翌朝、出発前の宿のロビーで荷物をまとめていると、リッドが何やらニヤニヤしながら私に近づいてきた。
「……でさ、昨夜はどうだったの?」
「え? なにが?」
「いやいや、ガルドと同じ部屋だっただろ?……エッチなことしたんですか?」
「――――なっ!!???」
ロビー中に響くような声が出てしまった。
顔が一気に熱くなる。
「な、ななな、なに言ってんの!?そ、そんなことするわけないでしょ!!」
「いやでも……相部屋ってことはさ……。」
「してないわよ!!そもそも私、そんな……っ!」
言いかけて、ハッとした。三人の視線がぴたりと私に集まる。
「……そんな、なんですか?」とユリエル。
「ま、まさか……リサラ様、処女……?」とリッド。
あ、やばい。これ、墓穴掘ったやつだ。
「~~~~っ!!!」
耳まで真っ赤になって、私は両手で顔を覆った。
「もういいから!! 出発するわよ!!!」
慌てて宿を飛び出すと、後ろで三人が「すみません!」「でもちょっと嬉しい……」「いや喜ぶな!」と小声で騒いでいるのが聞こえた。ああもう、恥ずかしい……!
気を取り直し、私たちは次の村へ向かって街道を歩き出した。
空は高く、遠くに森の緑が濃く見える。
馬車が通り過ぎるたび、旅人たちが笑顔で手を振ってくれる。
昼過ぎ、丘を越えると、こぢんまりした村が見えてきた。
煙突から白い煙が立ち、子どもたちが走り回っている。
けれど、その笑顔にはどこか不安の影があった。
「旅の方ですか?」
畑で鍬を握っていたおじいさんが声をかけてきた。
「はい、勇者リサラといいます。なにか困っていることが?」
「……実は、最近コボルトの群れが森に出てきましてな。家畜が何匹もやられて、夜はみな怯えて眠れんのです。」
ガルドが剣の柄を握り、ユリエルが地図を広げ、リッドが周囲を見渡す。
「……行くしかないな。」
「リサラ様、どうしますか?」
私は頷いた。
「助けるに決まってるでしょ。村を守るのも、旅の仲間の役目だもの。」
「「「了解!」」」
私たちは荷物を置く間も惜しみ、森の奥へと足を踏み入れた。
コボルトの気配が、そこかしこに漂っている。
さて、今度はどんな戦いになるのか……。
恥ずかしさをこらえつつ、私は剣を抜き、進む先の影を睨んだ。