ep58 煙
ー/ー
【3】
朝食を済ませると、シヒロを伴って街に繰り出した。
「手分けした方がいいんじゃないですか?」
街路を歩きながらシヒロが意見するが、俺は首を横に振る。
「ダメだ。お前が狙われるかもしれない」
「だ、大丈夫ですよ。いざとなったら昨日みたいにクローさんがすぐ駆けつけてくれるわけですし」
「必ずしもそうはいかない」
「え?」
「あの〔空間転移〕は、一度行ったことのある場所(地点)でかつ明確な認識を持った場所(地点)でないとできないんだ。くわえて一日にそう何度もできるものでもない」
「そ、そうなんですか」
『だよな?』
俺はシヒロに頷いて見せながら〔謎の声〕に確認を求める。
『はい。概ね間違っていません』
『なんだか微妙に含みのある言い方だな』
『当然例外はあります。それはすでにご存知でしょう?』
『最初に屋敷で襲撃を受けた時だよな』
『あの時のそれは緊急の例外的行使。多用は禁物です。ワタクシ自身への負担のみならず対象者へのリスクも高まります』
『次元の狭間に閉じ込めてしまいかねない……だったか。てゆーかさ、そもそもお前ならすでにこの世界のどこへでも行ったことありそうなもんなのに、案外知らないことも多いよな』
『世界とはそんな単純なものではありません。そして貴方が定義する〔世界〕とワタクシが定義する〔世界〕も異なる。空間転移に関して言えば、原則あれは実体の体験に由来する認識が必要です。それを現在のワタクシは貴方を通じて獲得している。したがって……などという説明はさておき、今、スピリトゥスの乱れを感知しました』
『本当か? 先に〔ダムド〕について調べてからにしたかったが仕方ない』
俺はシヒロに視線を投げる。
「〔フリーダム〕が現れたかもしれない。行くぞ!」
「えっ、は、はい!」
昨日の今日で今日の午前中からさっそく、と考えると不自然な気もする。必ずしもヤツらだとは限らないが、ヤツらであるならどうも妙だ。ヤツらは俺がこの街にいることを知っていて、昨日は人を介して俺を探ろうとしていた。それなのに今日、わざわざ俺に気づいてくれと言わんばかりなタイミングでの行動……。
「俺を……誘っている?」
それでも俺の足は前へ突き進んでいた。ヤツらの意図はともかく、ヤツらと遭遇できるに越したことはない。俺はこの剣と力で、ヤツらと戦うのみだ。
「クローさん!」
シヒロが進行方向の先の空を指さした。
「煙が上がってますよね? しかもあれ……魔法によるものかな?」
「!」
俺は一驚する。
「シヒロ、わかるのか?」
「は、はい。なんとなく、ですけど」
「シヒロには非凡な魔法の才があるのかもな」
「ぼくにですか??」
「さて、ハッキリと煙が見えてきたな」
向かう方向の上空に、何やら物騒な煙が揺らめいている。まるで戦いの狼煙を上げるように。
「シヒロ。いざとなったら自分の身は自分で守れるようにもしておけ。周りのことは一切気にするな。遠慮なく魔法を使え。そして逃げるべき時はなりふり構わず逃げろ」
「えっ? は、はい!」
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「手分けした方がいいんじゃないですか?」
街路を歩きながらシヒロが意見するが、俺は首を横に振る。
「ダメだ。お前が狙われるかもしれない」
「だ、大丈夫ですよ。いざとなったら昨日みたいにクローさんがすぐ駆けつけてくれるわけですし」
「必ずしもそうはいかない」
「え?」
「あの〔空間転移〕は、一度行ったことのある場所(地点)でかつ明確な認識を持った場所(地点)でないとできないんだ。くわえて一日にそう何度もできるものでもない」
「そ、そうなんですか」
『だよな?』
俺はシヒロに頷いて見せながら〔謎の声〕に確認を求める。
『はい。概ね間違っていません』
『なんだか微妙に含みのある言い方だな』
『当然例外はあります。それはすでにご存知でしょう?』
『最初に屋敷で襲撃を受けた時だよな』
『あの時のそれは緊急の例外的行使。多用は禁物です。ワタクシ自身への負担のみならず対象者へのリスクも高まります』
『次元の狭間に閉じ込めてしまいかねない……だったか。てゆーかさ、そもそもお前ならすでにこの世界のどこへでも行ったことありそうなもんなのに、案外知らないことも多いよな』
『世界とはそんな単純なものではありません。そして貴方が定義する〔世界〕とワタクシが定義する〔世界〕も異なる。空間転移に関して言えば、原則あれは実体の体験に由来する認識が必要です。それを現在のワタクシは貴方を通じて獲得している。したがって……などという説明はさておき、今、スピリトゥスの乱れを感知しました』
『本当か? 先に〔ダムド〕について調べてからにしたかったが仕方ない』
俺はシヒロに視線を投げる。
「〔フリーダム〕が現れたかもしれない。行くぞ!」
「えっ、は、はい!」
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「俺を……誘っている?」
それでも俺の足は前へ突き進んでいた。ヤツらの意図はともかく、ヤツらと遭遇できるに越したことはない。俺はこの剣と力で、ヤツらと戦うのみだ。
「クローさん!」
シヒロが進行方向の先の空を指さした。
「煙が上がってますよね? しかもあれ……魔法によるものかな?」
「!」
俺は一驚する。
「シヒロ、わかるのか?」
「は、はい。なんとなく、ですけど」
「シヒロには非凡な魔法の才があるのかもな」
「ぼくにですか??」
「さて、ハッキリと煙が見えてきたな」
向かう方向の上空に、何やら物騒な煙が揺らめいている。まるで戦いの狼煙を上げるように。
「シヒロ。いざとなったら自分の身は自分で守れるようにもしておけ。周りのことは一切気にするな。遠慮なく魔法を使え。そして逃げるべき時はなりふり構わず逃げろ」
「えっ? は、はい!」