舞羽は表向きには立ち直っていた。やはり『馬が怖い』よりも『馬が好き』の方が勝っていたからだ。
しかし一方で、舞香への想いは以前と少し変わっていた。見下していたわけもない舞香の才能が、ついに開花し始めてきた実感。幼き日から抱いていた舞香の才能の予感。インターハイで出会った涼風颯志の存在。きっかけ……恐らくそれは恋。
舞香に負けたくない、舞香に負けることは全てにおいて舞香に負けることを意味する。
遊馬の言う舞羽のスランプ、その心因は舞香の存在に他ならない。舞羽は確信した。
自分と写し鏡のような存在の舞香、たった一つであった舞香より優れたもの……ドレッサージュで劣ることは、自身の存在価値に関わる。
舞羽はそう信じ込んでいるのだった。
そしてもう一つ。遊馬……この恋心は、どうすれば良いのか分からないでいた。
美都も舞羽も分かっている、舞香が颯志に好意を持っていることを。つまり舞羽の恋が成就するかは、遊馬の心次第であることが確定している。そしてこればっかりは、美都が代わりに聞くこともできない。
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「ウラヌス……人間ってバカだよね。気が狂いそうなくらい好きなら、確かめれば良いだけなのに」
馬からすれば、おかしいと思うだろうか? 聞けないのなら誰かに頼んだっていいじゃないか。それで自分が壊れていくのなんてバカげている。
それもできずに『ああでもない、こうでもない』『ウジウジ、メソメソ』。聞くのが怖い、傷つくのが怖い、振られたらどうしよう、このままの方が良いかもしれない……エトセトラ……。
「ブルルルル……」
ウラヌスは何かを言った……。