ep59 屋敷

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 繁華街から離れていくようにしばらく進んでいくと、まもなく俺たちは煙の発生元の屋敷の門前に到着する。

「違うな……」

 二メートル以上ある格子状の門越しから見える二階建ての屋敷は所々損壊している。明らかに何者かが暴れた形跡だ。ここまでは今までと変わらない。俺が感じた違和感の正体は……周囲の被害はなく、この屋敷だけがピンポイントで襲撃されているということ。

「〔フリーダム〕にしてはいつもと暴れ方が違う」

「そうなんですか?」

「……」

「こ、ここからどうするんですか?」

 シヒロが緊張の面持ちで訊いてきた時、〔謎の声〕が告げる。

『クロー様。今、この屋敷の中からスピリトゥスの動きを感じました』

『魔法か』

『その可能性が高いかと』

『なにか音も聞こえる……水の音?』

 門前から屋敷を見渡した。そのタイミングで煙がおさまった。

「今のも魔法……」

「シヒロもそう思うか」

「はい」

「よし。行くぞ」

 俺は帰宅した家人のように普通に門を押し開ける。

「し、正面から行くんですか?」

「俺から離れるなよ」

「は、はい!」
 
 門から建物までを歩きながら庭を観察する。何の変哲もない広々とした庭だが、荒涼としている。ヤツらの仕業なのか、元から生活感がないのか、判然としない。

「あ、あの、クローさん」

 玄関口までたどり着いた時、シヒロが不安そうに口をひらいた。

「どうした?」

「やっぱり、ぼくは行かない方がいいんじゃ...」

「ここまで来て怖気づいたのか?」

「いえ、あの、少しだけですけど、はい……」

「ならさっさと行くか」

「えっ?」」

 俺は無遠慮にドガンとドアを蹴り破った。ドアは無惨にバタンと崩れ倒れる。

「ちょっ! クローさん! 乱暴ですよ! もし〔フリーダム〕じゃなかったらどうするんですか!」

「そん時はそん時だ」

 俺は悠々と建物へ入っていく。後ろから怯えながらもシヒロが付いてくる。
 
「誰の姿も見えないな」

「そ、そうですね」

 パッと見たところ一階に人の姿は確認できない。実に何の変哲もない屋敷だ。特徴があるとすれば、庭同様に生活感が無いことか。

「上にあがるか」

「もう少し一階を確認しないんですか?」

「いや、上にいく」

 二階に上がると、俺を誘うかのように一室のドアが不気味にうっすら半開きになっているのが目に入る。そこへ自ら招かれるようにして、俺は廊下を進む。

「く、クローさん……」

 シヒロはびくびくと俺の背中にピッタリくっついている。
 ドアの手前まで来ると、俺は考える間もなくドアを蹴り開けた。

「ちょっ! またそんないきなり!」

 シヒロが苦情を口にした時にはもう俺は部屋の中へ一歩足を踏み入れていた。

「おっ、マジで来やがったか。テメーの言ったとおりだぜ」

 開口一番、部屋の奥の椅子にあぐらをかいた男が言った。俺の来訪を待ち構えていた口振りだ。

「フリーダムじゃない?」

 俺の目に真っ先に飛び込んできたその男は、緑色の髪の毛をド派手におっ立ててサングラスをかけていた。いかにも野蛮そうな派手な男だが、例の仮面はつけていない。荒くれた盗賊のような服装も〔フリーダム〕のそれとは異なる。

