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第9話:勇者の好みと、三勇士のざわめき

ー/ー



氷の牙を従えた帰り道。

山を下りている途中、前を歩く三人がひそひそと話しているのが耳に入った。

「……なぁ、さっきリサラ様、氷の牙に“イケメン”って言ってただろ?」

ガルドが低い声で切り出す。

「……言ってましたね。あれは、やっぱり……好みなんでしょうか。」

ユリエルが真剣に頷く。

「で、でも俺たちだって……その……見た目なら、そこそこ、だよな?」

リッドが帽子をいじりながらもじもじする。三

人の間に妙な沈黙が漂った。

「なぁ、俺たち、勇者様の好みに入ってると思うか?」

「そ、そうであってほしいが……。」

「でも、はっきり聞くのって……怖くない?」

私はその後ろで歩きながら、彼らが何を話しているのかうっすら分かってしまった。

けれど、すぐには声をかけずにいた。

そして宿に戻り、夕食を終えたあと。

三人は珍しく顔を見合わせ、そして意を決したように私のところにやってきた。

「リサラ様……お聞きしても、いいでしょうか。」

「え? 何?」

「さっき、氷の牙に……その、“イケメン”と……。」

「……好みの顔立ち、ってあるんですか?」

いきなり核心を突かれて、私は思わずクッキーを噴き出しそうになった。

「え、えぇ!? な、何その質問!」

「気になるんです。僕たち、旅の仲間としても、勇者様のお役に立ちたいですから。」

「そ、そういう話じゃないだろ……!」とガルドが赤くなりながらも横から口を挟む。

「で、でも……俺たちだって……その、気になるし……。」

三人が真剣な目で見てくる。私はとっさに笑ってごまかそうとした。

「えっと……中身が大事だと思うよ、私は。顔じゃなくて、その人の優しさとか、誠実さとか――。」

「建前じゃなくて、本気で教えてください。」

ユリエルの静かな一言が刺さる。三人とも、じっと私を見ている。

……くっ、逃げられない。

「……わかったわよ。」

私はクッキーを置き、少し考えてから言った。

「顔は……整っていたら、そりゃ嬉しいけど、特に好みとかはないの。濃いのも薄いのも、別に気にしないし。誰かが特別に好きってわけでもない。だから……気にしなくていいよ。」

三人はぽかんとした後、同時に安堵したように肩を落とした。

「……よかった……チャンスは、あるんだな……。」

「な、なんでそういう方向に……!」

私は慌てて首を振るけれど、三人はなんだか楽しそうに顔を見合わせていた。

 ガルドが小さく笑う。

「じゃあ、これからもっと頑張らないとな。」

「……ええ。中身で認められるように。」

「俺も……負けないからな。」

そうして夜が更けていく。

私はクッキーをひとくちかじりながら、胸の奥がほんのり温かくなるのを感じていた。

顔じゃなくて、みんなの優しさや真剣さが、今はとてもまぶしかった。


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氷の牙を従えた帰り道。
山を下りている途中、前を歩く三人がひそひそと話しているのが耳に入った。
「……なぁ、さっきリサラ様、氷の牙に“イケメン”って言ってただろ?」
ガルドが低い声で切り出す。
「……言ってましたね。あれは、やっぱり……好みなんでしょうか。」
ユリエルが真剣に頷く。
「で、でも俺たちだって……その……見た目なら、そこそこ、だよな?」
リッドが帽子をいじりながらもじもじする。三
人の間に妙な沈黙が漂った。
「なぁ、俺たち、勇者様の好みに入ってると思うか?」
「そ、そうであってほしいが……。」
「でも、はっきり聞くのって……怖くない?」
私はその後ろで歩きながら、彼らが何を話しているのかうっすら分かってしまった。
けれど、すぐには声をかけずにいた。
そして宿に戻り、夕食を終えたあと。
三人は珍しく顔を見合わせ、そして意を決したように私のところにやってきた。
「リサラ様……お聞きしても、いいでしょうか。」
「え? 何?」
「さっき、氷の牙に……その、“イケメン”と……。」
「……好みの顔立ち、ってあるんですか?」
いきなり核心を突かれて、私は思わずクッキーを噴き出しそうになった。
「え、えぇ!? な、何その質問!」
「気になるんです。僕たち、旅の仲間としても、勇者様のお役に立ちたいですから。」
「そ、そういう話じゃないだろ……!」とガルドが赤くなりながらも横から口を挟む。
「で、でも……俺たちだって……その、気になるし……。」
三人が真剣な目で見てくる。私はとっさに笑ってごまかそうとした。
「えっと……中身が大事だと思うよ、私は。顔じゃなくて、その人の優しさとか、誠実さとか――。」
「建前じゃなくて、本気で教えてください。」
ユリエルの静かな一言が刺さる。三人とも、じっと私を見ている。
……くっ、逃げられない。
「……わかったわよ。」
私はクッキーを置き、少し考えてから言った。
「顔は……整っていたら、そりゃ嬉しいけど、特に好みとかはないの。濃いのも薄いのも、別に気にしないし。誰かが特別に好きってわけでもない。だから……気にしなくていいよ。」
三人はぽかんとした後、同時に安堵したように肩を落とした。
「……よかった……チャンスは、あるんだな……。」
「な、なんでそういう方向に……!」
私は慌てて首を振るけれど、三人はなんだか楽しそうに顔を見合わせていた。
 ガルドが小さく笑う。
「じゃあ、これからもっと頑張らないとな。」
「……ええ。中身で認められるように。」
「俺も……負けないからな。」
そうして夜が更けていく。
私はクッキーをひとくちかじりながら、胸の奥がほんのり温かくなるのを感じていた。
顔じゃなくて、みんなの優しさや真剣さが、今はとてもまぶしかった。