢頭君に散々辛い思いをさせられてきた。ほんとに毎回毎回。嫌になるほど見てきた海勢頭君の顔。もう、見たくない。
黒板に大きく自習と書かれた教室では、海勢頭君が授業に参加しないことで愚痴を言っている男子や女子の声で埋もれていた。
「海勢頭君、どうしたんだろう。」
私は後ろの席にいる小羽玖にそっと耳打ちした。
「お腹痛いとかでトイレにでも行ったとか。そんな重大なことではないんじゃない?海勢頭君の事だし。」
「そ、っか」
いや、確かにさっきあんなに酷いこと言われたんだし。一颯君は私が一颯君の彼女だ宣言するし。ちょっと、衝撃的だったな。
「ね、一颯が守ってくれたんでしょ?穂稀を海勢頭君から。」
「う、ちょ、」
もう、はずいから変な声出たじゃんか!さっきまでの事、小羽玖に教えなかったら良かったかも。さすがにハグしたまでは言ってないけどね。言うわけないじゃん。
「確かにそうだけどさぁ、でも、うーん」
「おや?照れちゃってるのかな?」
なんか小羽玖変わってないか?
「そっそんなことない!ないない!うん、ないな、絶対」「ww」
そう、一颯君。私の大大大好きな人。
一颯君が海勢頭君から私を守ってくれたんだ。もうほんっとに好きだ。優しいし、運動できるし、私にとってはめっちゃカッコいいし。最っ高だ。
「海勢頭ってホント酷いよなぁ。口悪いし。」
男子が大きめの声でそう叫ぶ。
「それなー!」
それにつられて他の子も頷く。
確かに、酷いは酷いけど、悪口をいうのはダメなんじゃないかな。でもそんな思いは、次の言葉が張ってられると同時に、一瞬でどこかに行ってしまった。
「ほんとに、死んだらいいのに。」
私だって海勢頭君に散々辛い思いをさせられてきた。ほんとに毎回毎回。嫌になるほど見てきた海勢頭君の顔。もう、見たくない。
海勢頭君は最低最悪な人だから。
誰かがそう言った言葉に対しては笑いが起きた。
私の口からもふっと息が漏れる。
この言葉がどれだけ重いものか、全く気にしずに。
私の口からもふっと息が漏れる。
この言葉がどれだけ重いものか、全く気にしずに。
「あー、あっという間に休み時間だね~!」
小羽玖の声が聞こえて私はハッとした。
「なになに、寝ぼけてるのかな穂稀さんw」
「う、うん。だっ、だい、じょうぶ、だよ…」
あ、ヤバい。ホントにヤバい。死にそう。死んでもいい。
「あ、あれ?穂稀どうしたの?」
「…」
私はほぼ小羽玖の声が聞こえなくなっていた。
ほんとにやばい、これ。
あ、うわ。ちょ。何やってたんだ私。
「穂希見すぎ!見すぎだよ!」
耳元で小羽玖の注意の声が聞こえて、またハッとした。
「ご、ごめん。」
私が何気なくそう言うと小羽玖はにかっと笑って
「もー、恋する乙女は暇じゃないな~w」
なんてことを言う。は、恥ずかしいじゃん。
まぁ、そりゃ、ハグしちゃったからね。
「だって、はぐ…あっ、いや、なんでもない。」
「ん?はぐ?」
そうだ、忘れるところだった。小羽玖には一颯君とは、ハグしたこと伝えてないんだった。危な。
「だから、何でもないって!」
「ww」
顔がとてつもなく熱いことがはっきりと分かる。目玉焼きでも焼けそうだ。
あぁ、早く一颯君と話したいな。一颯君の声を聞きたい。
私は小羽玖から目をそらし、一颯君の横顔を眺める。クラスメイトの男子友達と楽しそうにじゃれ合っているその顔が愛おしかった。可愛くて、仕方がなかった。それに、たまに見せる真剣な顔も、とてつもなくカッコいい。
ふいに一颯君の瞳が私をとらえた。
「へっ⁉」
とっさに上擦った声を上げてしまい、隠すように両手で口元を覆っていると、
「穂稀どうした?」
