「よし、舞羽。遊馬君をデートに誘おう」
「え?」
突然の美都からの提案だった。舞羽と美都は国作厩舎へと出向いていた、その帰り道。厩舎を離れると、草木と河の湿った匂いが鼻を洗う。
「だから、遊馬君をデートに誘うの。舞羽が」
「な、なんでいきなり、そうなったのよ?!」
舞羽の足が止まる。数歩前に出た美都は振り返る。しかし歩みは止めないで、後ろ向きに進んで行く。
仕方なく舞羽も歩を進めるも、その距離は変わらない。
「だって、そうしなきゃ何も始まらないじゃん」
「そんなの無理だよ……」
言葉を発するたびに立ち止まる舞羽。どんどん美都との距離は離れていく。
「ふーん、じゃ、いつまでも馬が恋人でいいわけだ。ま、遊馬君も馬が恋人っぽいもんね~」
距離と共に突き放す美都。舞羽は物理的な距離以上に寂しさを感じて、速足で歩き出す。
「……そんなことない、けど……」
「じゃあ、決まり」
「…………」
「いい、舞羽。どこにあるか分からないから『心』とバラバラに書く」
美都が突然立ち止まって、宙に『心』を書く。