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@72話

ー/ー





 二人は壁に耳を近づけ神経を集中させる。ドア一枚隔てた室内からは加湿器の音が邪魔をしているが聞こえないこともない。


 禾几と優香ちゃんの声が聞こえてくる。


 


 


「……君はそこでキスしたことがあるのか?」


「はい」


 


 二人は口を抑えてお互いを見つめる。打ち合わせなしでこれほどまで息の合ったリアクションを取れるのは、状況と驚愕が織り成す妙技と言えよう。


 


 すぐさま耳を近づけ直す。さっきよりも耳への本気が増している。


 


 


「またキスしたいと思惟しているのですか?」


「……ダメでしょうか?」


 


 再び耳を付けてすぐ、見開いた眼を合わせた二人はこの田舎の高校で『キス』なんて言葉はA級に分類される破廉恥。


初心(うぶ)であればある程大きい破壊力をもつそれをダブルで喰らってしまった。


 


 もはや『キス』が頭から離れない……それしか考えられない。


 


 


 


 フラフラと扉から離れて歩き出す二人。時々、二人は顔を見合わせてはお互い締まらない笑みを浮かべ、照れてまた顔を逸らす。


 


 不思議と頬は痛まなかった……。保健室に寄るのも忘れ、お互い言葉も少なくそのまま学校を後にする。


 


 


 


 


「じゃあね~」


「バイバイ」


 


 どうやって家に帰ったかあまり覚えていない。想像の中では誰とキスしても甘酸っぱく、ほんのり温かく、柔らかかった。もう何人の唇を奪ったことだろうか。


 


 


「早くお風呂入っちゃいなさいよ~」


 


 そう言う母親の顔を見た時、ふと唇が目に留まる……一気に目が覚めた、しかし手遅れだ。


 恭吾の優秀な頭脳は、唇を強調した母親を今晩の夢に登場する準備を整えていた。




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 二人は壁に耳を近づけ神経を集中させる。ドア一枚隔てた室内からは加湿器の音が邪魔をしているが聞こえないこともない。
 禾几と優香ちゃんの声が聞こえてくる。
「……君はそこでキスしたことがあるのか?」
「はい」
 二人は口を抑えてお互いを見つめる。打ち合わせなしでこれほどまで息の合ったリアクションを取れるのは、状況と驚愕が織り成す妙技と言えよう。
 すぐさま耳を近づけ直す。さっきよりも耳への本気が増している。
「またキスしたいと思惟しているのですか?」
「……ダメでしょうか?」
 再び耳を付けてすぐ、見開いた眼を合わせた二人はこの田舎の高校で『キス』なんて言葉はA級に分類される破廉恥。
|初心《うぶ》であればある程大きい破壊力をもつそれをダブルで喰らってしまった。
 もはや『キス』が頭から離れない……それしか考えられない。
 フラフラと扉から離れて歩き出す二人。時々、二人は顔を見合わせてはお互い締まらない笑みを浮かべ、照れてまた顔を逸らす。
 不思議と頬は痛まなかった……。保健室に寄るのも忘れ、お互い言葉も少なくそのまま学校を後にする。
「じゃあね~」
「バイバイ」
 どうやって家に帰ったかあまり覚えていない。想像の中では誰とキスしても甘酸っぱく、ほんのり温かく、柔らかかった。もう何人の唇を奪ったことだろうか。
「早くお風呂入っちゃいなさいよ~」
 そう言う母親の顔を見た時、ふと唇が目に留まる……一気に目が覚めた、しかし手遅れだ。
 恭吾の優秀な頭脳は、唇を強調した母親を今晩の夢に登場する準備を整えていた。