って一颯君が言う。な、なんで大声でそんなこと言うの⁉「え、あ、そっ、その、な、」
私が一人でわちゃわちゃやってると、一颯君は私に近寄ってきて、今朝のように上から目線で私を見下ろしてきた。あぁ、カッコいいな、相変わらず。
一颯君は制服のズボンのポケットに手を突っ込んで、柔らかな笑顔を私に向けている。
「穂稀、どうかした?」
一颯君の口から私の名前が発せられる。
「なんでも、ないよ。」
私はそう答え、クラス中の視線から逃れようとした。でも、一颯君は全く諦めようとしないで、逆にもっと聞き出したいような雰囲気を身にまとっていた。
一颯君の目が同じ高さにある。至近距離で目が合う。
「へ」
私の口からは頼りない細い声が出ていた。
おそらく、今の状況を把握するのは困難だ。だって、一颯君が目の前にいるんだもん。恥ずかしくて目が合わせられない。
―手に、ぬくもりを感じた。
「キャー!」
「ヤバいって。」
クラスメイトのざわめきが耳に聞こえた。
クラス中の視線が私に向いている気配を感じた私は、手の方に視線を落とした。
「へっ⁉」
私の手の上に一颯君の手が重なっている。
衝撃的すぎて、口が動かない。
「穂稀、なんかあったらちゃんと俺に言えよ。」
「……」
口が震える、頭が回らない。
「穂稀?どうした?」
一颯君の声が遠い。耳が聞こえづらい。
ただ頭の中のどこかだけはフル回転していた。
なんだろう、この感じ。妙に複雑な気分だ。
幸せで、甘くて、どこか不愉快な、そんなほんとによく分からない気分だった。私の手に触れた一颯君の最上級のぬくもりが、眩暈がするほどに優しくて、呆れるほどにうるさかった。
「穂稀!穂稀っ!」
一颯君が私の肩をがっしりとつかんで前後に揺さぶる。
私の肩をつかむ一颯君の手にぐっと力が入る。
「穂稀っ!しっかりしろ!」
なんにも応答しない私に一颯君は最大級の心配をしてくれているみたいだ。そんなの、いらないのに。
心の中がざわざわしている。東京での帰宅ラッシュ時の駅みたいに。
この気持ちはうれしい、なのかな。不快、なのかな。今はただ、この空間から抜け出したい一心だった。
再び一颯君の手に力がこもる。
「穂稀っ、なぁ!聞こえるか?穂稀っ!お前は、俺の…俺の彼女だろ!」
彼女、という言葉が聞こえたとき、私の体のどこかでぷちっという音がした。まるで何かが限界に達して切れたみたいに。
「ほま…」
「ほっといてよ!」
小羽玖の声が聞こえて私はハッとした。
「なになに、寝ぼけてるのかな穂稀さんw」
「う、うん。だっ、だい、じょうぶ、だよ…」
あ、ヤバい。ホントにヤバい。死にそう。死んでもいい。
「あ、あれ?穂稀どうしたの?」
「…」
私はほぼ小羽玖の声が聞こえなくなっていた。
ほんとにやばい、これ。
あ、うわ。ちょ。何やってたんだ私。
「穂希見すぎ!見すぎだよ!」
耳元で小羽玖の注意の声が聞こえて、またハッとした。
「ご、ごめん。」
私が何気なくそう言うと小羽玖はにかっと笑って
「もー、恋する乙女は暇じゃないな~w」
なんてことを言う。は、恥ずかしいじゃん。
まぁ、そりゃ、ハグしちゃったからね。
「だって、はぐ…あっ、いや、なんでもない。」
「ん?はぐ?」
そうだ、忘れるところだった。小羽玖には一颯君とは、ハグしたこと伝えてないんだった。危な。
「だから、何でもないって!」
「ww」
顔がとてつもなく熱いことがはっきりと分かる。目玉焼きでも焼けそうだ。
あぁ、早く一颯君と話したいな。一颯君の声を聞きたい。
私は小羽玖から目をそらし、一颯君の横顔を眺める。クラスメイトの男子友達と楽しそうにじゃれ合っているその顔が愛おしかった。可愛くて、仕方がなかった。それに、たまに見せる真剣な顔も、とてつもなくカッコいい。
