「3位の蒲池さん、5位の北野さんは違うと考える」
「どうして?」
「彼氏がいるからだ」
「異論もあるけど、ま、いいわ」
恋実は女子のイニシャル『K』を頭に思い浮かべながら答える。彼氏がいたってバレンタインのチョコを贈る人だっている。好意の有無、好きの大小に関係なく……。
「異論?」
恭吾のそんな疑問符には応える気も起きない。矛盾ある感情は方程式の解のように明確に整然としていない。
恭吾に説明しても理屈は通らない。
「4位は誰なの?」
「4位は剣持さんだ」
不服ながらも恋実の方の質問の答えを優先させた辺り、恭吾も自身の質問が論点ではないことを理解している。
「確かに可愛いわね。で剣持さんの可能性は?」
「剣持さんの可能性もほぼないと思う」
「何故?」
「彼女は去年俺が肥溜めに落ちたのを知っている。それ以来俺の半径3m以内に近づいたことがない。恐らく俺は嫌われている」
「それは……間違いなさそうね」
ここは二人の意見が一致した。互いに目を合わせて頷き合う。
「2位は?」
1位は分かり切った答えだと恋実も知っている。
「2位もあり得ない……」
「それはな……」
「俺は1位の優香ちゃんじゃないかと、そう信じている!」
興奮で恋実の言葉に被せてくる恭吾。
「何てことだ~チョコ、優香ちゃんのチョコを今すぐ食べなくては!」
可愛く包まれてる方を掴むと、一心不乱に包みを開ける。ラッピングを奇麗に剝がそうとしているが、焦っていて所々破けていく……。
もう我慢ならないと半ば強引にこじ開けると、三日ぶりの食料にありついた豚のように口にほおばる。
「うまい! うまいっ! うん、うまいっ!!」
「……もう~」
チョコ菓子の虜にされたように無我夢中の恭吾に言葉を失い、緊張感から解放された恋実は只々見守っているのだった。