「小春おじさん、あの、その節は大変お世話になりました」
深く深くお詫びする。
『なぜ落ち着いたらすぐに来なかったんだろう』……一食の恩、救ってもらった恩があったのに……。後悔だけ思い浮かぶ。
「私ったらすぐに……ご挨拶に伺いもせず……お礼も言わずにいなくなっちゃって……あの、本当にすみませんでしたっ」
何度も何度も頭を下げる。次第に涙の粒が大きくなって溢れた。泣いて許してもらおうだなんて思ってもいないのに……。
「昔から川は不吉な場所とされていてな……戻ってこないことの方が良いこともあるんだよ……希望を持って進みだした人ならば、振り返らないときがあった方がいい。それは決して不義ではない。不義と思ったなら、それは送り出した方に責任がある」
小春は遠くを見て懐かしんだ。きっと小春にもそんなときがあったのだろう。我武者羅に前だけ見て突き進んだ日々が。
小春が遠い目をしたのは僅か、再び音色に目を戻したのなら、その見つめる視線は厳しい。
「何でまたここに戻って来たんだ。もうお前さんに呑ます酒など残って無いっていうのに……」