いよいよ、魔王城の最深部へとたどり着いた。
黒い玉座の間に響くのは、冷たい風と重々しい足音だけ。闇の中、玉座に座っていた影がゆっくりと立ち上がった。
「来たか……勇者。」
その声は以前耳元で囁かれたあの声。
胸が一瞬だけ熱くなるのを、私は必死で振り払った。
「あなたを倒しに来たわ。」
「倒す? ふっ……ならばひとつ提案しよう。」
魔王の口元がゆっくりと笑みに歪む。
「世界の半分を、おまえにやろう。」
「……は?」
あまりに突然の言葉に、ガルドもユリエルもリッドも固まった。
背後から、氷の牙が小さく目を細め、毒の花は妖艶に微笑み、雷の鎚は「またか」と肩をすくめる。
「そ、それって……結婚ですか!?」
「さあな。」
魔王の瞳が愉快そうに細められる。私の心臓が早鐘を打つ。
「……しらん!どうせ勝てば、勝手に嫁いでくるんでしょ!」
自分でも何を言っているのかわからない。
でも、このままでは終われない。
私は剣を握り、魔力を込めて一歩踏み出した。
「だったら今度は……私優位で、ことを進めてやるわ!」
胸の奥で熱い何かが燃え上がる。
魔王は少し驚いたように目を見開き、すぐに楽しげに笑った。
「面白い。ならば力で示してみろ、勇者よ。」
黒い玉座の間に、剣と魔法の光が散った。
雷鳴のような衝撃、炎のような魔力、氷の矢が飛び交い、風がうなりをあげる。
仲間たちと元四天王たちが次々と援護に回り、私は剣を握る手にさらに力を込めた。
「さあ、最終決戦よ!魔王、あなたを倒す!」
「ふふふ……ならば全力で来い!」
こうして、私と魔王の、愛と宿命をかけた最終決戦が幕を開けた――。