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くだらない恋愛

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・くだらない恋愛

 何をしていても、彼の笑顔が頭に思い浮かんでは離れない。

 恋愛に対しての比重をさほど重く置いていなかった陽菜は、自分の心がこんなにも恋心に支配されるなんて思ってもいなかった。

 大学を卒業するまで、三人の男性と付き合ってきた経緯は、全てが『なんとなく』で済まされる。

 いずれも男性の方から告白され、告白を断るよりも『なんとなく』付き合っていたほうが楽に感じていたし、彼氏がいるというのは行きたくない誘いを断るいい道具として使える。

 陽菜の恋愛観は、その程度のもの。

 冷めた恋愛観を持つ陽菜の恋愛関係は長くは続かず、どちらが振ったという明確な別れがないまま自然消滅を迎える。

 その度に、恋愛に幻想を抱き告白してきた男性に対し。また、恋愛感情に対し、陽菜は『くだらない』と冷めた表情を浮かべ、心の中で吐き捨てる。

 そんな自分が、彼のことを考えると何も手につかなくなるなんて思いもしなかった。

 本当なら、毎日会いたい。

 会えなくても、ずっとSNSなどで繋がっていたいけれど、二人目に付き合った男性に同じことを言われ面倒だと思った経験があるので、陽菜は自身の欲望を強引に抑え込んだ。

 昨日会えただけで幸せ。

 また、明後日に会えるのを楽しみにしよう。

 本当は、今すぐに会いたいけれど。

 そんな陽菜の願いは、思いも寄らない形で成就される。

 昨日、彼とデートしたショッピングモールを、彼との楽しい思い出を振り返りながら歩いていると、視線の先に実物の彼を発見した。

 好きな思いが作り出した幻影ではなく、はっきりと実在する彼。

 偶然の出会いに心を弾ませ、無意識のうちに喜び声をかけていた。

 声をかけた後に、ストーカーみたいに思われるのではと不安が過ったが、本能で声をかけていた。

 彼は、愛しくてたまらない笑顔で返事をする。

「おー、久しぶり」

 屈託なく、楽しそうな笑顔。

 その笑顔を見た陽菜は、その瞬間で悟る。

「うん、久しぶり」

 会話らしい会話はなく、挨拶程度のやり取りだけで陽菜はその場を離れる。

 昨日も会ったじゃない。

 何度も出そうになった言葉をグッと堪える。

 言いたい言葉を伝えられず、手を握り合う彼と彼女の背中を見送る。

 一緒にいる女性に、私の存在が知られたくないのだ。

 私とは、手を繋ぐのを拒むくせに。

 久し振りの言葉以外何も言い返せず、二人を見送った陽菜の口から、自然と言葉がこぼれていた。

「本当に、くだらない」

 冷めた表情を浮かべ、心の中で吐き捨てる陽菜の頬に、一滴の雫が流れ落ちた。







みんなのリアクション

・くだらない恋愛
 何をしていても、彼の笑顔が頭に思い浮かんでは離れない。
 恋愛に対しての比重をさほど重く置いていなかった陽菜は、自分の心がこんなにも恋心に支配されるなんて思ってもいなかった。
 大学を卒業するまで、三人の男性と付き合ってきた経緯は、全てが『なんとなく』で済まされる。
 いずれも男性の方から告白され、告白を断るよりも『なんとなく』付き合っていたほうが楽に感じていたし、彼氏がいるというのは行きたくない誘いを断るいい道具として使える。
 陽菜の恋愛観は、その程度のもの。
 冷めた恋愛観を持つ陽菜の恋愛関係は長くは続かず、どちらが振ったという明確な別れがないまま自然消滅を迎える。
 その度に、恋愛に幻想を抱き告白してきた男性に対し。また、恋愛感情に対し、陽菜は『くだらない』と冷めた表情を浮かべ、心の中で吐き捨てる。
 そんな自分が、彼のことを考えると何も手につかなくなるなんて思いもしなかった。
 本当なら、毎日会いたい。
 会えなくても、ずっとSNSなどで繋がっていたいけれど、二人目に付き合った男性に同じことを言われ面倒だと思った経験があるので、陽菜は自身の欲望を強引に抑え込んだ。
 昨日会えただけで幸せ。
 また、明後日に会えるのを楽しみにしよう。
 本当は、今すぐに会いたいけれど。
 そんな陽菜の願いは、思いも寄らない形で成就される。
 昨日、彼とデートしたショッピングモールを、彼との楽しい思い出を振り返りながら歩いていると、視線の先に実物の彼を発見した。
 好きな思いが作り出した幻影ではなく、はっきりと実在する彼。
 偶然の出会いに心を弾ませ、無意識のうちに喜び声をかけていた。
 声をかけた後に、ストーカーみたいに思われるのではと不安が過ったが、本能で声をかけていた。
 彼は、愛しくてたまらない笑顔で返事をする。
「おー、久しぶり」
 屈託なく、楽しそうな笑顔。
 その笑顔を見た陽菜は、その瞬間で悟る。
「うん、久しぶり」
 会話らしい会話はなく、挨拶程度のやり取りだけで陽菜はその場を離れる。
 昨日も会ったじゃない。
 何度も出そうになった言葉をグッと堪える。
 言いたい言葉を伝えられず、手を握り合う彼と彼女の背中を見送る。
 一緒にいる女性に、私の存在が知られたくないのだ。
 私とは、手を繋ぐのを拒むくせに。
 久し振りの言葉以外何も言い返せず、二人を見送った陽菜の口から、自然と言葉がこぼれていた。
「本当に、くだらない」
 冷めた表情を浮かべ、心の中で吐き捨てる陽菜の頬に、一滴の雫が流れ落ちた。


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