魔王討伐を誓った翌日、私たちは次の町を目指して街道を進んでいた。
朝日が差し込み、鳥のさえずりが耳に心地いい……はずだったのに。
「……リサラ様、昨夜のこと、まだ耳に残ってますよ。」
横を歩くリッドが、妙に含みのある笑みを浮かべて言った。
「えっ……な、なにが?」
「だって……勇者さん、声大きいんですね。」
「なっ……!? ちょ、ちょっと何言ってるの!!」
顔が一気に熱くなる。後ろからガルドが咳払いをして、ユリエルが小声で「……あれは、少々……その……」とぼそり。ああもう、忘れてよ!!
確かに私は抵抗できなかった。強者として、勇者として、情けないくらいに。
昨夜のことを思い出すと、胸の奥に悔しさが込み上げてくる。
「……私、もっと強くならなきゃ。」
そう呟くと、三人が驚いた顔で振り向いた。
「リサラ様……?」
「私、まだまだなんだって思い知ったの。だから……鍛え直す!」
そうして私たちは、途中で見つけた修行の山に向かった。険しい岩場と、古びた石段が続く。
頂上には昔から修行者が集まる祠があるという。
「ここならレベリングに最適だな。」とガルドが剣を握り直す。
「魔法陣も残っているはずです。魔力制御の練習にもなるでしょう。」とユリエルが頷く。
「俺は罠や奇襲の訓練をする!」とリッドが軽やかに木に飛び移った。
私は深呼吸し、足元を見据える。
「……行くわよ。絶対にもっと強くなるんだから!」
険しい山道を登り、重い剣を振り、魔法を練り、夜遅くまで息を合わせて訓練した。
汗が流れ、腕が震えても、昨日の自分を乗り越えるために歯を食いしばる。
夜、焚き火のそばで疲れ果てて座り込むと、三人がそれぞれ無言で隣に腰を下ろした。
星空が広がり、冷たい風が頬を撫でる。
「……リサラ様、無理はしないでくださいね。」
「……大丈夫。これくらい、やらなきゃ。」
心の奥で小さく誓う。次は絶対、誰にも負けない。たとえ魔王相手でも――。
こうして修行の山での特訓が始まった。勇者リサラの新たなレベリングの日々が、静かに幕を開ける。