ふいに一颯君の瞳が私をとらえた。
「へっ⁉」
とっさに上擦った声を上げてしまい、隠すように両手で口元を覆っていると、
「穂稀どうした?」
って一颯君が言う。な、なんで大声でそんなこと言うの⁉「え、あ、そっ、その、な、」
私が一人でわちゃわちゃやってると、一颯君は私に近寄ってきて、今朝のように上から目線で私を見下ろしてきた。あぁ、カッコいいな、相変わらず。
一颯君は制服のズボンのポケットに手を突っ込んで、柔らかな笑顔を私に向けている。
「穂稀、どうかした?」
一颯君の口から私の名前が発せられる。
「なんでも、ないよ。」
私はそう答え、クラス中の視線から逃れようとした。でも、一颯君は全く諦めようとしないで、逆にもっと聞き出したいような雰囲気を身にまとっていた。
一颯君の目が同じ高さにある。至近距離で目が合う。
「へ」
私の口からは頼りない細い声が出ていた。
おそらく、今の状況を把握するのは困難だ。だって、一颯君が目の前にいるんだもん。恥ずかしくて目が合わせられない。
―手に、ぬくもりを感じた。
「キャー!」
「ヤバいって。」
クラスメイトのざわめきが耳に聞こえた。
クラス中の視線が私に向いている気配を感じた私は、手の方に視線を落とした。
「へっ⁉」
私の手の上に一颯君の手が重なっている。
衝撃的すぎて、口が動かない。
「穂稀、なんかあったらちゃんと俺に言えよ。」
「……」
口が震える、頭が回らない。
「穂稀?どうした?」
一颯君の声が遠い。耳が聞こえづらい。
ただ頭の中のどこかだけはフル回転していた。
なんだろう、この感じ。妙に複雑な気分だ。
幸せで、甘くて、どこか不愉快な、そんなほんとによく分からない気分だった。私の手に触れた一颯君の最上級のぬくもりが、眩暈がするほどに優しくて、呆れるほどにうるさかった。
「穂稀!穂稀っ!」
一颯君が私の肩をがっしりとつかんで前後に揺さぶる。
私の肩をつかむ一颯君の手にぐっと力が入る。
「穂稀っ!しっかりしろ!」
なんにも応答しない私に一颯君は最大級の心配をしてくれているみたいだ。そんなの、いらないのに。
心の中がざわざわしている。東京での帰宅ラッシュ時の駅みたいに。
この気持ちはうれしい、なのかな。不快、なのかな。今はただ、この空間から抜け出したい一心だった。
再び一颯君の手に力がこもる。
「穂稀っ、なぁ!聞こえるか?穂稀っ!お前は、俺の…俺の彼女だろ!」
彼女、という言葉が聞こえたとき、私の体のどこかでぷちっという音がした。まるで何かが限界に達して切れたみたいに。
「ほま…」
「ほっといてよ!」
私が急に立ち上がった拍子に、ガタンと椅子が音を立て、後ろの小羽玖の席にぶつかる。
「え……」
周りの空気が凍りつく。
がやがやしていた教室もしんと静まり返る。
穂稀、と小羽玖が私に何かを呼び掛けている。ただその声は私の右耳から入り左耳から抜けていった。
「は、なに、穂稀。冗談だろ。」
「名前……」
「は、なに笑」
「名前!馴れ馴れしく呼ばないで!」
「はぁ⁉お前が穂稀って呼んでほしいって言ったんだろ。何言ってんの、バカかよ。」
「……っ!」
「お前は俺の彼女だろ。」
「え……」
周りの空気が凍りつく。
がやがやしていた教室もしんと静まり返る。
穂稀、と小羽玖が私に何かを呼び掛けている。ただその声は私の右耳から入り左耳から抜けていった。
「は、なに、穂稀。冗談だろ。」
「名前……」
「は、なに笑」
「名前!馴れ馴れしく呼ばないで!」
「はぁ⁉お前が穂稀って呼んでほしいって言ったんだろ。何言ってんの、バカかよ。」
「……っ!」
「お前は俺の彼女だろ。」