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@73話

ー/ー





 第三の事件……『優香ちゃんがキスをした』


 


 この事件は今までの事件と比べ次元が違う。白雪姫や眠れる森の美女のように意識のないところで奪われた唇ではないことは、教官室でのハッキリ返事をしていた優香ちゃんから考えられない。


 しかも『またしたい』と言っていた。


 


 


 


 


 恭吾の学校へと向かう足取りは重い。見上げた空は今日も快晴どこまでも澄んでいて、冷たい空気は氷にさせる少し手前、水滴がその比重を僅かに軽くし葉から落ちずに留まっている。


 


 


 頬を切り指を麻痺させる風が恭吾の頭だけしっかり働かせていた。事件を整理する。


 


 


 フォークダンスでは今井、菊池、松岡、高田、田中の五人。菊池は容疑から外れた。


 第二のパンツ事件で四人の中から高田と今井が。そしてほぼ今井に絞られた感もあった。


 恋実の事件があって、松岡も容疑を外れている。


 


 


 今井の容疑が晴れた訳ではないが、今井に焦点が当たったがためにいつの間にか嫌疑を免れた高田、そして田中。


 


『そこでキスした』と言っていた……『そこ』とは『どこ』なのか……。


 優香ちゃんの美顔が思い浮かんで、次第にぼやけていく。次に恋実とのやり取りの数々が。そして時巻……松岡と脳裏に現れては消えていく。


 


 


 一瞬、リップクリームを塗る今井の姿が思い起こされた。


 


(まさかな……)


 


 恭吾は昨夜の母親の唇を思い出すことで、今井の想像を拭った。


 


 


 


 


「ハァ、ハァ、ハァッ、ハァー」


 


 酸素が足らない……自転車が前に進んで行かない。浮かせていた腰をサドルに落とす。ペダルが止まり足を着く。


 


 気が付くと『七戻り』の坂を三分の一ほど登っていた。恭吾にとって新記録だった。汗が視界を細め、下を向くと鼻先から滴り落ちる。体から湯気が立ち上っていた。


 恭吾は自転車を降りると、少し震える足に力を込めてゆっくり坂を登った。


 


 今日もいい日になりそうだ。




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 第三の事件……『優香ちゃんがキスをした』
 この事件は今までの事件と比べ次元が違う。白雪姫や眠れる森の美女のように意識のないところで奪われた唇ではないことは、教官室でのハッキリ返事をしていた優香ちゃんから考えられない。
 しかも『またしたい』と言っていた。
 恭吾の学校へと向かう足取りは重い。見上げた空は今日も快晴どこまでも澄んでいて、冷たい空気は氷にさせる少し手前、水滴がその比重を僅かに軽くし葉から落ちずに留まっている。
 頬を切り指を麻痺させる風が恭吾の頭だけしっかり働かせていた。事件を整理する。
 フォークダンスでは今井、菊池、松岡、高田、田中の五人。菊池は容疑から外れた。
 第二のパンツ事件で四人の中から高田と今井が。そしてほぼ今井に絞られた感もあった。
 恋実の事件があって、松岡も容疑を外れている。
 今井の容疑が晴れた訳ではないが、今井に焦点が当たったがためにいつの間にか嫌疑を免れた高田、そして田中。
『そこでキスした』と言っていた……『そこ』とは『どこ』なのか……。
 優香ちゃんの美顔が思い浮かんで、次第にぼやけていく。次に恋実とのやり取りの数々が。そして時巻……松岡と脳裏に現れては消えていく。
 一瞬、リップクリームを塗る今井の姿が思い起こされた。
(まさかな……)
 恭吾は昨夜の母親の唇を思い出すことで、今井の想像を拭った。
「ハァ、ハァ、ハァッ、ハァー」
 酸素が足らない……自転車が前に進んで行かない。浮かせていた腰をサドルに落とす。ペダルが止まり足を着く。
 気が付くと『七戻り』の坂を三分の一ほど登っていた。恭吾にとって新記録だった。汗が視界を細め、下を向くと鼻先から滴り落ちる。体から湯気が立ち上っていた。
 恭吾は自転車を降りると、少し震える足に力を込めてゆっくり坂を登った。
 今日もいい日になりそうだ。