召喚から一夜明け、私たちは最初の町を目指して街道を歩いていた。
朝の空気はひんやりしていて、草むらには露が光り、遠くでは馬車の軋む音がかすかに響いている。
「勇者様、荷物は私が持ちますので!」
さっそく気合いの入ったガルドが、でっかい剣と荷袋を同時に担いで汗をぬぐっている。
「別に持てるけど……ありがと、ガルド。」
「そ、その……俺、力しか取り柄がないんで……!」
顔を真っ赤にしているのがかわいい。
いやいや、こんなところで“かわいい”とか思っちゃだめでしょ私……。
「リサラ様、昨日の儀式での魔法陣、どうやらこの国の古代語でしたね。もしご興味があれば私が……。」
ユリエルが歩きながら分厚い魔導書を開いている。
「えっと……それって、難しい呪文とか覚えるの?」
「いえ、基本の挨拶程度から……ゆっくりであれば……。」
「そ、そういうの、教えてもらうの初めてだから……よろしく……。」
言ってから、自分がほっぺたをかすかに熱くしているのに気づいた。
え、なにこれ、私までうぶ?
いやいや勇者だし私、堂々としてなきゃ……。
「ふ、ふふ、街道のこの辺りって夜になると盗賊が出るって噂だよ。……あ、俺は盗賊だけど、その……敵じゃないから安心してね?」
リッドが帽子のつばをいじりながら小声で言う。
すぐ後ろを歩いていたので、距離が近くて……近くて……。
「え、う、うん。頼りにしてるからね、リッド。」
「……は、はいっ!」
耳まで真っ赤にして答えるリッド。
な、なんかこっちも心臓がきゅっとするんですけど。
そんなこんなで道中は、まるでお見合いの延長戦みたいな会話が続いていた。
「好きな食べ物とかあります?」とユリエル。
「え、えっと……甘いもの……かな。疲れたときとかに……。」
「なるほど……じゃあ町についたらお菓子屋を探しましょう。」
「リサラ様、戦い方の練習、見せてくれませんか?」とガルド。
「私? え、えっと……人前でやったことないから、少しだけ……。」
と、ぎこちなく剣を構える私にガルドが思わず見とれて、あわてて視線を逸らす。
「……あのさ、リサラ様は……その、誰かと……そういう経験……あるの?」突然リッドがぼそっと言った。
三人とも一斉にこっちを向く。え、やめて、やめて、その視線……。
「えっ、えっと……な、ないですけど……なにその質問……!」
「す、すみません!!」三人が同時に頭を下げる。
いやいや、こっちも顔が熱いんだけど!
そうして、初々しい空気のまま一日が過ぎ、夕暮れ時には最初の町の門が見えてきた。
「……なんか、すごい疲れた……けど、なんか楽しかったな……。」胸の奥がほんのり温かい。
勇者の旅だっていうのに、どこか恋する少女みたいな気分になっている自分に気づいて、私はこっそり頬をつねった。
「明日は町で、ちゃんとお見合いをしましょう!」
「「「えええっ!? もう!?」」」
こうして、勇者リサラと童貞三勇士のお見合いを兼ねた旅は、まだまだ続いていくのだった……。