舞香は楓乃の腕を掴んだまま、ズンズン突き進む。
「どこまで行くのよ?!」
楓乃もあっけに取られている、というより舞香の強い意志が伝わって、気圧されている。舞香は押し黙ったまま、その歩を止めない。
渡り廊下の中ほどの場所で、楓乃が舞香の掴んでいる手を切る。
「いい加減にして! 何なのよ、もう」
振りほどかれた舞香は、振り返って楓乃を見る。その表情からはさっきまでの強さは残っていない。むしろ泣きそうな面差しだ。
周囲に人影はない。風もなく音もない。
「楓乃先輩……舞羽の髪には絶対に触れないでください」
再び舞香から決意の眼差しが楓乃に注がれる。舞香の目には、楓乃すら見えていなかったかもしれない。その瞳には怒りの色しか映していない。
「何で私があんたの言うこと聞かなきゃ……」
「舞香!」
遮るような声が、美都と共に舞香にぶつかってきた。楓乃はこの機に乗じってこの場を去る。
姿が見えなくなるまで見送った二人は、ヘナヘナトしゃがみ込んだ。
「舞羽は、大丈夫だから……」
「……良かった……」
舞香はそういうのが精一杯だった。