町でのお見合いを終えて、夕食をすませた私たちは宿屋の受付に立っていた。
「それでは、部屋を……」宿の女将さんが帳簿をめくり、首をかしげる。
「ごめんなさいねぇ、今日は祭りで満室に近くて。空いてるのはダブルの二人部屋か、大部屋しかないのよ。」
その瞬間、私たち四人は同時に固まった。
「だ、ダブル!?」
「い、いえ、そ、それは……。」
「ま、待って、まだ覚悟が……!」
全員の頭の中で、見てはいけない妄想が一瞬で駆け抜けたのが分かる。
私も顔が真っ赤になった。
「じゃ、じゃあ大部屋は? 大部屋なら普通に……」
「大部屋も……ちょっと変わったつくりで、二段ベッドがひとつと、ダブルベッドが二つなのよ」
「……は?」
「え、4人で泊まるなら、二段ベッドとダブルベッドを使い分けて……ってことになりますけど……?」
女将さんがにっこり笑う。ああ、異世界の宿屋事情って難しい。
「……つまり、3人と1人で分かれて寝るってことですよね?」 ユリエルが眼鏡を押さえながら理論的に整理しようとする。
「ええ、そうなりますわねぇ。」
「ぬ、抜け駆けは……?」リッドが小声でつぶやく。お、おい、なんでそんなこと気にしてるの?
「……相互監視だな」ガルドが真剣な顔で言った。
「……やっぱりそうなりますよね」私も思わず同意してしまった。
いやいや、そういう意味で旅をしてるわけじゃないんだけど!
「じゃあ、今夜は四人同じ部屋にしましょう。……広間があるとは限らないし、いっそ見張り付きで。」
「は、はい!」
「異論は……ないです。」
「だ、大丈夫……!」
結局、大部屋に案内された私たちは、二段ベッドの上と下に剣士と盗賊、ダブルベッドに賢者と私……いやいやいや、ちょっと待て!
「え、なんで私がユリエルと同じベッドなの!?」
「……だ、だって……他に選択肢が……。」
ユリエルが耳まで赤くしている。ああもう、私も恥ずかしい!
結局、私は「みんなが見える位置で寝る」という理由をつけてダブルベッドの端にぎゅっと縮こまり、ユリエルもギリギリ端っこに避けて、真ん中に分厚い魔導書を置くことで境界線を作った。
「……こうしておけば……いいですよね?」
「え、ええ……それなら……。」
上段からガルドがごそごそと身じろぎする音、下段からリッドが小さく寝息を立てる音が聞こえる。
……これ、毎日こんな感じになるのかな。
なんか、旅っていうより合宿みたいだな……。
そんなことを思いながら、私はまぶたを閉じた。
ほんのりとした笑いと、くすぐったいような夜が更けていく。
明日からは、二人部屋交代制にしようか――そんなことをぼんやり考えながら、私は眠りに落ちていった。