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第10話:夜の相部屋、静かな時間

ー/ー



その夜、宿の女将さんが申し訳なさそうに告げた。

「ごめんねぇ、今日は大部屋が埋まっちゃってて……二人部屋が二つしかないのよ。」

「じゃあ、どうする?」

私たちは顔を見合わせ、自然とじゃんけん大会が始まった。

結果は――

「……勝った。」

ガルドがどこか気まずそうに拳を握る。

「じゃあ、俺とリサラ様が一緒か。」

「……え、そういうことになるの?」

私もつい頬を赤くする。

リッドとユリエルは「なんだよー!」と肩を落として、もうひとつの部屋へ消えていった。

部屋に入ると、思ったよりこぢんまりした空間だった。

ベッドが二つ、木の机と椅子がひとつ。

ランプの灯りが柔らかく揺れ、窓の外には夜風に揺れる木々の影が見える。

「……変な感じだな、こうやって二人で部屋にいるなんて。」

ガルドが鎧を外し、剣を壁に立てかけながら言った。

「うん……でも、なんか落ち着くね。」


寝る前に少し話そうか、という流れになった。

「ガルドは、どうして剣士になろうと思ったの?」

「俺か? 小さい頃、村を魔物に襲われて……誰も守れなかったから。だから、今度は誰かを守れるようになりたかった。」

彼の声はいつもの威勢より少しだけ低く、感傷がにじんでいた。

「……私、召喚される前は普通のOLでさ。毎日ただ仕事して、帰って寝て……それだけだった。でもこっちに来て、やっと何かになれた気がするの。」

「勇者、だもんな。俺から見たら……リサラ様は、すごいよ。」

「そんなことないよ。私、まだ全然強くなんかないし……ほんとは、すごく怖いし。」

ガルドが少し笑った。

「俺もだ。怖くないふりしてるけど……内心、いつも必死だ。」

「……そっか。」

ランプの光が揺れる。外から虫の声がかすかに聞こえる。沈黙が、でも不思議と心地いい。

「……こういう時間も、いいな。」

「うん……相部屋も、悪くないかもね。」

ゆっくりとまぶたが重くなる。

ガルドがベッドに横になり、私も布団を肩まで引き上げた。

眠りに落ちる直前、誰かの寝息が優しく混じるのを感じながら、私は小さく微笑んだ。

こうして、勇者と剣士の夜は、静かで温かい時間のまま更けていった。


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その夜、宿の女将さんが申し訳なさそうに告げた。
「ごめんねぇ、今日は大部屋が埋まっちゃってて……二人部屋が二つしかないのよ。」
「じゃあ、どうする?」
私たちは顔を見合わせ、自然とじゃんけん大会が始まった。
結果は――
「……勝った。」
ガルドがどこか気まずそうに拳を握る。
「じゃあ、俺とリサラ様が一緒か。」
「……え、そういうことになるの?」
私もつい頬を赤くする。
リッドとユリエルは「なんだよー!」と肩を落として、もうひとつの部屋へ消えていった。
部屋に入ると、思ったよりこぢんまりした空間だった。
ベッドが二つ、木の机と椅子がひとつ。
ランプの灯りが柔らかく揺れ、窓の外には夜風に揺れる木々の影が見える。
「……変な感じだな、こうやって二人で部屋にいるなんて。」
ガルドが鎧を外し、剣を壁に立てかけながら言った。
「うん……でも、なんか落ち着くね。」
寝る前に少し話そうか、という流れになった。
「ガルドは、どうして剣士になろうと思ったの?」
「俺か? 小さい頃、村を魔物に襲われて……誰も守れなかったから。だから、今度は誰かを守れるようになりたかった。」
彼の声はいつもの威勢より少しだけ低く、感傷がにじんでいた。
「……私、召喚される前は普通のOLでさ。毎日ただ仕事して、帰って寝て……それだけだった。でもこっちに来て、やっと何かになれた気がするの。」
「勇者、だもんな。俺から見たら……リサラ様は、すごいよ。」
「そんなことないよ。私、まだ全然強くなんかないし……ほんとは、すごく怖いし。」
ガルドが少し笑った。
「俺もだ。怖くないふりしてるけど……内心、いつも必死だ。」
「……そっか。」
ランプの光が揺れる。外から虫の声がかすかに聞こえる。沈黙が、でも不思議と心地いい。
「……こういう時間も、いいな。」
「うん……相部屋も、悪くないかもね。」
ゆっくりとまぶたが重くなる。
ガルドがベッドに横になり、私も布団を肩まで引き上げた。
眠りに落ちる直前、誰かの寝息が優しく混じるのを感じながら、私は小さく微笑んだ。
こうして、勇者と剣士の夜は、静かで温かい時間のまま更けていった。