「シヴィスさん! コイツです! コイツが魔剣使いです! 間違いないです!」

 緑髪のグラサン野郎の隣で、頭からローブを羽織った顔色の悪い中年男が俺を指さした。

「く、クローさん! 床に人が!」

 後ろからシヒロが悲鳴のような声を上げた。

「ああ。これはおそらく、昨日のヤツらだな」

 緑髪のグラサン野郎たちと俺たちの間の床に、泥炭のように黒焦げになった三人の男が見るも無惨に転がっていた。


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 繁華街から離れていくようにしばらく進んでいくと、まもなく俺たちは煙の発生元の屋敷の門前に到着する。
「違うな……」
 二メートル以上ある格子状の門越しから見える二階建ての屋敷は所々損壊している。明らかに何者かが暴れた形跡だ。ここまでは今までと変わらない。俺が感じた違和感の正体は……周囲の被害はなく、この屋敷だけがピンポイントで襲撃されているということ。
「〔フリーダム〕にしてはいつもと暴れ方が違う」
「そうなんですか?」
「……」
「こ、ここからどうするんですか?」
 シヒロが緊張の面持ちで訊いてきた時、〔謎の声〕が告げる。
『クロー様。今、この屋敷の中からスピリトゥスの動きを感じました』
『魔法か』
『その可能性が高いかと』
『なにか音も聞こえる……水の音?』
 門前から屋敷を見渡した。そのタイミングで煙がおさまった。
「今のも魔法……」
「シヒロもそう思うか」
「はい」
「よし。行くぞ」
 俺は帰宅した家人のように普通に門を押し開ける。
「し、正面から行くんですか?」
「俺から離れるなよ」
「は、はい!」
 門から建物までを歩きながら庭を観察する。何の変哲もない広々とした庭だが、荒涼としている。ヤツらの仕業なのか、元から生活感がないのか、判然としない。
「あ、あの、クローさん」
 玄関口までたどり着いた時、シヒロが不安そうに口をひらいた。
「どうした?」
「やっぱり、ぼくは行かない方がいいんじゃ...」
「ここまで来て怖気づいたのか?」
「いえ、あの、少しだけですけど、はい……」
「ならさっさと行くか」
「えっ?」」
 俺は無遠慮にドガンとドアを蹴り破った。ドアは無惨にバタンと崩れ倒れる。
「ちょっ! クローさん! 乱暴ですよ! もし〔フリーダム〕じゃなかったらどうするんですか!」
「そん時はそん時だ」
 俺は悠々と建物へ入っていく。後ろから怯えながらもシヒロが付いてくる。
「誰の姿も見えないな」
「そ、そうですね」
 パッと見たところ一階に人の姿は確認できない。実に何の変哲もない屋敷だ。特徴があるとすれば、庭同様に生活感が無いことか。
「上にあがるか」
「もう少し一階を確認しないんですか?」
「いや、上にいく」
 二階に上がると、俺を誘うかのように一室のドアが不気味にうっすら半開きになっているのが目に入る。そこへ自ら招かれるようにして、俺は廊下を進む。
「く、クローさん……」
 シヒロはびくびくと俺の背中にピッタリくっついている。
 ドアの手前まで来ると、俺は考える間もなくドアを蹴り開けた。
「ちょっ! またそんないきなり!」
 シヒロが苦情を口にした時にはもう俺は部屋の中へ一歩足を踏み入れていた。
「おっ、マジで来やがったか。テメーの言ったとおりだぜ」
 開口一番、部屋の奥の椅子にあぐらをかいた男が言った。俺の来訪を待ち構えていた口振りだ。
「フリーダムじゃない?」
 俺の目に真っ先に飛び込んできたその男は、緑色の髪の毛をド派手におっ立ててサングラスをかけていた。いかにも野蛮そうな派手な男だが、例の仮面はつけていない。荒くれた盗賊のような服装も〔フリーダム〕のそれとは異なる。
「シヴィスさん! コイツです! コイツが魔剣使いです! 間違いないです!」
 緑髪のグラサン野郎の隣で、頭からローブを羽織った顔色の悪い中年男が俺を指さした。
「く、クローさん! 床に人が!」
 後ろからシヒロが悲鳴のような声を上げた。
「ああ。これはおそらく、昨日のヤツらだな」
 緑髪のグラサン野郎たちと俺たちの間の床に、泥炭のように黒焦げになった三人の男が見るも無惨に転がっていた。